釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

遅きに失する

2020-11-24 19:12:09 | 社会
世界の新型コロナウイルス感染者は累計で5950万人を超えた。すぐに6000万人を超えるだろう。死者は140万人を超えた。これまで21世紀に入っただけでも、2002年~2003年のSARS重症急性呼吸器症候群、2009年の新型インフルエンザ、2012年~現在も断続的に発生しているMERS中東呼吸器症候群、そして今回の新型コロナウイルス感染と、感染症は5~10年の間隔で必ず発生している。ウイルスではなく、細菌も抗生剤が効かない耐性菌が多くなり問題になっている。人体は1万年前に現在の身体の仕組みを獲得したと言われる。以来、体内へ侵入するウイルスや細菌と闘って来たが、現代には急速に自然環境を変え、ウイルスや細菌を攻撃するための様々な「武器」を創り出した。ウイルスや細菌も、それらの「武器」から防御するための変身を繰り返すようになった。こうした人とウイルスや細菌との関係は今後も科学の発展とともに何度も繰り返されて行く。日本では2009年の新型インフルエンザで、ウイルス感染の問題に直面した経験があるにもかかわらず、それが生かされず、何らその後、ウイルス感染への国としての対策は形作られなかった。2009年に厚生労働大臣として新型インフルエンザ 対策に当たった舛添要一氏は、その時も、国立感染症研究所や尾身茂氏の対策に不信感を抱いたと言う。別の組織を立ち上げ、そこで対策を立てた。少子高齢化も1990年代後半には明らかで、同じく失われた30年に突入した1990年代には日本の生産性の低さは明かであった。それらいずれの問題も、どの政権も真剣に取り組むことはなかった。ここまで感染が全国に広がっていても、政府や東京都はなおオリンピック開催に執着している。ワクチンへの期待が大きいのだろう。しかし、現在、世界で開発されているワクチンは、感染予防は出来ない。ワクチンによる集団免疫などは期待出来ない。開発中のワクチンは、あくまで重症化を防ぐものでしかない。ただし、副作用も定かではないのだ。今日のロイター通信が「焦点:コロナ「集団免疫」、ワクチンでの獲得期待に潜む落とし穴」と題して、ワクチンの限界を書いている。一方で、米国のように重傷者や死者が多く、医療崩壊寸前に追い込まれている国では、ワクチンへの期待が高まっている。今日のブルームバーグは「【新型コロナ】重症化防ぐワクチン効果に期待-米の死者さらに増加か」と題してそれを伝えている。日本では北海道の旭川市のように、集団感染が発生した医療機関で一般医療での崩壊が目前になっている。現在の医療機関には高齢者が多く入院しており、高齢者の多い老人施設や医療機関は、職員が感染しても無症状であれば、すぐに対応出来ず、感染を施設内で広げてしまう。そうなると、職員の不足を生じ、日常業務が滞る形に陥る。旭川市の2つの医療機関ではまさにそれが今起きている。欧米のように感染者が急増すれば、増加した重傷者の選別が行われる。人工呼吸器や人工心肺ECMOの台数が限られるからだ。当然選別から漏れた人は死亡する。これが欧米の死亡増加の要因である。日本でも現在重傷者数が過去最多となった。いずれ地域によっては、欧米と同じく重傷者の選別が行われることになるだろう。ワクチンが感染を防げない以上、このウイルス感染はここ数年続くことになる可能性が出て来る。無症状感染者を無視する現在の日本の対策である限りは、日本の感染も治ることはない。最も危惧されることは、長期に感染が持続するほどウイルス変異が多くなることだ。それにより、感染力が強まったり、重症化しやすくなることも十分あり得る。いずれにしろ、この新型コロナウイルス感染は思った以上に長期化することになる。そうさせているのは日本の中途半端なコロナ対策である。先日、釜石市で始めての新型コロナウイルス感染者が発生したが、この人は海外から日本へ戻って来た人で、空港での検査は陰性であった。空港では精度の低い抗原定性検査が行われている。幸い2週間の待機期間中に発症したため、他へ感染を広げることが防げたが、中国・韓国など11カ国は入国時の検査だけで、2週間の待機が省略された。空港で見逃される感染者が出る可能性が大いにある。外からの水際対策を甘くし、内では無症状感染者を無視し続ける。これで感染を終息させられるわけがない。日本と言う国は、もはや根本的な問題から目を逸らし、目先の都合だけを優先するその場限りの国策しか打ち出せない国になってしまった。経済評論家の加谷珪一氏は、昨日の東洋経済で、「日本人が即刻捨てるべき「経済大国」という幻想  確実に「小国」になる未来がやってくる」と題する記事を書かれている。記事では昨年12月24日、内閣府宇宙政策委員会基本政策部会で、日本経済研究センター岩田一政理事長が示した「2060年の世界および日本経済の行方」を紹介し、2018年には世界第3位のGDP4.7兆ドルであった日本が、2060年にはインドやドイツよりも少ない4.6兆ドルで、40年後もGDPが全く変わらないことが述べられている。中国は3倍近く、米国は2倍近くになっているが。日本が抱える基本的な問題に手を付けるにはもはや遅過ぎる。新型コロナウイルス感染も同じで、よほど基本的な対策を改めない限りは、もはや感染を終息させることは出来ない。