釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

対中攻撃で大きく転換する中国

2020-08-07 19:15:00 | 社会
世界の新型コロナウイルス感染者は1926万人を超え、死者は71万人を超えた。アフリカも感染者はついに100万人を超えた。感染者が503万人を超え、死者が16万人を超えた米国では、今年12月1日までに死者が30万人近くまでになると予想されていると米メディアCNNが伝えている。ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)の予想である。英国メディアThe Telegraphは7月21日に「Exclusive: Covid-19 may not have originated in China, Oxford University expert believes(独占:Covid-19は中国で生まれたのではないかもしれない、オックスフォード大学の専門家は信じている)」と題する記事で、オックスフォード大学CEBM(エビデンスに基づく医療センター)のトム・ジェファーソンTom Jefferson准教授は、「コロナウイルスは、中国で始まったというより、世界中に潜伏していて、環境条件が繁栄に適切になった時に出現したのかもしれない」とし、「アジアに出現する前に、ウイルスは至る所にあった証拠が増大していると主張している。先週、スペインのウィルス学者が、コロナウイルスが中国で発見される9カ月前、2019年3月に収集された下水サンプル中にコロナの痕跡があるのを見いだしたと発表した。イタリアの科学者も、最初の症例が発見される何週間も前、12月中旬、ミラノとトリノの下水サンプルに、コロナウイルスの証拠を発見し、2019年11月にブラジルで専門家が痕跡を発見した。」と書かれている。また、6月29日の同じく英国のINDEPENDENT紙も「Was coronavirus in Europe as early as March 2019?(コロナウイルスは早くも2019年3月にはヨーロッパに存在したのか?)」と題して、「「新型コロナウイルス、Sars-Cov-2は、これまで考えられていたより早くからヨーロッパにあったのかもしれない。最近の研究が、早ければ2019年12月に、イタリアで蔓延していたことを示唆している。更に驚くべきことに、バルセロナ大学の研究者が、2019年3月12日付けの未処理下水サンプルを検査した際、ウイルスの痕跡を見いだした。」と伝えている。5月5日には英国国英メディアBBCすらもが「Coronavirus: France's first known case 'was in December'(コロナウイルス:フランスでの最初の既知の症例は「12月だった」)」と言う記事で、「12月27日に肺炎と推測され、実際パリ近くの病院で治療されていた患者はコロナウイルスにかかっていたと彼の医者が述べた。これはウイルスが、これまで考えられていたより約一カ月早くヨーロッパに到着したかもしれないことを意味する。イブ・コーエン博士は、当時採取された綿棒が最近検査され、Covid-19陽性だったと述べた。」、「フランスは 後の検査が、より以前の症例を示す唯一の国ではない。二週間前、カリフォルニアで行われた検死が、アメリカ最初のコロナウイルス関連の死が、これまで考えられていたより一カ月以上前だったことを明らかにした。」と伝えている。5月1日のやはり英国BBCは「Coronavirus: Is there any evidence for lab release theory?(コロナウイルス:実験室から放出されたと言う何らかの証拠はあるのか?)」と言う記事で、ロンドンの英国学士院特別研究員のエドワード・ホームズEdward Holmes教授は、「人にCovid-19を起こすウイルスSARS CoV-2が中国武漢の研究所から始まったという証拠はない。」「SARS CoV-2のようなコロナウイルスは一般に野生生物種に見られ、しばしば新しい宿主に移動する。これはSARS-CoV-2起源の最もありそうな説明だ。」と述べている。米国大統領は、3月、この新型コロナウイルスを「チャイナ・ウイルス」と呼んでいたが、その後、しばらくこの言葉を言わなくなっていた。しかし、7月に入り再び「チャイナ・ウイルス」と発言することが見られるようになった。11月の大統領選挙を控え、ウイルス感染が拡大し続ける中で、民主党候補よりも支持率が低く、不利な状況を何とか挽回したい。そんな焦りの気持ちが、中国攻撃を一層強めている。最先端技術である5Gに絡んで、中国企業ファーウェイを排除しようとしているが、8月1日のロイター通信は、「コラム:容易でないファーウェイ排除、5G特許が覇権の切り札」で、「西側諸国が自国の通信インフラから中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)製品をむしり取るのは容易ではない。ファーウェイは第5世代(5G)移動通信の特許を宝の山のように抱えているからだ。」と書いている。同じく6日のロイター通信は「コラム:米通信市場に「対中防壁」築けるか、報復以外に弊害も」と題する記事で、米国企業が中国内での活動で制限を受ける弊害も生じることを指摘している。8月3日のブルームバーグは「対中批判で「微妙だが重要な政策シフト」−経済自立にかじ切る中国」と題する記事で、米国からの圧力を受け、中国がこれまでの対外貿易中心から、自立的な国内経済をも重視する『双循環』へ大きく転換していることを伝えている。これは中国のドル離れを加速することをも意味する。
百日紅

問題はあっても検査をするしかない

2020-08-06 19:11:23 | 社会
感染者総数が21万人を超えているドイツや19万人を超えているフランスでも緩やかだが第2波が訪れている。昨年12月に中国の武漢市で始まったとされている、この新型コロナウイルス感染については、まだまだわからないことが多い。6月26日、スペインのバルセロナ大学は、2019年3月12日にバルセロナで収集された廃水から新型コロナウイルスを検出したと発表している。現在も大学のHPにそのことが掲載されている。世の中には、このウイルスの存在すら否定する人もいるが、このウイルス自体はすでに中国、日本、米国、台湾で分離・同定されており、全ての遺伝子配列も解析済みである。また、このウイルスにより全身で微小血栓が生じ、重篤になる人もいることが明かになっている。米国のCDC疾病予防管理センターは、治癒後も持続する可能性のある症状として17の症状を上げているが、最近、米国インディアナ大学医学部ナタリーランバート准教授らの1500人を対象とした研究で、激しい神経痛、集中困難、睡眠困難、ぼやけた視力、そして脱毛さえ含まれ98の症状が見いだされている。ウイルスが存在し、重篤な状態をもたらす感染症でもあるが、この感染症を見つけ出す検査手段に問題があることも事実である。感染者のPCR検査では、ウイルス本体が分離・同定されているわけではなく、言わばウイルスの遺伝子の断片を検出しているに過ぎない。そこに問題はあるが、とりあえずは簡易的に可能な唯一の検査であり、よく言えば、さらに抗原検査や抗体検査が組まれればいいのだが。問題はあるが、それでもこのPCR検査によって、感染者を炙り出すしかない。2007年1月22日のThe New York Timesは「Faith in Quick Test Leads to Epidemic That Wasn’t(クイックテストへの信仰は、存在しなかった感染流行につながる)」と題する記事で、米国ニューハンプシャー州で起きた架空の百日咳感染流行を報じている。要するに頑固な咳症状の人々にPCR検査をして、陽性者に抗生剤などが使われたが、後に検証したところ、百日咳菌が分離されなかった。百日咳菌本体が見つからなかった。同様のことはボストンでもあった。記事の中で、ジョンズ・ホプキンス大学の疫学者であり、米国ヘルスケア疫学者協会の元会長であるトリッシュ・M・パールTrish M. Perl博士は、pseudo-epidemics疑似流行は常に起こりますと述べている。1993年に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法の開発でノーベル賞を受賞した米国の生化学者キャリー・バンクス・マリスKary Banks Mullis自身が、このPCR法はあくまでも少量のDNAを増幅させるためのもので、ウイルスの検出に用いるべきではないと述べていた。現在の新型コロナウイルスはDNAウイルスではなくRNAウイルスである。同じくRNAウイルスであるインフルエンザの場合、通常の医療機関ではイムノクロマト法と呼ばれる迅速抗原検査キットが使われているが、保健所や衛生研究所などは鶏卵を使ったウイルス分離法やPCR法が使われている。一般医療機関で使われる迅速抗原検査キットは、その感度および特異度は、必ずしも十分とは言えないのが現状であるが、それでもそれをよりどころに治療するしかないのだ。新型コロナウイルスのPCR検査も、その欠点を知った上で、それを使わざるを得ないのが現状だろう。昨日の朝日新聞は「長崎県医師会と長崎大、同大学病院は3日夜、共同で記者会見し、新型コロナウイルスに関し、無症状でも医師が必要と認めれば、地域のかかりつけ医でPCR検査が受けられる態勢を整える」と伝えた。「各医療機関が唾液(だえき)の検体を採取し、同大学病院に郵送。結果は1~2日で出る。公的医療保険の適用対象で、自己負担は約1千円になる見込み。」だと言う。東京の世田谷区に続き、今の日本では画期的な試みと言えるだろう。米国CDCによれば無症状の新型コロナウイルス感染者は4割になるとされる。その一因はPCR検査そのものによるだろう。偽陽性である。感染していないのに陽性反応が出る人が多い可能性がある。ただし、実際にも感染していて無症状の人もいる。こうした問題はあっても、やはりPCR検査で、あくまで感染者を炙り出すしかない。日本だけでなく、世界の主要国で、感染が治らず、今後も感染は持続して行く。その分、実体経済は悪化し、日本では秋に中小企業が、来年には大企業が多く倒産すると予想されている。米国の実体経済の悪化も現在報じられている以上である。今日の毎日新聞は、「NY金、最高値更新 コロナ感染拡大を懸念 原油も5カ月ぶり高値」と題する記事を報じたが、「新型コロナウイルス感染拡大への懸念を背景に、比較的安全な資産とされる金に資金を避難させる動きが続いた。」と書いている。これまでメディアは「金」を「安全資産」などと書いたことがない。いつもこれまでは安全資産として「円」や「ドル」・「国債」を上げて来た。この記事でも「金」が今何故上がっているのか理由が書かれていない。昨日、容易に金が1オンス2000ドルを超え、今では2100ドルを目指す動きになった。中央銀行が国債を買い、国債の金利をゼロ以下にし、通貨を大量に発行したため、通貨価値が希薄化したのだ。今年の末に2000ドルと予想されたが、予想よりずっと早い動きになった。政府がまだまだ多くの通貨を発行せざるを得ないことが明かになって来たからだろう。
朝鮮朝顔

ファウチ戦略に徹する日英米

2020-08-05 19:16:47 | 社会
昨日昼休みに、職場から歩いて3分ほどのコンビニまで往復したが、それだけで汗びっしょりになった。夕方帰宅後に、息子から釜石が全国で最高気温となったことを教えられた。昨年の7月29日にも釜石は同じように全国最高気温になっている。今日は昨日より少し低いがそれでもやはり30度を超えている。この暑さでもウグイスが鳴くのはやはり違和感がある。これだけ暑くとも新型コロナウイルスの感染は続く。先月28日、WHO世界保健機関のマーガレット・ハリス報道官は、感染状況は季節による影響を受けていないように見えるとして、夏季に入っている北半球で慢心してはならないと警告した、とロイター通信が伝えていた。岩手県で感染者が出ると、それまで店頭に置かれていたマスクが再び消えた。そして大阪府が消毒用うがい薬イソジンがウイルス除去に有効などと発表したために、イソジンまで店頭から消えている。この大阪府の発表は、医学的な検証が十分でなく、京都大学ウイルス再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授(ウイルス学)は、批判的である。あまりにも少ない人数であり、検証手順も科学的ではない。かって、京都大学で、「何もしない、水のうがい、ヨードのうがいをする群に分けて風邪を引くかどうかの実験をしたところ、ヨードのうがいをする群が最も風邪を引いた、という結果が出た」と言う。要は1日に3〜4回もうがいをすることで、薬剤により喉の粘膜が傷付き、かえって感染しやすくなる。検証が十分でないのは、アビガンでも言える。アビガンの治験が行われていた頃は、体温37.5度以上4日間と言う基準で検査を受けた人の中で、一定の病状になり入院をした人が対象であった。つまり治験でアビガンを使われた人たちは、感染してからそれなりの日数が経った人たちであり、アビガンは早い時期に使われた訳ではない。これと同じことが米国の抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンの治験でも行われている。米国のNIH国立衛生研究所によるアンソニー・ファウチAnthony Fauci博士の「戦略」で、初期の感染患者が息切れを起こして病院に入院するまで、治療せずに自宅で隔離された状態を保つとされたため、治験のヒドロキシクロロキンも、早期の感染者ではなく、呼吸障害が出て入院した人で使われた。このためヒドロキシクロロキンは十分な効果を見ることが出来なかった。しかし、中国、トルコ、韓国、インド、モロッコ、アルジェリアなどの国々は、国のパンデミック対応の早い段階で、ヒドロキシクロロキンを広く使用し多くの感染者が回復している。しかも、深刻な副作用のない安全な薬剤であることも確認されている。米国メディアは、ブラジルでヒドロキシクロロキンを使われた感染者が多く亡くなったことを報じて、ヒドロキシクロロキンを否定的に扱った。しかし、それらの記事では決してブラジルで過剰な量のヒドロキシクロロキンが使われていたことは報じなかった。日本の異常さはPCR検査の少なさだけでなく、入院治療をも制限されていることだ。日本や英米はファウチFauci博士の「戦略」に沿って入院させている。この感染症では、病気の大原則である早期発見、早期治療を初めから無視している。感染から半年以上が過ぎて、病床が足りないとか、器具・人員が不足するなどと言うのは、不作為のいい訳でしかない。60兆円ものコロナ対策予算はどこへ行ったのか。中国や韓国が行ったことが、何故、日本では出来ないのか。ファウチFauci博士の「戦略」に沿った日本や英米の致死率は当然だが悪い。日本は東アジアでは致死率は最悪である。先月25日に大阪で60代男性が自宅で入院待機中に急変して亡くなっている。これがまだ感染拡大初期であれば仕方がないかも知れないが、すでに半年以上経って、何も変わっていない。検査も病床も全く2、3月頃と変わらない。岩手県の宮古市(盛岡市に近い)で感染が明かになった30代男性などは7月21日に38.3度の発熱があり、盛岡市内の医療機関を電話で受診し、様子を見るよう指示され、25日に帰国者・接触者相談センターに電話連絡したが、紹介された医療機関では検査もなく、27日になっても全身のだるさや味覚・嗅覚異常が続くため、宮古市内の医師に電話受診し、同市の地域外来・検査センターを紹介されようやくPCR検査を受けることが出来た。通常の風邪などではなく、「指定感染症」に指定するほどの感染症を、いまだにこれほど検査や入院を制限し続けている。もはやここには医療は存在しない。国が保健・衛生でこの新型コロナウイルス感染に対処しようとする限り、医療の大原則である早期発見・早期治療は実施されず、多くの無駄な命が失われ、多くの人が後遺症に悩むことになる。インフルエンザはコレラや赤痢などとは違い、保健所・衛生研究所ではなく、医療機関で検査・治療する。しかも、コレラや赤痢ですらも、早期発見・早期治療されている。現在、日本はすでに感染第2波に入っているが、この拡大阻止すら、何ら対策を講じない。まして、検査を増やしたりや病床を仮設でも増やそうと言う動きは国として全くない。引きこもりは首相だけでなく、厚生労働大臣にまで及んでいるようだ。こんな時に。
夏水仙

nuclear monetary bomb(核通貨爆弾)」

2020-08-04 19:18:35 | 経済
今年2月10日、米国の代表的な株式指標の一つS&P500種株価指数が最高値3352.09となった。しかし、新型コロナウイルスの感染で、3月23日には2237.40まで下落し、以後少しずつ再上昇し、昨夜は一時3302.24にまで達している。2008年のリーマン・ショック後は、中央銀行FRBの「非伝統的」金融緩和によって、米国株式市場は支えられて来た。特に、昨年の上昇は低金利下の社債発行で得た資金を企業が自社株買いに注ぎ込むことで、株価を上げて来た。コロナ禍の中でも米国IT企業は利益を上げ続け、さらには昨年以上に自社株買いを強めている。株式時価総額世界一のApple社は第2四半期に160億ドルの自社株の買い戻しを行っている。米国第2の企業マイクロソフトは58億ドルを投じている。Googleの親会社Alphabetは四半期だけで69億ドルを投じ、同じ時期の前年比92%増となっている。S&P500種株価指数は500社の内のハイテク企業5社(Microsoft、Apple、Amazon、AlphabetおよびFacebook)だけで全体が牽引されており、他の495社は下落している。いかにハイテク5社が突出しているかである。しかし、これまで強気であった投資銀行モルガン・スタンレーでさえ、こうした状況は"Unsustainable"「持続不可能」であると言うようになった。新型コロナウイルス感染の急上昇、選挙の懸念、財政の危機などが懸念されてもいる。新型コロナウイルス感染の拡大で、経済が落ち込むと、中央銀行FRBは財務省と連携して「ヘリコプターマネー」を開始し、PPP(給与保護プログラム)ローンを通じて米国企業に直接資金を送金した。(PPP:一定の条件を満たせば2.5ヶ月分の運転資金の返済が免除される実質的な給付)。新型コロナウイルス感染は、米国実体経済をリーマン・ショック以上に傷付けた。GDPは前四半期で年間ベースで32.9%減少し、最初に感染が発生してから10万以上の企業が完全に閉鎖し、5400万人以上の米国人が失業手当を申請した。リーマン・ショック後の2010年には、家賃やローンが支払えず追い出された人が100万人であったが、このウイルス禍では最大4300万人が自宅から追い出される可能性があるとされる。ブルームバーグによれば、米国のおよそ66万の飲食店のうち23万1000もの店舗が今年閉鎖される可能性があるとされ、今年、レストランではすでに数百万の雇用を失っている。これまでの実体経済の悪化のためだけに、すでに米国財務省は4.5兆ドルの新規債務を加え、中央銀行FRBは債券購入などで7兆ドルの資産を抱えるーつまりはそれに相当する通貨を発行した。英国Financial Timesによると、6月30日現在で、60兆ドル規模の世界の債券市場では、過去最高の86%もが2%以下の利回り(金利)で取引され、60%以上が1%未満の利回りとなっている。世界の負の利回り債務は1月の11兆ドルから14.6兆ドルに急増している。このため、年金基金など投資家は収入を求めてリスクの高いセグメントに追い込まれ、質の低い企業や国に融資するよう強いられている。FRBは金利をゼロ近くまで引き下げ、無制限の政府債務を購入することを誓約し、ジャンク債、地方債など、これまでにない範囲の証券をも購入する。しかし、1913年成立の連邦準備法は社債の買入れを禁じている。FRBはまさに法を無視してジャンク債のような社債を購入している。今や米国の10年国債の実質利回りは過去最低の-1%まで下がった。一方、今日発表された日本銀行の7月31日現在の営業毎旬報告では、日本のGDPを遥かに超える665兆円もの資産となっており、そのうち526兆円が国債である。日本銀行が保有する国債もやはり日本のGDPを超えている。1990年代初頭のバブル崩壊後、日本銀行は常に世界の中央銀行に先駆けて、「神風技法」とまで呼ばれる「異次元」の金融緩和を行って来た。中央銀行が直接株式を購入すると言う異常さも日本銀行はあえて犯している。このコロナ禍では米国FRBと共になりふり構わない資産買い入れで、大量の通貨発行を行っている。これだけ異常な通貨発行を行っても、その通貨は実体経済へは流れ込んでいない。日本の場合は、457兆円もが日本銀行の当座預金と言うダムで堰き止められ、米国では、金融市場へ流れ、その金融市場でまさに金融インフレ状態を生み出している。いわゆるバブルである。もはや日米中央銀行の通貨発行量は、「nuclear monetary bomb(核通貨爆弾)」と呼ばれるまでの起爆剤になってしまった。そして、次の金融危機では、その核爆弾が炸裂することを避けることが出来ない。ようやく中央銀行が望むインフレがやって来る。ただし物価インフレと言うより通貨インフレである。
IT5社だけで浮上する株価

米国中央銀行FRBによる通貨ドル供給量推移

米国10年国債実質利回り(金利)推移

感染が若い世代によって広がって行く

2020-08-03 19:10:00 | 社会
昨日、米国メディアCNNで、新型コロナウイルス対策の調整官、デボラ・バークス医師は米国は新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)が始まった当初よりも大きな脅威に直面していると述べた。感染が全国に「異常に拡大」しており、米国は感染流行との闘いで新たな段階に突入しつつあると警告。3月末には1日に7000人近くの新規感染者がいたドイツも5月半ばには1000人以下となったが、現在も毎日1000人以下ではあるが新規感染者が持続している。そのドイツで、1日には2万人近い、制限措置に抗議する「自由の日」と名付けられた大規模なデモがベルリンで行われた。フランスのAFP通信によれば、デモには「極右から極左団体、陰謀論者」まで参加していた。オーストラリアのシドニーに次ぐ人口493万人の都市メルボルンも昨日は、1日の新規感染者数が671人と過去最高に達し、非常事態を宣言し、夜間外出禁止や外出制限などのロックダウン(都市封鎖)が実施されることになった。オーストラリアは国全体では、現在の感染者数は日本の約半数の18,318人である。政府が全く対策らしい対策を打たず、感染者数が増加している日本では、政府による「制限」を望む声が強いが、欧米ではむしろ日本と異なり、「制限」に抗議運動が起きている。そして、この抗議運動がまた感染を広げてもいる。北欧のスウエーデンは、都市封鎖をせず、「集団免疫」の獲得を目的とした。スウエーデンの総感染者数は8万422人で、世界215カ国中30位である。死者は5743人で20位。しかし、これを100万人あたりの死者数で見ると、568人にもなり世界の8位に急浮上する。感染者数が世界一で、481万3647人いる米国の100万人あたりの死者数は477人で、スウエーデンは100万人あたりの死者数で米国をも上回っている。死者の7割は70歳以上である。そして、集中治療室に運ばれた人のうち70歳以上は22%で、80歳以上は3.5%である。医療崩壊を防ぐために「選別」が行われた。7月31日、AFP通信は、「幼児が新型コロナ媒介か 上気道に年長者の最大100倍の遺伝物質 米研究」と題する記事を載せたが、米国シカゴのアン・アンド・ロバート・H・ルリー小児病院Ann & Robert H. Lurie Children's Hospitalの研究では、5歳未満の幼児の上気道には、5歳以上の子どもや大人の10~100倍の量の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝物質があると言う。症状が出てから1週間以内に検体を採取した5歳未満から65歳までの145人を調べた。ウイルスの遺伝物質が多く存在するほど感染力のあるウイルスが多く培養されることが、最近の実験室研究で確認されているため、感染した症状の軽い5歳未満の幼児が感染を拡大させる危険性があると言うのだ。いずれにしろ、感染が若い世代によって広がって行くことだけは世界中で共通している。現在の日本では政治リーダーが「引きこもり」状態である。政府としての何ら積極的な対策が打たれていない。感染症専門家が状況を分析し、その情報に基いて、政府が政策を決定する、この流れが現在の日本では遮断されている。厚生労働省ー医務技監(事務次官クラス)、中央感染症情報センターー国立感染研究所など厚生労働省系の「専門家」が全国の保健所ー衛生研究所を掌握・独占し、医療機関ではなく、国の保健衛生系列で新型コロナ感染にあたろうとしたため、当然、その系列で可能なPCR検査に制限せざるを得ず、それを隠すために、「検査をすれば医療崩壊する」などと言うとんでもないことを言う「専門家」が出て来たのだ。全てを自分たちの権益内で掌握しようとしたために、検査数が限られてしまった。しかも、その検査機器たるや旧態依然たる機器で、熟練した検査技師でなければ扱えない非効率なものである。千葉県のベンチャー企業が開発した全自動の検査機器は、今ではフランス始め世界の50カ国で使われているが、日本ではこれまで認可されず、ようやく最近、厚生労働省も認可するとのことだ。例によってとても面倒な手続きを要求し、認可を遅らせた。東京都がいまだに各区とのコロナ情報のやり取りにFAXを使っているように、日本の保健所系の検査機器はいわば今なおアナログなのだ。公的機関ほどデジタル化がなお遅れていることをコロナ禍が露呈させたのだ。感染爆発して一時は収拾がつかなかった米国ニューヨーク市は、全ての医療機関でPCR検査が出来る体制を敷いて、いつでも、誰でも市民であれば、無料でPCR検査が出来るようになり、ようやく感染拡大の抑制につながって来た。日本では、東京大学児玉龍彦名誉教授の提案で、世田谷区がこのニューヨーク市方式を取り入れようとしている。新型コロナ感染を最終的に治めるには、インフルエンザ のようにやはり全ての医療機関で検査が出来るようにするしかない。非効率な検査機器で保健所や衛生研究所で検査を制限している限り、膨大な無症状・軽症感染者を見逃し、何度でも次の波がやって来ることになる。治療用ベッドも中国や英国、米国でも行った仮の病床建設は日本でもその気があれば可能である。何しろコロナ対策予算は前代未聞の莫大な予算なのだから。
日本の日毎の感染者数推移

ラスト・リゾート

2020-08-01 12:19:16 | 社会
今日の釜石は曇天で、最高気温は26度である。湿度が高いためか部屋の中にいると蒸し暑さを少し感じた。近年の異常気象は日本に限らない。北極圏のノルウェー領のスヴァールバル諸島では、7月の最高気温が7度くらいであるが、7月25日には21.7度と言う観測史上の最高気温となった。また、28日には、イラクの首都バグダッドでも観測史上最高気温となる51.8℃となった。一説には、現在地球の地軸が大きく変動しているために、上空のジェット気流の流れが変わってしまっていることで、異常気象に繋がっているとも言われる。新型コロナウイルスが気温50度でも感染力を持つか分からないが、少なくとも30度のシンガポールでは感染拡大が見られた。夏を迎えても安心は出来ない。岩手県でも北上市で新たに1人感染し、感染者が4人になったが、岩手県知事は、ウイルスの封じ込めを徹底するために、濃厚接触者の定義に当てはまらなくても疑わしい人を検査し、感染者の早期発見と感染拡大防止に全力を挙げるとして、8月中には県内でPCR検査が1日当たり864件可能になると発表している。この知事の姿勢には少し安心した。検査の徹底こそが、早期発見・隔離の唯一の手段である。無症状・軽症の人がいることを考えれば、実際には検査陽性者の10倍以上は感染者がいると思われる。感染は「蜜」だけではなく、人の移動に大きく関係する。しかし、大規模な漫然としたロックダウン、都市封鎖の効果は限定的であり、経済の悪化を考えれば極力避けた方が賢明だろう。中国のように地域を限定して封鎖し、徹底検査をやることで、経済をある程度維持出来る。岩手県では移動制限がないので、釜石で感染者が出るのは時間の問題だろう。そうなれば、仕事柄もあって、自分も感染することを覚悟している。この感染に関してはよほど中国にいる方が安心出来る。日本の医療体制も新たな感染にはいかに脆弱であるか露呈した。政治や専門家の劣化の甚だしさは想像通りであるが。現在の日本の惨状と類似するのが米国である。日本と同じく医療レベルが高いはずの米国で、感染拡大が抑えられていない。GAFAのようなネット企業だけは最高益を得られても、国全体の経済は32%の落込みである。欧州もユーロ圏19か国で12.1%経済収縮している。米国は感染が拡大し、経済が落ち込む中で、政府の巨額債務と中央銀行によるその引き受け、実質的な債務の現金化を行って経済を支えており、それを見抜いた市場がドルへの不信を持ち始めて来たのだ。米国の中国への攻撃も同じく、中国からのドル離れを加速させている。世界最大の石油消費国である中国は、6月に米国から経済制裁を受けているイランから人民元による石油取引の協定を結んだ。また、6月のインドと中国の国境を巡る小競り合いは、インドの中央アジアへの道を遮断することに発展した。インドはイランのチャバハール港からアフガニスタンのザヘダンまでのイランとの628 kmの鉄道敷設契約をキャンセルされ、中国が建設することになった。中国はイランの石油製品とガスを25年間割引供給を受ける代わりに、25年間で4000億ドル相当イランに投資し、イランの鉄道、港湾、5Gネットワ​​ーク、および電気通信一般を整備する。そして、中国はペルシャ湾のイランの主要港であるジャスクにアクセス出来るようになる。中国はまたパキスタンも「一帯一路」に組み込んでおり、アラビア海のグワダルのパキスタンの港の開発と管理にもかかわっている。中国は107億ドルを投資して、アラビア半島東南端のオマーンの漁村をDuqmの特別経済区庁に改造してもいる。中国のこうした動きの中で、米国はロシア、イラク、ベネズエラと言う産油国をも敵視しており、中国はこれらの国々ともドル以外で石油・ガスの取引を行っている。これまで、世界は取引の決済をベルギーの民間企業であるSWIFT国際銀行間通信協会と言うシステムを利用して行って来た。SWIFTでの取引はドルで行われ、米国ニューヨーク連邦準備銀行へも取引情報が送られる。中国はドル以外で決済可能な独自の決済システムCIPSを立ち上げており、最近、中国の政府系銀行はこのシステムを利用すべきだと主張している。中国の貿易決済に占める人民元は2年前の19%から、今年6月に37%にまで増え、米ドルの割合は同じ時期に70%から56%へと減っている。コロナ禍で、米国中央銀行FRBの資産は7兆ドルになった。それだけドルを過剰に印刷した。貿易縮小・景気悪化もあり世界的にドルの使用が狭まって来ている中で、中央銀行はドルの供給量を増大させている。政府債務の急増もあって、「the currency of last resort(最後の手段の通貨)」と呼ばれる金が上昇するのも当然だろう。
記録的(異常?)な米国政府財政支援