釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

感染症の正攻法を無視する理由

2020-08-19 19:10:55 | 社会
FNNプライムオンラインによれば、東京都は現在は、集中治療室ICUに入院しただけでは重傷者に数えていないと言う。4月には重傷者で数えていたが、いつの間にか外したようだ。重傷者が増えている大阪府では今も重傷者として報告している。こうして自治体ごとに重傷者の「定義」が異なれば、全国的な集計に意味はあるのだろうか。もっとも日本の新型コロナウイルス感染への対策の異様さを思えば、ある意味では何でもありなのだろう。感染症は感染者を検査で見出し、隔離するしか抑えようがない。日本では厚生労働省関係と文部科学省関係の全てを合わせても既存のPCR検査では1日4万件しか出来ない。1月に最初の感染者が見つかって、もう7ヶ月が過ぎているが、その間、ほとんど国として本格的に新たなPCR検査機器の増設など一切やっていない。昨日のフランスのAFP通信によると、中国では7月末時点で、PCR検査能力が1日あたり484万件に達し、中国全土で累計1億6000万人がPCR検査を受けた。中国のPCR検査試薬の技術水準と性能は米国など先進国と同じ水準にあり、製品によっては最先端ですらあると言う。7月末までに、中国でPCR検査能力を備えた「医療機関」は4946にのぼり、全国の病院・疾病予防管理センター・検疫所などの各機関には2億人分近いキットが発送され、1万2000台あまりの検査設備が配備されている。日本では厚生労働省下の検査能力には限界があるため、検査数を制限せざるを得ず、様々な屁理屈を付けて、検査制限を「専門家」に正当化させている。しかし、このために多くの、特に無症状・軽症の感染者を見過ごす結果となり、結局は感染の広がりがいつまでも続く状態に落ち込んでしまっている。15日の日本経済新聞は「無症状者検査で感染抑制  英、経済再開でも陽性率低下」と題して、英国の研究で、無症状感染者まで検査によって見出すことで、感染が抑制され、経済活動も再開出来ることが明かになっていることを紹介している。7日に科学誌Sienceに発表された「Fast, cheap tests could enable safer reopening(早くて安価なテストにより、より安全な再開が可能になる)」なる論文でも、検査を限定しないで拡大した検査により経済の再開がより安全に行えることが示されている。特に、現在の日本の各地で見られるように、医療機関や老人施設などは集団感染や重傷者が出やすく、積極的に定期的な検査をしなければ、それを防ぐことは不可能である。しかし、日本は厚生労働省主導の行政検査に阻まれ、感染拡大は抑えられないため、経済悪化も避けられない。米国は検査数を膨大に増やしたが、国民の「自由」が感染を拡大させている。日米ともに戦後最大の経済の落ち込みであるにもかかわらず、昨日、米国では株式市場で主要な指標のひとつ、S&P500指数が2月19日の最高値を更新し、3389.78で終え史上最高値を更新した。実体経済と金融経済の極端な乖離が起きている。3月上旬に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への懸念からパニック売りが相次ぎ、株価が暴落すると、中央銀行FRBは3月23日、ほぼ無制限の量的緩和策を打ち出し、以後、株価は上昇に転じて来ていた。今回のS&P500社を見ると、ハイテク株が極端に上昇しているだけで、500社中の半数以上はむしろ下がっているのだ。中央銀行FRBは、しかし、3兆ドル規模の支援策とリスク性資産のてこ入れに動いて社債買い入れにまで手を広げている。このため通貨ドルの価値を自ら引き下げる格好になっている。昨日のロイターはJPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長佐々木融氏の「コラム:ドル安トレンド長期化を促す環境変化」と題する記事を載せたが、そこで今後ドル安が長期化する理由を述べている。米国は長らく双子の赤字と言われる物と投資の国際取り引き収支である経常収支と財政の二つの赤字を抱えて来た。こうした国の通貨は通常では安くなる。しかし、米国の通貨ドルは基軸通貨であったことと、金利を他国より高く上げていることが可能だったために、他国からのドル買いを維持して来られた。ドルが他国に買われる限り、ドルを一定程度高く保つことが出来る。基軸通貨と金利と言う二つの要因でドル安になることを避けて来られたのである。しかし、それが今や困難になって来た。金利差が極めて縮小して来たからだ。「JPモルガンがカバーしている31の中央銀行(新興国含む)の政策金利の加重平均値は既に1.09%まで低下している。この加重平均値は来年早々にも1%を割り込むことが予想されている。世界金融危機(リーマン・ショック)後のボトムが1.81%だったことを考えると、世界は未曾有の低金利状態に入っている。」、「未曾有の低金利状態は、世界各国の金利差もなくなっていることを意味する。主要10カ国・地域(G10)の政策金利の最大値と最小値の差はこれまで250bp(ベーシスポイント)を下回ることはなかったが、現在は100bpまで縮小してしまっている。10年国債金利の最大値と最小値の差もこれまで概ね300bp程度がボトムとなりそれ以上縮小しなかったが、足元は130bp程度まで縮小してしまっている。」、「財政の崖を埋めるために財政支出の拡大は継続せざるを得ないようにも見える。」「こうした政策を続ければ、紙幣の価値が下がると予想する人は多くなる。」。政府債務がもはや返済不可能な領域に踏み込んでしまった日本と米国は、むしろ意図的にコロナ禍を長期化させているようにも見える。2〜3年をかけて徐々に通貨価値を下げて、インフレを招き、試験中のデジタル通貨の完成を機に、一挙に形式上の債務返済を行う。
米国中央銀行FRBは3月23日にルビコン川を渡った。もう引き返すことは出来ない。(ドル金価格推移)

コロナ禍が暴く日本の遅れ

2020-08-18 19:09:56 | 社会
昨日は浜松市で41.1度と言う記録的な気温となったが、米国カリフォルニア州デス・ヴァリー(死の谷)では16日に気温が54.4度と言うまさに記録的な高温になった。現在の米国では、南西部アリゾナ州から北西部ワシントン州に至る西海岸を、熱波が襲い、17日と18日に暑さのピークを迎えるとされている。デス・ヴァリーでは1913年に56.6度の記録があるが、確証が得られていない。釜石では昨日から暑さが少し和らぎ、今日は午前中に27度まで上がってからは少しずつ下がって来てくれた。今日は内陸より気温が低かった。これだけ気温が上がっても、新型コロナウイルスの勢いは治らない。今日の東京新聞は、「スペイン風邪が流行した1910年代後半以降の、製造業の生産などに関する米43都市のデータを比較」した、米国連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストらの結論、「外出制限などの社会的距離の確保を早く徹底的にやって感染を封じ込めた方が、経済の回復は早い」と言うことを紹介している。日本も米国も戦後最大の経済の落ち込みとなっているが、徹底して感染の封じ込めに当たって来ている中国や台湾、韓国は日米ほどの落ち込みは見せていない。集団免疫を考えたスウェーデンは、予想以上の死者を出し、しかも周辺国との貿易も影響し、経済的な打撃も受けている。しかし、驚くことに集団免疫を狙ったそんなスウェーデンでさえ、社会的距離に関しては緊急事態宣言解除後の日本より厳しくしているのだ。日本で第2波が拡大するのも当然だろう。感染症を早期に封じ込めることが経済的な落ち込みを少なくする唯一の方法である。そのために欠かせないのが検査である。しかし、現在の日本の「能力」は最大で1日3万3000件足らずであり、ようやく今月13日になり、文部科学省が大学や研究機関への補助制度を設け、保有するPCR検査機器などの活用を進めることにしたことが報じられている。しかし、合わせて1日に最大4400件余りの検査でしかない。無論、ないよりはいいのだが。これほど経過していても、検査体制を根本的に改革するほどの検査能力の増強が見られていない。ゼロ金利の中で財務省が今日実施した30年利付国債の入札結果は、平均落札利回り0.617%となっている。買い手の勢いがないため、金利はゼロではなくわずかでもプラスになっている。この財務省の発行した国債を市中金融機関が直接には買い取るが、すぐにまたそれを日本銀行が買い取る。しかし、この日本銀行の買い取りなどは、現在政府が企業に呼びかけている在宅勤務の活用には及んでいない。このことを今日のブルームバーグが伝えている。欧米ではすでにコロナ禍の中でこうした場面では在宅で可能となっている。日本の遅れはこのコロナ禍で白日の元に曝されたとも言える。昨日の東洋経済は「マレーシアを侮る日本人が驚くコロナ後の日常」と題する記事を載せている。副題は「意外にハイテク先進国の新常態はこんなに凄い」となっている。「固定電話回線やパソコン、光ファイバーなどを含め、既存の社会インフラが整備されていない東南アジアなどの新興国」で、コロナ禍は、それらを飛び越えて、いきなりスマートフォンを普及させ、全てがスマートフォンでこなせる社会が一気に到来した。「日常生活のあらゆる側面でデジタル化が浸透してきている。」「マレーシアは人口の125%に当たる4000万の携帯端末が契約され」、「デジタルを駆使したサービスが急速な進展を遂げている。」「政府が旗振りをしての急速なデジタル化が進むマレーシア」なのである。ショッピングモールには、AI技術を活用した「顔認証デバイス」と「高速体温測定システム」などが設置され、マスク着用と体温がチェックされている。これにより入店が制限され、感染を予防しながらショッピングが維持される仕組みを構築している。「マレーシア政府は、感染者の追跡調査を確実に遂行させるために、レストランやスーパーマーケットなどの入店前にも、氏名、電話番号、ID番号、入店日時、体温を記録することを求めている。」が、「各レストランや店舗ではQRコードにアクセスして必要情報をスマホから簡単に入力できる独自のシステムを次々に構築。システム構築の金銭的余裕がない小さな飲食店や屋台でさえも、白い紙に印刷した“手作り”のQRコードでデジタル化対応」している。先進的なデバイスに溢れているように見える日本で、実は、それらが何ら活かされていない実態が見えてくる。最近、日本のトヨタが時価総額で、米国の電気自動車企業テスラに追い越された。確かにテスラも実態は株価ほどには芳しくはないが、いかに日本がもはや旧態化した産業にしがみついているかの現れでもある。政府と企業がデジタル化の意味を理解していないのだ。米国や中国のような巨大ネット企業が日本には生まれて来ない。今月5日、米国The New York Timesは「Japan’s Locked Borders Shake the Trust of Its Foreign Workers(日本の国境封鎖は外国人労働者の信頼を揺るがす)」と題する記事を載せた。日本の入国規制で問題とされているのは、一般の日本国民に認められている旅行の権利が、永住者や定住者などの外国人に認められていないという点だと記事では書かれている。日本政府は資本と人材を世界から集めようとし、働く場としても日本はアジア随一だと売り込んでいるが、コロナ禍における在留外国人の扱いのひどさの前には色あせて見えるとまで書かれている。日本は、主要先進7カ国(G7)の中で唯一、自国民には自由な行き来を認めておきながら外国人の渡航を制限しているとされるが、それは空港での検査件数がキャパシティを超えることを防止するために必要な措置だと当局が答えていると書いている。「日本の1日あたりのPCR検査の実施可能件数は約3万3000件にすぎず、先進諸国の中では断トツの少なさだ。このうち国際空港に振り向けられているのが約3000件」だと言う。現在、日本に永住や定住するもので日本に入国出来ない人が10万人いる。
大待宵草

中国は世界の牽引車となるか

2020-08-17 19:10:28 | 社会
今日の日本経済新聞は、内閣府が発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP)が年率でマイナス27.8%となったことを伝えている。リーマン・ショック後の2009年1~3月期の年率マイナス17.8%を超える戦後最大の落ち込みとなった。同時期の米国GDPもマイナス34.6%と言う大幅ダウンである。一方、中国の国家統計局が7月に発表した中国の4~6月期GDPの伸び率は前年同期比3.2%のプラスであった。IMF国際通貨基金の2020年の予想では、米国はマイナス8.0%となり、2019年のプラス2.3%から大幅に悪化する。大恐慌後の1932年のマイナス12.9%や、第二次世界大戦直後の1946年のマイナス11.6%に迫る景気後退になる。中国は、プラス1.0%と主要国で唯一プラスを維持し、米中の差は9.0%に拡大すると見られている。世界銀行やOECD の米中経済の予測も類似したものになっており、コロナ禍はかえってGDPの米中逆転を早め、2025年頃になる可能性が出て来た。7月末の時点で、中国の鉄道営業距離は世界2位の14万1400Kmに達した。高速鉄道の営業距離は3万6000Kmで世界一であるが、今月12日に中国国家鉄路集団有限公司が発表した2035年の中国の鉄道発展計画によれば、2035年までに鉄道網の総延長を20万Km、そのうち高速鉄道網を7万Km前後にまで延長し、人口20万人上の都市を鉄道網で、50万人以上の都市を高速鉄道でカバーするほか、1~3時間の高速鉄道輸送圏、1~3日の貨物輸送圏を全国的に形成すること、時速350キロの自動運転や、列車運行のスマート化管理を実現することが盛り込まれている。「中国は単純な損得勘定で鉄道建設を進めているわけではなく、」「比較的後れている地域の生活を改善し、地域経済の発展を促進する」としている。2004年にはドイツの技術で、上海と上海浦東国際空港間を世界最速の時速430Kmのリニアモーターカーを運行しているが、中国の技術で時速600Kmのリニアモーターカーをも開発するとしている。スイス全国ビジネス連合Economiesuisseの経済分析者は、中国市場はその規模と継続的な拡大により、重要な世界の成長ドライバーになっていると分析している。今日の中国の経済政策の最も重要な部分は、「コロナウイルスの危機から生じる困難にもかかわらず、世界への扉を広げるという政府の取り組み」で、「オープン市場は中国の長期的な成長の鍵であり、残りの世界にとってもそうだ」としている。2010年以来、スイスにとって中国はアジアで最大の貿易相手国であり、EUと米国に次ぐ世界で3番目に大きい貿易相手国であり、「中国には非常に多くのスイス企業があり、顧客として、サプライヤーとして、または研究開発パートナーとして中国企業と協力している」。今年3月23日、米国中央銀行FRBは「ルビコン川を渡った」と言われる。古代ローマ時代、ガリアに駐屯していたシーザーは、元老院の命を無視して、大軍を引き連れて、ガリアとローマの境であるルビコン川を渡り、ローマに向かった。反逆者としてもう引き返すことが出来なくなった。中央銀行FRBは、コロナ禍で下落した株式市場や政府支出を支えるために、無制限の金融刺激策を行うと宣言した。経済学では通貨の流れを「流動性」と言う。通貨が多く流れれば、流動性が高いとされる。景気が悪化すれば、金利を下げたり、債券を買い取ることで流動性を高める。それにより、企業の投資や個人の消費が高まると考えるからだ。しかし、2008年のリーマン・ショック以後の米国では、中央銀行FRBが金利を下げ、債券を購入して、「流動性」を高めても、高まった「流動性」は実体経済ではなく、金融経済へ流れた。株式や債券の価格は上がったが、投資や消費は思うようには増えなかった。コロナ禍のFRBの「ルビコン川の渡河」は、それを一層拡大させ、株式市場の高騰を招いている。こうした事態を経済学ではliquidity trap流動性の罠と称される。実体経済の改善の目的で行った金利引き下げや債券購入が、目的とは異なり金融経済へ流れ込んでしまう。米国中央銀行FRBはまさにその罠にはまってしまった。もはや容易にはそこから抜け出せない。新型コロナウイルスの感染拡大の波がいくつも押し寄せればなおである。罠に落ちた米国を尻目に中国商務省は14日、首都北京や近隣の天津市、北部の河北省、南にある揚子江デルタ、裕福な南部沿岸、広東省、および近隣の香港とマカオなどで、2022年の冬季オリンピックに間に合うように今年5月公表より広くデジタル人民元を使用すると発表した。4月にはすでに深圳などの4つの主要都市で一部導入している。中国ではすでにほとんどの個人消費はデジタル決済となっていて、現金支払いがもう出来なくなっている。デジタル人民元に切り替われば、悪評のあるシャドウバンクは排除されることになる。中国のこの動きに刺激されて、日米のデジタル通貨も加速するかも知れない。日本銀行はすでにデジタル通貨の研究に入っている。米国FRBも同様だ。この切り替え時が日本では預金封鎖と重なるのかも知れない。
河川敷で休む鹿たち(遠くに愛染山が見える)


75回目の敗戦の日に

2020-08-15 19:23:03 | 文化
昨日は曇天で、一時的にわずかに小雨も降り、最高気温は26度で凌ぎやすかったが、今日は青空が広がり気温は34度まで上がった。また内陸より気温が高かった。いつもの釜石だと夏は内陸より涼しく、冬は暖かいはずなのだが。まだ強い夏の日射しの中で、ススキの穂が風に揺れ、隣家の紅葉の葉の一部がもう赤く染まって来ている。午後3時前にはまたSL銀河の汽笛が聴こえて来た。しばらく前から花巻〜釜石間の運行が始まっている。今日は釜石へやって来て、明日、午前中に花巻へ向かう。夕方、日が西の山陰に入り空の雲が朱に染まり始める頃、いつもの川沿いのウォーキングに出かけた。ヒグラシやエゾゼミが山裾で鳴き、今日も河川敷には鹿たちがいた。歩き終えて家に着く頃には、早くも送り火を焚く家があった。あの世で安穏に暮らしていた先祖も、今年はこの世のコロナ禍の喧騒に驚いていたかも知れない。 日本での感染症では結核とスペイン風邪が歴史的に知られる。日本で分かっている最古の結核は2000年前の弥生時代の鳥取市の青谷上寺地遺跡で発掘された100人以上の人骨の中から見つかった脊椎カリエス痕である。この遺跡には水田跡が当然ある。昨年2月、鳥取大学などの研究者が2010年に発掘調査した、中国・長江流域の広富林遺跡(上海市)から、5000年前の東アジアで最古の女性の結核痕が見つかったことが報じられた。300基ほどあった新石器時代の墓の一つからやはり脊椎カリエス痕が見出された。長江のデルタ地帯はこの広富林遺跡や近くの良渚遺跡など、同時期に盛んに稲作を行っていた遺跡が集中している。研究者は、日本の結核は稲作と共に日本へもたらされたと考えている。六国史と呼ばれる正史の一つに「日本三代実録」と言う歴史書があり856年から887年までの3代の天皇の記録を綴っている。貞観地震の3年後の862年に「一月自去冬末、多患、咳逆、死者甚衆」とあり、「咳逆」が日本で最初に記述されたインフルエンザだと考えられている。世界では紀元前412年の医学の父と呼ばれるヒポクラテスの記録がインフルエンザの最初の記録だとされる。現在のようなマスクの日本での始まりは、明治初期の工場での粉塵対策として使用されたのが最初と言われる。1918年の日本でのスペイン風邪の拡大で、予防用に使用が一般に広がったそうだ。日本の長い歴史では、感染症は何度も発生しているが、国家としての本格的な予防策が取られたのは、まさに軍事目的からであった。明治の殖産興業で製糸工場の若い女工たちの間に結核が広がって行ったが、国としての対策は取られなかった。スペイン風邪で結核も拡大し1918年には10万人あたり257人と言う最高値となり、1919年に結核予防法なる法律だけはとりあえず整えられた。1930年代に入り,日中戦争が本格化した後、男子青壮年の体力低下と結核死亡が誰の目にも明らかになり,兵力低下が歴然となると、結核対策として小泉親彦陸軍省医務局長ら陸軍主導で1938年に厚生省が設立された。それまでは国家の衛生業務は内務省下の警察の管轄であった。1940年5月には3ヶ月をかけた大規模な全国の健康診断を実施する。1941年には小泉親彦自身が厚生大臣となり、対策を強化した。一方、軍医学校時代の部下であった石井四郎陸軍軍医中将は、満洲の731部隊で、「マルタ」を使った結核撲滅試験も実施していた。敗戦後、1947年に設立された国立予防衛生研究所は731部隊出身の研究者が歴代所長となり、1997年に現在の国立感染症研究所に改名された。今年1月から日本で広がっている新型コロナウイルス感染症は、こうした歴史のある厚生労働省と国立感染症研究所により、真っ先に「第二類相当の指定感染症」に指定された。これにより、全てPCR検査は「行政」検査となり、保健所・衛生研究所系列でしか検査が出来なくなり、検査数が当初から制限せざるを得なくなった。とても保健所・衛生研究所系列だけでは検査に対応し切れなくなると、医療機関との面倒な「委託契約」を交わして、少しは検査を拡大したが、全ては国立感染症研究所がデータとして把握可能な範囲でである。今後、万が一欧米のように手が付けられないほどの感染拡大に見舞われれば、この体制自体が崩壊するだろう。検査も隔離も治療も全てが機能不全となる。「検査を増やせば医療崩壊する」と言わざるを得なかったのは、厚生労働省医務技監や国立感染症研究所が主導権を握る以上、検査数に制限があったからである。しかも、「第二類相当の指定感染症」としながら「自宅待機」などと言う「第二類相当の指定感染症」としてはあり得ない処置を導入している。仮に「自宅待機」であっても、容態観察を慎重に行わなければならない。突然の急変がある。この医療ではなく現在の「行政」主導の対策の大きな欠点は、感染力のある無症状・軽症者をいつまでも把握出来ないことだ。単純な自宅待機で家族内感染も引き起こしている。病気の大原則である早期発見・早期治療を無視する「研究者」と称する人たちの言説がいかに非科学的であるか。いまだにまともな医学論文が他国に比べて出て来ない日本の現状である。
アメリカ芙蓉

米国はどこまで強硬でいられるか

2020-08-14 19:16:09 | 社会
25年以上前にパソコンを始めたが、最初にパソコンの面白さを教えてくれたのが、Macintosh、Macであった。企業はApple社であったが、社名は現在より遥かに知られていなかった。あまりにも楽しいパソコンだったので、こんなパソコンを作ったのはどんな人なのだろうと、創業者のスティーブ・ジョブスに興味を持った時期があった。マイクロソフトのビル・ゲイツが「どうしてMacのようなパソコンが作れないのだ」と、社員を叱咤激励して、ようやくWindows 95が完成し、ビジネス界に広がって行った。マイクロソフトの急激な成長とは逆にアップルはそう長くは続かず、潰れるだろうと噂されるようになった。アップルの窮地を救ったのは、2007年に発売されたiPhoneであった。iPhoneのおかげで、今もMacが使えると言えるのかも知れない。現在のApple社は、株式の時価総額が1兆9669億ドルの世界一の企業だ。マイクロソフトの時価総額はアマゾンに次ぐ3位で1兆5793億ドルである。Appleの時価総額は日本の年間国家予算の2倍である。そのAppleを支えて来たのが中国である。製品の多くが中国で作られ、売り上げの17%を中国が占めているが、利益では29%を中国が占めている。ゴールドマン・サックスによれば、中国では利益率の高い製品が売れているためだ。今年4月30日、Appleはカリフォルニア州クパティーノで、2020年度第2四半期の業績を発表した。売上高は583億ドルと、前年同期から1%増大した。しかし、昨日のブルームバーグは「アップルの4.7兆円中国市場に黄信号-「微信」禁止の大統領令で」と題して、「米アップルは何年もかけて中国を440億ドル(約4兆7000億円)規模の成長けん引役に育ててきた。しかし、トランプ米大統領が先週、その全てに疑問を投げかける行動を取った。」と報じている。「トランプ氏が通信アプリ「微信(ウィーチャット)」が関わる取引を米企業に禁止する大統領令を発令したことを受け、中国の「iPhone(アイフォーン)」愛好者は同端末の利用継続について考え直している。ウィーチャットは中国の日常生活に必要不可欠となっているスーパーアプリだ。」「中国版ツイッターの微博(ウェイボ)で消費者にウィーチャットとアイフォーンのどちらを選ぶか質問した調査では、全体の約95%がアイフォーンの方を手放すと回答。同調査にはこれまで120万人余りが参加している。」。中国が現在の世界第2位の経済大国に成長したそのきっかけは1978年12月の鄧小平(とうしょうへい)による「改革開放」政策であり、1979年の、深圳(しんせん)・珠海(しゅかい)・汕頭(スワトウ)・厦門(アモイ)の4地区を経済特区として外国資本を導入したことが始まりである。香港に隣接する漁村であった深圳は、今では人口1300万人を超えるアジアのIT産業の中心都市となっている。鄧小平は「豊かになれる条件を持った地域、人々から豊かになればいい」と言う「先富論」を掲げて、中国経済の成長を図った。2008年のリーマン・ショックの影響を受けなかった中国は、一層、米国企業の製造と消費の場となり、特に、14億人の所得が上昇するとその消費への影響は凄まじい。今月7日の日本経済新聞は、「中国、科学論文数で首位 研究開発でも米国と攻防 」と題する記事を載せた。日本の文部科学省の科学技術・学術政策研究所が米国調査会社クラリベイト・アナリティクスのデータを基に主要国の論文数などを分析した。「中国の17年(16~18年の平均)の論文数は30万5927本。米国の28万1487本を上回り1位となった。3位はドイツで6万7041本。日本は6万4874本で前年と同じ4位だった。」論文の質でも「被引用数が上位10%の注目論文のシェアをみると、17年の1位は米国の24.7%、中国は2位で22.0%。さらに注目度が高い上位1%の論文では米国は29.3%、中国は21.9%となった。」、「中国の研究者数は約187万人で、米国(約143万人)を上回り世界1位。」である。「米中の得意分野は分かれる。中国は材料科学、化学、工学、計算機・数学で高いシェアを誇る。米国は臨床医学、基礎生命科学が高い。」となっているが、こうした中国の科学・技術面の「躍進」が米国に脅威を与えて来てもいるのだろう。しかし、もう中国の「成長」は止められないだろう。米国の強硬策は、むしろ米国の衰えを加速させることになる。11日のブルームバーグでは「「WeChat」禁止のトランプ大統領令、米企業の国際展開を脅かす恐れ」、9日の米国WIREDは、「中国アプリを排除する米国の大統領令は、デジタル世界の分裂を加速する」など、強硬策が米国の民間企業にとってマイナスとなることを報じている。
WeChat微信を開発した中国企業テンセントは株式時価総額が世界8位である


使命放棄した中央銀行

2020-08-13 19:10:49 | 経済
昨日に続いて今日も釜石は最高気温が35度になった。今日は内陸より4度も高い。しかもこの暑さの中でウグイスが鳴く不思議さだ。もちろん、セミも鳴き、夜には虫も鳴く。家の近くの甲子川の河川敷では、毎日のように数頭の鹿の姿を見る。熊も市内のあちこちで出没しているようだ。東北のまして釜石のような他都市から隔離されたような地域だと、感染の不安がないのか、お盆ともなると、他府県ナンバーが増え、バイクのツーリングまで見かける。 感染者が536万人を超え、感染者数では世界のトップを走り続ける米国も、7月半ばには1日8万人近い新規感染者がいたが、現在は5万人代に減少して来ている。米国や欧州では、この新型コロナウイルス感染そのものが「存在しない」ものだとして、マスクは無論、社会的距離やロックダウンなどに対しても権利の制限だとして、強く抗議をする人が少なからずいて、そうした人々の抗議運動すらある。また、一方で、10日の米国メディアCNNは、「米国籍放棄の数、記録的な水準に 1~6月5800人超」と題する記事を配信している。「すでに米国外に住んでいる人が、トランプ米大統領の政策や新型コロナウイルス感染拡大への対応をめぐる不満から放棄に至るケースが多い」と言う。「米国人が市民権を放棄する手続きとしては2350ドル(約24万9000円)の手数料を支払」わなければならないが、「それでも放棄者は今後ますます増えることが予想されると」ニューヨークの会計事務所、バンブリッジ・アカウンタンツの経営者が語っている。恐らく国籍放棄者の中には、ジム・ロジャーズ氏のように、今後の米国そのものに不安を抱く富裕層も多いのだろう。ビル・ゲイツは日本の軽井沢に巨大な別荘を持っているが、どうだろう。7月半ばに比べて減少してはいるが、それでもまだ現在5万人を超える新たな感染者が出ている米国は、リーマン・ショックを超える、世界大恐慌以来の実体経済の落ち込みである。にもかかわらず、昨日、米国では株式の代表的な指標の一つであるS&P500が今年2月の最高値3386.15を瞬間的に上回って、3386.20となった。メディアはロシアで初めてこの新型コロナウイルスのワクチンが承認されたことが原因だと伝えている。しかし、以前から書いているように、特に米国の株式市場は、中央銀行の異例の金融緩和、要するに大量の通貨発行により支えられている。それがなければここまでバブルは膨らまない。米国株式市場は2008年のリーマン・ショック後、中央銀行により実体経済を反映する機能を剥奪された。中央銀行の超低金利と債券買い取りにより、大量のマネーが実体経済ではなく、金融経済に流れ込んだ。このコロナ禍はそれをさらに極端に拡大させた。世界中からも米国の金融市場にマネーが流れ込んでいる。世界の中央銀行によるマネーは、今年3月には79兆ドルであったが、今や一気に9兆ドルも増えて、88兆ドルである。米国中央銀行は、コロナ禍で、急速に経営が悪化した企業の社債、いわゆるジャンク債まで積極的に買い込んでいる。中央銀行マネーが企業を通して、株式市場、国債市場に流れ、金価格を下げた。しかし、この中央銀行の大量通貨発行と言う根底が変わらない以上、金の価格下落は極めて一時的なものだ。ノーベル経済学賞を受賞し、アベノミックスでも提言をした米国ニューヨーク市立大学大学院センター(CUNY)ポール・ロビン・クルーグマンPaul Robin Krugman教授は、自身のツィッターで、今年に入り急上昇した金価格について、債券利回りが低いため投資家が金を購入しているのであり、インフレだからではない、と書き込んでいる。しかし、では、何故、債券利回りが低いのか、には全く触れていない。米国の債券利回りがゼロになったのは、まさに中央銀行が市場原理を無視して、政府や企業を支えるために債券を買い込んだからである。債券は買い手がいれば、債券価格を高めて、その利回りは下げる。逆に、買い手がいなければ、価格は下がり、利回りの方は上がる。コロナ禍は企業収益を圧迫し、政府の救済策を迫る。この両方を中央銀行は大量通貨発行で支えている。まだ完全なワクチンも治療薬も開発されてはいないが、仮にそれらが開発され、コロナ禍が終息しても、山積みになった政府債務や大量発行された通貨はまだそのまま残っているのだ。中央銀行の最大の使命は通貨価値の維持である。それを自ら放棄して、通貨価値を薄めている。金価格が上昇しない方がおかしいだろう。
キクイモモドキ(ヒメヒマワリ)

対中強硬策

2020-08-12 19:13:03 | 社会
昨日のブログで100日間新規感染者が出ていないニュージーランドについて書いたが、そのニュージーランドでまさに昨日新たな4人の感染者が出た。ニュージーランドは人口がわずか479万人の小さな国で、首都は人口41万人のウェリントンだが、今回新規感染者が発生したのは、人口153万人の最大都市オークランドの1家族の4人である。政府は今日の正午から3日間のロックダウンを宣言し、感染経路の追跡にあたる。ロイター通信によれば、7月にも、エクアドルから輸入された冷凍エビから新型コロナウイルスが検出されて、感染者を出した中国の国際貿易港である大連市で、再び、昨日大連港に荷揚げされた輸入の冷凍魚介類から新型コロナウイルスが検出された。ウイルスは包装の外側に付着していたが、どこから輸入されたものかは明らかにされていないと言う。感染者は現在は出ていないようだが。一般的には梱包材に付着したウイルスは輸送中に消失するが、冷凍されている場合には、輸入国で解凍後に活動的になるのかも知れない。ロシアが早々と新型コロナウイルスに対するワクチンを承認したが、治験を端折っており、信頼性に疑問が持たれている。プーチン大統領は、二人の娘のうち一人がこのワクチンをすでに打ったと語っている。ただロシアはアビガンと同じものを治療薬としてやはり早い段階で承認してもいる。米国は感染者が530万人にもなり、死者は17万7000人である。総検査数が6694万を超えており、わずか102万でしかない日本のように見かけ上少なくなっているだけでなく、実態がわからないよりはいいと思うが。しかし、これだけ感染が拡大したこと自体は、明かに大統領の失策と見られており、11月の大統領選を控え、大統領は対立候補と差があり、何とか逆転をする必要に迫られている。昨日の英国BBCは、対立候補のバラク・オバマ前大統領の副大統領であった民主党のジョー・バイデンとの支持率の差を「バイデン氏が全国調査で安定リード」として、1月以来の両者の支持率のグラフを載せている。最終ではバイデン氏が49%で、トランプ大統領が40%となっている。感染が拡大して行った3月以降はほぼ一貫して差も開いたままである。これを挽回するために対中強硬策を取らざるを得ない。ロイター通信によると大統領が現在米国で使用禁止しようとしている中国北京字節跳動科技(バイトダンス)の開発した動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は、すでに10代を中心に、米国内のアクティブユーザーは約1億人いる。中国の騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」も大統領は禁じようとしている。大統領が強硬な発言や行動をすると、確かに一時的には支持率は上昇するようだ。どうしても米国の対中国強硬策に目を奪われがちだが、その裏では、日本と韓国へも圧力がかけられている。米中対立は韓国や日本にとっての軍事面での脅威が高まるが、そんな中で、米国は駐留米軍の経費負担を増やすよう迫っている。経費を引き上げなければ、駐留米軍は引き上げると迫る。ドイツは経費負担増を認めなかったため、米国はドイツの駐留米軍を3万4500人から2万5000人まですでに減らした。先月、米国国防総省は韓国に駐留する駐留米軍2万8500人の兵力を縮小する案を大統領に提出している。米国は韓国に対してこれまでの5倍の経費負担を要求している。昨年9月、国家安全保障問題担当大統領補佐官を解任されたジョン・ボルトン氏によれば、日本も駐留経費の上乗せに85億ドル(8500億円)もが要求されることになるとされる。これは現在の4倍になる。米国大統領は商人である。米中対立の「緊張」を利用して、駐留米軍経費の負担増を図っている。少なくとも現在の対中国強硬策は選挙のためであり、やり過ぎて、中国が米国からの輸入を約束した777億ドルの工業品、524億ドルのエネルギー、320億ドルの農畜産品を反故にされないようにしなければならない。これらの米国からの輸出がダメになれば、それらの生産者の支持を失う。米国大統領は、何度も自分の企業を倒産させては、そのたびにさらに大きな企業に成長させて来た商人である。また、中国の習近平主席は党員数9200万人と言われる共産党の中で、激烈な派閥争いを勝ち抜いて来た人物である。日本のような2代目、3代目のただ地盤を引き継いだだけの政治家とは政治土壌が全く異なっている。それは官僚についても同じである。米国も中国も日本とは異なり、いつでも更迭があり得る土壌が続いて来た。日本も形だけは内閣人事局が作られてから、同じようにはなっているが、あくまでもトップのレベルに適応するだけである。米国は初動の遅れで、もはや感染拡大を容易に抑えられないところまで来てしまった。今、アジアでは日本の現在がちょうどその米国に続こうとしているように見える。何もしない引き籠り首相は、結局、コロナ災禍と膨大な債務だけを残すことになるのか。

世界はどこへ向かうのだろう?

2020-08-11 19:18:21 | 社会
昨日の英国国営メディアBBCは、「Coronavirus: Is the world winning the pandemic fight?(コロナウイルス:世界はパンデミックの戦いに勝っているか?)」なる記事を載せた。今や世界の新型コロナウイルス感染者累計は2000万人を突破し、死者は74万人に迫る。WHO世界保健機関が1月30日に緊急事態宣言を発した時、世界の感染者は1万人弱で、200人以上の死者は全て中国であった。「感染者が最初の10万人に達するには67日かかったが、次の10万人確認は11日、その次の10万人確認はわずか3日しかかからなかった。」。この記事を書いたBBC健康科学担当編集委員ジェイムズ・ギャラガーJames Gallagherは「人類全体に共通する事実がひとつある。」として、我がどこに住んでいようが「このウイルスは、人と人の接触によって増殖する」、「この大原則こそ、世界中のあらゆる状況を説明するものだ。あなたが世界のどこにいようと。そして世界の未来の姿も決定する。」と書いている。現在、100日間新規感染者が出ていないニュージーランドが最も注目されると書いている。政府が早期に対応して、ロックダウンを開始し、国境を封鎖した。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のデイヴィッド・ヘイマンDavid Heymann教授は貧しい国であっても、基本的な対策をしっかり取ることで、成功している国の例として、モンゴルを上げている。中国と長い国境を接しているにもかかわらず、感染者は293人で死者はいない。260人はすでに回復している。戸別訪問による聞き取り調査を徹底して、感染者の接触者を追跡して特定して、隔離した。「加えてモンゴル当局は、学校を素早く閉鎖し、国外移動を制限し、マスク着用や手洗いの励行を早くから実施した。」。「その一方で、 "lack of political leadership"「政治的指導力の欠如」が多くの国で効果的な感染対策を妨げたと」同教授は指摘している。その代表として米国やブラジルが上げられている。ロックダウン解除後の欧州でも「スペイン、フランス、ギリシャはいずれも最近、夏になって最多の感染者数を記録している。ドイツは過去3カ月で初めて、1日に確認される感染者が1000人を超えた。」とある。感染者が再び増加して来た国として、イスラエル、ペルー、オーストラリアに並んで日本もグラフで例示されている。日本の場合は、「政治的指導力の欠如」が致命的である。厚生労働省医務技監ー国立感染症研究所などのいわゆる「感染症村」の問題も大きいが、それをも御し切れない政治的指導力の欠如である。首相自体はPCR検査を増やそうと言う意志はあったし、アビガンを治療薬にしようとしていたが、「感染症村」に阻まれてしまった。しかし、それこそがまさに「政治的指導力の欠如」の最たるものだろう。そして、そうであれば、今後の日本の感染拡大も悲惨になることしか予想出来ないだろう。米国の巨大コンサルティング企業、マッキンゼーの研究部門であるMcKinsey Global Instituteが今月6日に出したレポート「Risk, resilience, and rebalancing in global value chains(グローバルバリューチェーンにおけるリスク、回復力、リバランス)」は、この新型コロナウイルスパンデミックが、想定される世界的な戦争の2倍の経済的損失を世界にもたらすと報告している。マッキンゼーの分析者は、製造の100日間の停止が与える影響を評価した。仮想の世界大戦による被害が15兆ドルになることはすでに算出されていた。そして算出された新型コロナウイルスパンデミックによる損失は倍の30兆ドルに達し、10兆ドルと推定される大不況の場合の3倍、大規模なサイバー攻撃の影響の30倍となる。パンデミックは業種では、アパレルにとって最悪の影響を及ぼす。アパレルは雇用の最大のシェアを占め、世界で少なくとも2500万の仕事を提供し、雇用では次に航空宇宙、家具、石油製品が続く。そして、20億人が今後数か月で職を失う可能性があるとされる。米国では1971年のニクソン・ショック以後、何度かの金融危機を経て来た。それらの金融危機では中央銀行が救済の主役であった。しかし、今回のようなパンデミックでは製造や雇用が打撃を受ける実体経済もが巻き込まれる。今のところは米国では中央銀行FRBが実質マイナス金利によりバブルとなった金融市場を支えているが、これも遠からず崩壊するだろう。実体経済の救済の主役は政府になるが、その政府には余力はなく、中央銀行の増刷紙幣に頼る他はない。つまり、結局は全てが中央銀行の通貨印刷にかかって来ると言うことだ。現在、1オンス2000ドルを超えた金が容易に4000ドルに達すると予想する投資家が出て来る所以である。果たして世界はどこへ向かうのか?混沌しか見えて来ないのだが。
職種別コロナ衝撃レベルランキング(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)

「ファクターX」の幸運は続かない

2020-08-10 19:16:12 | 社会
今日は再び30度を超え34度となった。雲が流れ、日射しは多くはなかったが。東北南部は今月2日に気象庁が梅雨明けを報じたが、北部は結局梅雨明けは特定しないと7日に発表された。梅雨明けしたのかしないのかはっきりしない曖昧な状態だと言うことだ。まさにそんな天気が続いている。お隣の韓国では今日も豪雨に悩まされている。昨日まで47日間続く9年ぶりの最悪の梅雨で、すでに50人の死者・行方不明を出し、今月だけでも667箇所で土砂崩れが起きている。昨日は、韓国の主要4大河川、漢江(ハンガン)・錦江(クムガン)・洛東江(ナクトンガン)・栄山江(ヨンサンガン)の堤防が初めて揃って決壊している。その上、今日は台風5号が上陸している。昨日は、午前11時2分に市内に黙祷のためのサイレンが響き渡った。釜石では毎年鳴らされているが、息子は初めてで、驚いていた。長崎では首相が広島と同じ原稿を読んだようで、住民の不評を買ったと報じられている。一昨日の日刊ゲンダイDIGITALに作家の適菜収氏の連載記事が載せられたが、今回は「先の大戦と酷似 デマと精神論が蔓延するコロナ禍ニッポン」となっている。東京都知事も務めた、まだ若かりし頃の猪瀬直樹氏が著した「昭和16年夏の敗戦」では、米国との太平洋戦争を始める8ヶ月前に、「官民各層から抜擢された有為なる青年」36人が全国から集められ「総力戦研究所」が作られたが、そこで出された「緒戦、奇襲攻撃によって勝利するが、長期戦には耐えられず、ソ連参戦によって敗戦を迎える」との結論が無視されて、開戦に向かったことが描かれており、適氏は、その「総力戦研究所」と現在の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を重ね、この会議もまた首相に無視されていることを上げている。しかし、この点は、かっての「総力戦研究所」とは大きく異なっている。専門家会議や現在の分科会の「専門家」は、論理的な結論を導くことではなく、自分たちの利権や野心に執着する「専門家」であり、全く異なっている。厚生省医務技監や国立感染症研究所などは一体となってコロナを抑え込むことよりも、主導権とデータを掌握することに執着しており、そのために保健所・衛生研究所系列以外へPCR検査を拡大することを阻んでいる。早々と指定感染症にしてしまったのもそのためである。世界の主要国では、各地の大学を含め、医学研究所も全て動員して検査に当たっているが、日本だけはいまだに異様である。この新型コロナウイルスについてはまだまだ謎が多い。果たしてPCR検査で本当にウイルス感染の実態が掴めるのか、巨大製薬企業の進める治療薬やワクチンがどこまで信頼出来るのかなど。一昨日のフランスメディアFranceSoirには「INTERVIEW EXCLUSIVE : Simone Gold, médecin urgentiste censurée par Facebook, licenciée(独占インタビュー:Facebookによって検閲された救急医であるSimone Goldが解雇)」と題する記事が載せられた。女性救急医であるサイモン・ゴールド医師は、医療現場でたくさんの新型コロナウイルス感染者を治療し、安価なジェネリックも出ている65年間使用されて来た抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキンで多くの患者が回復した、一方で、米国巨大製薬企業が開発し、特許が維持されて高価に設定されているレムデシビルはそれよりずっと効果がないことを見て来た。しかし、その後米国ではヒドロキシクロロキンの処方は禁じられた。(2005年に米国立衛生研究所NIHはクロロキンに関する研究を行い、それが実験室でSARSウイルスの抑制と排除に効果的であることを見出している。)同医師はネットを介して多くの賛同医とつながりを持ち、先日、ワシントンDCで、ヒドロキシクロロキンの処方が出来るよう訴えたが、その動画は、8時間で1800万回視聴された後、Facebook、YouTube、Twitter、Instagram、LinkedInの動画、全てが削除された。現在、米国メディアのニュース広告の70%もが製薬企業で占められている。とても安価でインドネシアでは薬局で市販されているようなヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルスを治療する安全で効果的な方法であることが判明した場合(複数の研究および米国以外の他の多くの国での経験がそうである可能性を示しているように)、誰もがそれに対するワクチンを受ける理由はなくなってしまう。日本でも、投与開始日だけが異なる2群で効果を比べると言う異常な治験で、安価なアビガンが葬られ、同じくレムデシビルだけが承認されている。ウイルス自体が分離・同定されており、新型コロナウイル感染による病態も報告されている。微小血栓がもたらす呼吸困難による急変など。ウイルスが同定され、そのウイルスが特徴のある病気をもたらすのであれば、やはり感染症・病気の大原則に従い、早期発見・早期治療しなければならない。日本の研究レベルの低下は以前にも書いたが、このコロナ禍についての研究も同じである。日本からはこの新型コロナウイルス感染についての研究が世界的な科学論文発表の場に出されていない。データが国立感染症研究所にほとんどが握られているためでもある。米国の世界的にもよく知られた医師会の運営するJAMAインターン医学オンラインで8月6日に公表された韓国の研究者らの「Clinical Course and Molecular Viral Shedding Among Asymptomatic and Symptomatic Patients With SARS-CoV-2 Infection in a Community Treatment Center in the Republic of Korea」なる論文でも、この新型コロナウイルス感染者には多くの個人が長期間無症状のままであり、しかもウイルス量は症状のある感染者と同じであった。論文の著者らは「したがって、感染者の隔離は症状に関係なく行う必要があります。」と書いている。同様の論文はこれまでも中国や欧州でも出されている。日本は一貫してそれを無視している。無症状の保菌者が感染を密かに拡大させているのだ。そこを断ち切る政策を打たない限り、感染拡大は抑えられない。いつまでも「ファクターX」の幸運に支えられるとは限らないのだ。このウイルスは変異が早い。
合歓の木

ナポレオンの警告を無視した米国

2020-08-08 19:11:02 | 社会
昨夜からの雨が続き、気温は23度までしか上がらず、暑さを避けることが出来た。釜石ではここのところ連日のように熊の目撃情報が報じられている。先頃などは、民家の窓ガラスを割って中にまで入って来たそうだ。山にはこの時期はまだ木の実がなく、人里で食べ物が得られることを覚えたためだろうと猟銃会関係者から聞いた。市街地には熊以上に鹿が堂々とやって来る。雑草が茂る河川敷に居座る鹿までいる。夕方のウォーキング時には何度かカルガモ親子の行列が川を渡るのも見かけた。今日はさすがにセミの声が聴こえないが、昨日はエゾゼミやヒグラシの声を聴き、夜には虫の声も聴いた。 3蜜を避け、自粛をしても日本の新型コロナウイルス感染は絶えることはない。政治家の経済優先と専門家の野心が感染症と言う病の大原則を無視しているからだ。有症者を通じて感染者が見つかれば、関係した人は症状の有無にかかわらず、全て徹底して検査をしなければ、感染拡大は抑えられない。国立感染症研究所は、7月16日までに、国内で感染が確認された人計約3700人分の検体を収集し、ウイルスの変異を調べた。その結果を今月5日に公表している。その結果、3月頃の「欧州系統」のウイルスと、遺伝子的に変異した6月中旬頃からのウイルスが東京から地方へ拡散したことが明かになり、その地方への拡散がまさに無症状の感染者により密かに拡散された可能性があると指摘している。いずれにしろ無症状の感染者を放置する限りは、全ての検査自体が中途半端となり、無駄になる。世界中でワクチン開発が行われ、英米は巨大製薬会社とすでに契約まで取り交わし、WHOから問題視されている。富裕国がワクチンを独り占めしているとの非難だ。今日の東京新聞は、「ワクチン開発、急ぐべきでない 免疫学の第一人者が警鐘」と題して、大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授の「国内で慎重に臨床試験をしないと効果は確かめられず、期間を短縮すると重大な副作用を見逃す恐れもある」との警鐘を伝えている。特に、抗体依存性免疫増強(ADE)と呼ばれる、ワクチンにより作られた抗体がかえって、「ウイルスと結びつくと、全身の免疫細胞の1種が感染して」病気を悪化させる。いずれにしろコロナ禍の長期戦は避けられず、今後数年は共存することになるだろう。経済を少しでも動かすためにも、徹底した検査が必要で、インフルエンザのように、どこの医療機関でも検査や治療が可能な体制を早急に作り上げるべきである。コロナ禍が経済を圧迫している上に、米国はリーマン・ショック後に米国を含めた世界の経済を牽引して来た中国に、まさに「冷戦」を仕掛けている。関税を通した貿易戦争から、5Gのファーウェイ(華為技術)問題やTikTokとWeChat排除などの技術戦争、香港自治法による金融(資本)戦争までに至っている。米国は、中国政府に米国の情報を盗まれない「クリーンネットワーク」を掲げている。表向きの技術戦争の理由である。しかし、秘密の「バックドア」があるコンピュータ・ハードウェアとして、ファーウェイを疑っても、「中国製」のiPhoneにはスルーするだけである。しかも、あくまでも疑いだけであり、証拠は一切提示しない。カナダで逮捕されたファーウェイの孟晩舟(モン・ワンジョウ)最高財務責任者(CFO)の米国への身柄引き渡しも、米国の対イラン経済制裁に違反して金融機関を不正操作した容疑によるが、米国が身柄引渡しを迫るのは、ファーウェイの「バックドア」を含めた技術情報を得たいがためである。米国は11月の大統領選挙戦のためにも、ますます対中国強硬姿勢に出るだろう。感染拡大を防ぎ得ない以上は、支持率を挽回するにはそれしかない。しかし、これは世界貿易をさらに悪化させ、最高値に迫る株式市場の暴落につながりかねない。Bank of Americaによれば、昨年8月時点で、ウォールストリート(米国の民間部門の金融資産)はメインストリート(GDP)のサイズの5.5倍であった。1950年から2000年までの標準は2.5〜3.5倍である。それが現在では6.2倍にもなってしまった。まさに"Wall Street is now "too big to fail"."である。大き過ぎて潰せなくなっている。これまで発表された8兆ドルの金融刺激策、12兆ドルの財政刺激策、合わせて20兆ドルは、まさに世界のGDPの20%強にあたる。今月4日中東レバノンの首都ベイルート起きた巨大爆発は広島原爆の12分の1の破壊力に相当すると言う平時では前代未聞の爆発である。米国のウォールストリートでもいずれ遠からず標準回帰の巨大爆発が起きるだろう。戦後、自由貿易の旗手として、常に他国にそれを迫って来た米国が、自ら保護貿易に転じている。対中国強硬策は必ず自分の身にも跳ね返りが及んで来る。しかも米国はすでにナポレオンが言った「眠れる獅子」を起こしてしまっている。
民間の側にもやって来る鹿