FNNプライムオンラインによれば、東京都は現在は、集中治療室ICUに入院しただけでは重傷者に数えていないと言う。4月には重傷者で数えていたが、いつの間にか外したようだ。重傷者が増えている大阪府では今も重傷者として報告している。こうして自治体ごとに重傷者の「定義」が異なれば、全国的な集計に意味はあるのだろうか。もっとも日本の新型コロナウイルス感染への対策の異様さを思えば、ある意味では何でもありなのだろう。感染症は感染者を検査で見出し、隔離するしか抑えようがない。日本では厚生労働省関係と文部科学省関係の全てを合わせても既存のPCR検査では1日4万件しか出来ない。1月に最初の感染者が見つかって、もう7ヶ月が過ぎているが、その間、ほとんど国として本格的に新たなPCR検査機器の増設など一切やっていない。昨日のフランスのAFP通信によると、中国では7月末時点で、PCR検査能力が1日あたり484万件に達し、中国全土で累計1億6000万人がPCR検査を受けた。中国のPCR検査試薬の技術水準と性能は米国など先進国と同じ水準にあり、製品によっては最先端ですらあると言う。7月末までに、中国でPCR検査能力を備えた「医療機関」は4946にのぼり、全国の病院・疾病予防管理センター・検疫所などの各機関には2億人分近いキットが発送され、1万2000台あまりの検査設備が配備されている。日本では厚生労働省下の検査能力には限界があるため、検査数を制限せざるを得ず、様々な屁理屈を付けて、検査制限を「専門家」に正当化させている。しかし、このために多くの、特に無症状・軽症の感染者を見過ごす結果となり、結局は感染の広がりがいつまでも続く状態に落ち込んでしまっている。15日の日本経済新聞は「無症状者検査で感染抑制 英、経済再開でも陽性率低下」と題して、英国の研究で、無症状感染者まで検査によって見出すことで、感染が抑制され、経済活動も再開出来ることが明かになっていることを紹介している。7日に科学誌Sienceに発表された「Fast, cheap tests could enable safer reopening(早くて安価なテストにより、より安全な再開が可能になる)」なる論文でも、検査を限定しないで拡大した検査により経済の再開がより安全に行えることが示されている。特に、現在の日本の各地で見られるように、医療機関や老人施設などは集団感染や重傷者が出やすく、積極的に定期的な検査をしなければ、それを防ぐことは不可能である。しかし、日本は厚生労働省主導の行政検査に阻まれ、感染拡大は抑えられないため、経済悪化も避けられない。米国は検査数を膨大に増やしたが、国民の「自由」が感染を拡大させている。日米ともに戦後最大の経済の落ち込みであるにもかかわらず、昨日、米国では株式市場で主要な指標のひとつ、S&P500指数が2月19日の最高値を更新し、3389.78で終え史上最高値を更新した。実体経済と金融経済の極端な乖離が起きている。3月上旬に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への懸念からパニック売りが相次ぎ、株価が暴落すると、中央銀行FRBは3月23日、ほぼ無制限の量的緩和策を打ち出し、以後、株価は上昇に転じて来ていた。今回のS&P500社を見ると、ハイテク株が極端に上昇しているだけで、500社中の半数以上はむしろ下がっているのだ。中央銀行FRBは、しかし、3兆ドル規模の支援策とリスク性資産のてこ入れに動いて社債買い入れにまで手を広げている。このため通貨ドルの価値を自ら引き下げる格好になっている。昨日のロイターはJPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長佐々木融氏の「コラム:ドル安トレンド長期化を促す環境変化」と題する記事を載せたが、そこで今後ドル安が長期化する理由を述べている。米国は長らく双子の赤字と言われる物と投資の国際取り引き収支である経常収支と財政の二つの赤字を抱えて来た。こうした国の通貨は通常では安くなる。しかし、米国の通貨ドルは基軸通貨であったことと、金利を他国より高く上げていることが可能だったために、他国からのドル買いを維持して来られた。ドルが他国に買われる限り、ドルを一定程度高く保つことが出来る。基軸通貨と金利と言う二つの要因でドル安になることを避けて来られたのである。しかし、それが今や困難になって来た。金利差が極めて縮小して来たからだ。「JPモルガンがカバーしている31の中央銀行(新興国含む)の政策金利の加重平均値は既に1.09%まで低下している。この加重平均値は来年早々にも1%を割り込むことが予想されている。世界金融危機(リーマン・ショック)後のボトムが1.81%だったことを考えると、世界は未曾有の低金利状態に入っている。」、「未曾有の低金利状態は、世界各国の金利差もなくなっていることを意味する。主要10カ国・地域(G10)の政策金利の最大値と最小値の差はこれまで250bp(ベーシスポイント)を下回ることはなかったが、現在は100bpまで縮小してしまっている。10年国債金利の最大値と最小値の差もこれまで概ね300bp程度がボトムとなりそれ以上縮小しなかったが、足元は130bp程度まで縮小してしまっている。」、「財政の崖を埋めるために財政支出の拡大は継続せざるを得ないようにも見える。」「こうした政策を続ければ、紙幣の価値が下がると予想する人は多くなる。」。政府債務がもはや返済不可能な領域に踏み込んでしまった日本と米国は、むしろ意図的にコロナ禍を長期化させているようにも見える。2〜3年をかけて徐々に通貨価値を下げて、インフレを招き、試験中のデジタル通貨の完成を機に、一挙に形式上の債務返済を行う。
米国中央銀行FRBは3月23日にルビコン川を渡った。もう引き返すことは出来ない。(ドル金価格推移)