写真:恐怖のカニのヨコバイ
立山・剱岳「天の記」(20) 「恐怖の下山」
山頂の想いも余り感じない束の間のうちに、後は逃げるように退路をとったのである。
先にも記したが、岩場の下山は怖い・・!、特にカニのヨコバイは怖かった。
カニのヨコバイは、ツルッとした一枚岩の絶壁に架かる一筋(半筋・・?)の歩程で、到達点はすぐそこの見えてはいるが下を覗き込めば「はい、ソレマデーヨ」の谷底である。 先ず、手出し、足出しの第一歩が肝心のようで、鎖につかまり後ろ向きに足場を探りながら、爪先立ちの足場のため左か、右かのスタンスよっては次のステップが取れなくなってしまう恐れがある。 こんな時は、体が大きく岩場から離れ、所謂、空中に身を放り出すような感覚になるのである。 この時、シンゾーがザワーッとする瞬間である。 無論、ホールドはしっかりとチェーンを握ってはいるが・・!。
この時、スタンスを滑らすか、踏み外し、その衝撃で、所謂、手に汗握る状態で鎖に手がかかっている場合は握りもすべり、その瞬間、身体が離れて「はい、それまで」である。 この場所では毎年のように転落事故が発生し、もちろん落ちれば即死か、運が良くても至急便のヘリの世話になるのである。
いずれにしても、足場は岩盤でしっかりはしているが、幅は狭くて指先で歩く感じである。 この時ばかりは、さすがに身体が硬直して、思わずゾク、ゾクッとする感じであった。
鎖につかまりながら、そろりそろりと左斜めにトラバースして・・、
このカニノヨコバイから数本の鎖や鉄ハシゴをやり過ごし、レイの避難小屋を脇目も触れずに、ただ黙然と下山の途を歩んでいた、と言うより這っていた。
ただひたすらベースにある剣山荘を目指して、無碍な行者のごとく心身の強弱を繰り返しながら、思いは一つ、行動は一つに収斂していた。 心なしか、気が付かないうちに、あれだけ荒れ模様の妖気も、ここへきて静まりつつあるかの様である。
山小屋へ着いたら何はともあれ、このズブ濡れの、濡れネズミの服装をさっぱりと着替え、この道中を笑い話にしながら熱いコーヒーでもすすり、食事の前の冷たいビールを戴く・・?!、 等々、早、安楽な世俗、浮世の世界を時折、頭に描いていた。
天の様子が少しは穏やかに成ったと見えても、未だ、雨風は収まってはおらず、視界は全くきかない状態は以前と同じである。 それどころか、下り・・?は完全な夢中(霧中・・!!)の中にあって、先程までの登りは、喘ぎながら、もがきながらも何処か平静さと冷静さを保っていたようであるが、現在の下山時の精神状態は、あの時よりやや劣っていたようであった。
次回は、迷路
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