釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

債務と人口

2019-11-30 19:16:54 | 社会
今朝も庭の7つの水槽で氷が張っていた。やはり放射冷却で、日中は良く晴れた。しかし、最高気温は6度くらいで、日射しを受けながらのウォーキングも、初めはやはり寒かった。周囲の山々もすっかり葉が落ちて、冬の姿に変わって来た。隣の遠野では昨日は雪が少し降ったようだ。冬の日射しになってしまっている午後3時少し前に汽笛が長く響いて来た。今年最後の「SL銀河」が花巻からやって来たようだ。明日は、折り返して、花巻へ向かう。今年最後のためか、いつになく、何度も長く汽笛を鳴らしていた。 現在の世界には主要国が共通に抱える問題が二つある。債務と人口である。公的・私的を問わず、主要国はかってない債務を抱えている。出生率が低下・低迷し、人口減少と高齢化が目前にある。2008年のリーマン・ショックは、本来であれば世界恐慌に発展する規模のものであった。しかし、「大きくて潰せない」として、救済したことが、その後債務の増大に繋がった。人口増加が止まり、高齢化が進んだことも、経済成長を低下させ、社会保障費を増大させたために債務の増加を助長した。欧州では、英国、フランス、ドイツは基本的に移民を受け入れることで人口問題を解決しようとしている。米国は民主党が同じ考えだ。しかし、大統領は移民を制限しようとしている。日本は、例の如く、官僚の「曖昧さ」で、「研修生」と言う醜悪な「低賃金」を導入している。戦後、主要国の経済成長は、ほぼ人口増と重なって来た。日本が経済、成長力共に一瞬、世界一となったのは、まさに人口がピークを迎えた頃だ。中国の急速な経済成長も同じく人口増と同期していた。しかし、その中国も、今や人口減となる時期が目に入り始めた。人口は経済にとって、働き手と消費者の両方を提供する。働き手が減少し、高齢者が増加すれば、経済が低下する中で、高齢者の分だけ、さらに負担が重くなり、経済は一層効率が低下せざるを得ない。これを政府がしゃにむに支えようとして、政府債務をまた増大させる。世界で債務が増加したため、金利は低下させるしかない。しかし、この債務のための金利低下は、債務者には好ましいが、預金者や年金基金にはマイナスとなる。つまり、低金利とは、債務者への預金者や年金基金からの所得の移転である。リーマン・ショックにより、金融機関で一瞬にして、現金が枯渇した。中央銀行は二つの方法で、これを解消しようとした。一つは、金融機関や年金基金が保有する国債などの債権を高値で買い取ること、高値で買い取れば、当然、その債券の利回り(金利)は下がるため、二つ目として、中央銀行から市中金融機関への貸し出し金利も下げた。資本主義の本来の自己責任では、経営悪化した企業は、潰れる。それが大きくとも小さくとも関係なく。経営判断に誤りがあったからこそ経営が悪化したのである。巨大金融機関が倒産することは、確かに、一時的には経済が悪化するが、その後の経済効率はむしろ良くなる。世の中の膿は早く除いた方が、早く治る。しかし、政府や中央銀行は、救済の道を選んだ。「責任」は誰も追求されていない。この「救済」が、その後、世界中に超低金利と異常な量的緩和(債券買い取りによる金融機関への現金供給)を生み出して来た。中央銀行は直接政府から国債を買い取ることは、建前上出来ないが、金融機関を通してであれば、法的には許される。しかし、実態は直接買い取った場合と同じである。米国中央銀行前議長のアラン・グリーンスパンは、いずれ中央銀行は買い取った債券を再び金融機関に売るからとして、政府国債の直接買い取りではない、と述べていた。だが、10年経った現在も、いまだにこれは実行されておらず、中央銀行は、買い取った債券を保有したままである。米国は多少売ろうとしたが、結局は、先の10月から再び買い取る方向に舵を転じた。日本の中央銀行である日本銀行などは、買い取った国債を売ることなど決して出来ない。仮に売れば、高値で買い取っているため、日本銀行は確実に損失を出し、それだけでなく、国債の利回り(金利)は上昇せざるを得ず、金利上昇の引き金を引くことになり、債務者を直撃する。真っ先に困るのは政府である。ともかく、遅まきではあれ、人口問題に真剣に取り組まなければ、先進国の債務は増大して行くばかりだ。そして、金利が永遠にマイナスやゼロであることなどないのだ。経済成長がなく、債務だけが増え続ける国の通貨は、いずれ信認を失う。通貨=国債でもある。

日本のバブル期を後追いする中国

2019-11-29 19:10:00 | 経済
今朝は-3度で、庭の水槽はみんな氷が張っていた。空が晴れ渡っていたので、強い放射冷却となったようだ。日中もよく晴れていたので、昼休みに近くの八幡神社へ行き、紅葉の大樹がさらに色濃くなっているのを確認し、カメラを向けた。しかし、撮っているうちに手がかじかんで来た。まだ手袋はいらないだろうと思っていた。大樹前の山道は、幾度かの大雨で陥没したところがあり、途中で通行止めになっているようだ。途中まで行くのか、一人だけ、おそらくウォーキングからの帰りらしき人が通った。ここはいつも、この素晴らしい紅葉の景色を占有出来る。これだけ素晴らしい紅葉が、都会にあれば沢山のカメラマンで周りが埋め尽くされるだろう。 2008年のリーマン・ショックで、米国発の金融危機が世界に波及し、手を打たなければ間違いなく世界恐慌になるところであった。この時、この金融危機の影響をあまり受けなかった中国が、自国貿易を維持するためにも、国内の大規模な不動産開発を促進する策に出た。金融機関に不動産開発への大規模な融資を奨励し、中国主要都市に巨大プロジェクトが展開された。建築資材需要の拡大が国内経済を活発にし、海外への投資まで増大し、世界貿易も復活した。しかし、この過剰な数年に及ぶ不動産開発は、ちょうど日本の80年代のバブルと同じになり、中国当局も2年前から、3年計画で日本のようなバブル崩壊となることを避けるために、早めに対策を打とうとして来た。しかし、地方の中小金融機関では、資金繰りに窮するところも出て来て、先月末には預金者による取り付け騒ぎも発生している。すでに5つの中小金融機関が整理、国有化された。中国には巨大金融危機に至りかねない二つの問題がある。非金融企業の抱える債務と金融機関の脆弱性である。今月24日、中国の政府系メディア、環球時報の英語版 Global Timesが「China needs to prepare for zero interest rates(中国はゼロ金利に備える必要がある)」と題する驚くべき記事を出した。国際金融協会IIFのデータによるとしつつも、中国の全債務は、1999年にはGDPの130%、リーマン危機直後の2009年には200%に過ぎなかったものが、2019年前半には306%(現在は320%)にもなっている。NIFD国家金融与発展実验室NIFDのデータでは、中国の企業セクター債務は名目GDPの155.7%であり、政府部門の38.5%や家計部門の55.3%よりも遥かに大きく、民間企業の30%が金融問題を抱えていると述べている。「実経済は鈍化している」中で、「実経済の中で積み上がる債務と金融問題は中国をゼロ金利に追い込んでいる。」としながらも、一方で、「ゼロ金利マイナス金利環境においては、世界債務は増加するままだ、そして国債金利は引き続き下落する。低金利政策のもとで起きる減少の一つがリスク資産の価格上昇だ。米国株価は新高値を繰り返している。」として、どの国のメディアも語らない事実を述べている。中国経済は過去10年で世界の新規債務の60%を生み出した。今週月曜日の25日、中国の中央銀行である人民銀行は、2019年中国財政安定化報告書を報告した。報告では、4379行のうち13%が「ハイリスク」とみなされている。すでに5行が整理されたが、同様の問題を抱える金融機関が他にも500行もある。正確には586の金融機関がハイリスクであり、ほとんどが地方の小型銀行だ。人民銀行は、今年前半に、中規模・大規模30行の資金力を見るストレステストを行っている。GDP成長率が5.3%に下落する基本シナリオでは、30行のうち9行が倒産となり、GDP成長率が4.15%の最悪シナリオでは、30行のうち17行もが倒産となる。中国の金融システム全体の資産はおおよそ40兆ドルであり、中国は20兆ドルの巨大な問題を抱えていることにもなる。また、中国銀行セクターの資産の3/4を占める1171行のストレステストでは、基本シナリオで90行が倒産、最悪シナリオでは159行が倒産となっている。GDPの320%にもなる総債務と、金融システムの20兆ドルのリスクが存在し、中国政府、人民銀行は極めて今後の政策の幅が限定される。債務のためには金利を下げなければならないが、金利を下げれば、金融機関の利鞘を減らし、さらに金融機関を窮地に追いやりかねない。中国にもやはり巨大な時限爆弾がある。(なお、日本の債務は対GDP比で、政府240%、金融企業80%、非金融企業150%で、合計470%-IIF、BISによる家計債務60%、単純合計では530%)
八幡神社前

燃える紅葉

借金が経済を主導する米国

2019-11-28 19:12:49 | 経済
昨夜の米国では、商務省が発表した、第3・四半期の実質国内総生産GDP改定値が年率換算で前期比2.1%増と、速報値の1.9%増から上方改定され、前期から伸びが加速したこと、また、10月の個人消費支出が前月比0.3%増となり、第4・四半期も緩やかな経済成長が続くことが期待されたため、株式市場は続伸し、主要株価指数が連日で史上最高値を更新した。極限近くまでバブルが膨らみ続けている。米国GDPの7割は消費で支えられているが、その消費のほぼ半分は、収入による世帯の上位10%の支出が占めている。そして、確かに全体的な消費は微増しているが、中央銀行FRBのデータでは、上位10%の支出は、2018年の同時期から今年第2四半期に1%減少しており、2007年から2009年にかけての大不況以来初めてのことである。米国メディアCNBCによると、「最近のデータは、米国の富裕層が財布を閉め始めていることを示唆している。」「金持ちの貯蓄も爆発し、過去2年間で2倍以上になり、富裕層が現金を貯めていることを示唆している」。米国の平均的な国民は「持っていないお金を使って」消費して来た。クレジットカード債務は史上最高になっている。戦後、世界最大の経済大国となった米国は、基軸通貨国として、「自由貿易」を推進して来た。物の貿易だけでなく、為替を自由化し、資金の対外投資をも自由化して来た。経済学は、自由貿易は自ずと良いバランス状態に至るとしているが、1960年に、元イェール大学の経済学教授ロバート・トリフィンRobert Triffinが、「トリフィンのジレンマ」として知られる論を唱えた。特定の国の通貨を基軸通貨とする国際通貨制度の下では、基軸通貨の供給と信用の維持を同時に達成することはできず、基軸通貨国は貿易赤字になるほかない、と言うものだ。実際、現在の米国は貿易と投資を合わせた経常収支で36兆ドルもの赤字を抱えている。米国大統領は、赤字の原因を貿易黒字国である中国の為替操作によると非難している。対米貿易で自国が有利になるために、自国通貨を安くする。統制経済である中国は、確かに対外的な通貨価値を操作しやすい。しかし、中国と同じく対米貿易で黒字である日本やドイツもやはり超低金利により通貨を下げている。さらには、日独ともに米国へ巨額の投資を行っており、これも自国通貨売り・ドル買いとなり、やはり自国通貨を安くさせている。為替操作が米国の経常収支の赤字をもたらしているのではなく、まさに、ドルが基軸通貨であるがために赤字となっているのだ。米国は戦後、基軸通貨の地位を維持することで、対外的にも国内的にも、言ってみれば、借金で消費を行って来たのだ。戦後、米国は意図的にドルの価値を何度か切り下げることで、対外債務を減らそうと試みた。しかし、トリフィン教授の指摘通り基軸通貨である限りは、決して対外借金は減らず、むしろ増加するだけである。大統領は戦後の自由貿易が米国製造業を破壊したとして、表面的には保護貿易に転換した。しかし、本音では、中国市場のさらなる開放と、自国高度産業技術の保護を狙っている。関税を設ける保護貿易が米国の実体経済を悪化させていることは大統領も承知で、来年11月の大統領選挙までには、貿易戦争の矛先を何らかの形で収めるだろう。このことも、米国株式市場は読み込んでおり、短期的には楽観論で浮かれ、バブルを膨張させている。今や世界が低金利で維持されているが、低金利が永遠に続くことはない。金利が上昇すれば、世界の多くが破壊されるだろう。
紅葉模様

月面着陸はなかった

2019-11-27 19:12:56 | 科学
人は基本的には自由に行動出来るが、時間と言う制約があるため、結局は行動範囲が限られる。それを補ってくれるのが、様々なものから得られる知識だろう。若い頃は比較的身近なものに興味が惹かれ、知識もそれに関連して自分の目で見えるものに関する知識が多かったように思う。しかし、歳とともに、日本や世界の背後で起きていること、人の生存の基本的なことに興味を持つようになった。夜空を見上げて星や月を見つめながら宇宙の果てがどうなっているのだろうと思うこともある。自然の豊かな岩手は、のんびりとした自分の時間を過ごさせてくれる。 50年前の7月、米国のアポロ11号が月面着陸したことが全世界に報じられた。月面の岩石まで持ち帰られた。しかし、その後、この月面着陸については様々な疑問も出されて来た。月を目指したアポロ計画は、1970年代に終わり、その後は、計画が見られない。今月19日、ロシアの「Земля地球」と言うサイトに、2010年から行われた火星に向けての実験MARS 500を主導したロシア科学アカデミー生物医学問題研究所長のアレクサンダー・ウラジミロヴィッチ・スヴォーロフАлександр Владимирович Суворов医学博士のインタビュー記事が掲載された。これまで、宇宙空間での人体への最大の脅威は宇宙放射線だと考えられて来たが、スヴォーロフ博士は、宇宙放射線ではなく、「地球の磁場から外に出る」ことだと言う。博士たちの実験で、低磁場条件下では内臓の温度が上昇し、予備実験においてさえ、すでに実験の被験者たちの精神的な混乱を認める。なぜ、内臓の温度が上昇するのかは、いまだ解明されておらず、博士は体内の「水」の特性が変化し、予測出来ないプロセスが発生する可能性があると見ている。博士は、「地球の磁場から人間が遠く離れると、脳に強い影響が加わる。それなのに、アメリカのアポロ計画では、完全な地球の外側の宇宙空間で、6日間から 12日間の時間を過ごし、そして、月への飛行を 9回行い、うち 6回で月面に着陸したという。これは、私たちの実験で見られている傾向からは考えられないことです。」とインタビューで答えている。「地球の磁気から遠く離れた宇宙空間では、人体に過剰な予期せぬプロセスが経験されるはずです。ここから言えるのは、「月にアメリカ人たちは行っていない」ということです。」と続けている。トムスク州立大学の生物学および生物物理学研究所とロシア科学アカデミーの生物医学問題研究所の研究者たちは、特別な装置により、ラットを地球の磁場から隔離する一連の実験を行った。実験の結果、ラットたちは社会的行動能力を失い、記憶障害を経験し、内臓の変化も観察したことを示した。科学者たちは電磁システムが地球の磁場を補償する特別な装置を作り、その内部の磁場が通常よりも 700 - 1000 倍弱くなるようにし、12匹の白い雄ラットをこの「超低磁場の装置」に25日間入れ、その後さらに10日間、別の12匹のラットを対照グループにした。この実験で最初に目を引いたのは、ラットたちが、この磁場が弱い装置の中で「常に戦っていた」ということだ。攻撃し続け、怒りを示し続けた。通常であれば、ラットたちの戦いは、序列を確立する手段で、グループ内の序列が確立されると、すぐに戦いは停止する。地球の磁場を奪われたラットたちは、序列の確立方法を「忘れ」、社会的スキルを失っていた。またラットには記憶障害も見られた。日本でも、すでに磁場の欠如がイモリの発達にどのように影響するか研究が行われていて、その結果は、子孫の目と顔が誤って形成され、「双頭の個体」が現れたと言う。地球の表面には、その上の全ての生命を保護する強力な磁場があり、太陽から発せられる荷電粒子の強力な流れから守ってくれている。その地球の磁場は50マイクロテスラで、他の太陽系惑星、たとえば火星や水星の磁場よりも数千倍強いと言う。既存の有人宇宙船や国際宇宙ステーションは比較的低い高度で飛行しているため、地球上より磁場は低いが、その欠如率は20%未満だそうだ。月への飛行や火星への飛行などの惑星間探査では、宇宙飛行士たちは、完全な磁場の欠如に直面する。惑星間探査では、地球の磁場は存在せず、惑星間の磁場だけが存在するが、博士によれば、惑星間磁場は地球よりも何千倍も何万倍も弱い。「なぜアメリカ人たちは、アポロ計画の際、人を月に飛行させる前に、宇宙空間の因子が生物に及ぼす影響を直接研究するために、サルなどの実験動物で試さなかったのかおわかりでしょうか。通常、宇宙飛行士の安全を考えれば、それは必ず行うべきことです。彼らがそれを行わなかった理由は簡単です。元々、月飛行に行くつもりがなかったのです。何しろ、当時のアメリカのサターンロケットの推力は、350トン以下と推定されており、非常に低いものです。」


Banana Republicバナナ共和国

2019-11-26 19:10:13 | 社会
今朝は久しぶりの雲一つ見えない青空となったが、放射冷却で朝の気温は1度であった。車のウィンドウガラスには霜が張り付いていた。日中は風もなく、日射しの中に立つと、とても気持ちが良かった。どこの紅葉の名所も、今年は雨風で葉が早々と落ちて、良い紅葉が見られなかったが、ここ釜石でも同様だ。市街地周辺でいつも見られる綺麗な紅葉が今年は見られない。それでも岩手県では最後になる八幡神社の紅葉の大樹はこれからが見頃を迎える。 米国では昨夜も三つの主要株式指数が史上最高値を更新した。メディアでは貿易戦争への楽観視によると解説されている。企業収益は落ち込んで来ており、株価の実態との解離がさらに拡大した。断崖絶壁を目指してなお突き進んでいるようだ。リーマン・ショック後の2013年に、当時のオバマ大統領は、オバマケア(新医療保険制度)をめぐる与野党対立から、17年ぶりの政府機関の一部閉鎖となった際に、「This is the United States of America — we’re not some banana republic(ここはアメリカ合衆国。バナナ・リパブリックではないはずだ)」と、遊説先で訴えた。「banana republic」バナナ共和国とは。20世紀初めに米国の農業資本がバナナのプランテーション栽培を中米のホンジュラスで展開し、バナナ栽培が広がった中米各国は米企業や米政府の大きな介入を受け、国内には貧困と腐敗、犯罪が蔓延したことから、貧困と腐敗、犯罪が広がる第三国への蔑称として使われるようになった言葉だ。ドイツのベルリンに本部を置く、政府・政治家・公務員などの公的分野の腐敗や汚職に取り組む国際組織であるトランスペアレンシー・インターナショナルTransparency Internationalは毎年、腐敗度を10~11機関が調査した12~13種類の調査報告に基づいて腐敗認識指数Corruption Perceptions Index(CPI)を公表している。昨年度、日本は18位で、先進国とは言えない状況であるが、米国はさらに低い22位である。ドイツは11位だ。米国には政治に関与し、大きな影響を与える組織が二つある。軍産複合体とウォール街である。前者は戦争、後者は経済である。後者の筆頭格である巨大投資銀行ゴールドマン・サックスは、2006年にブッシュ・ジュニア政権の財務長官にゴールドマンの会長であったヘンリー・ポールソンを送り込んだ。2008年のリーマン・ショックでは、そのポールソンがゴールドマンと巨額取引を行っていたAIGを救済し、財務省が行った不良資産救済プログラムTARPの責任者にニール・カシュカリをゴールドマンから出した。カシュカリは、現在、中央銀行FRBの傘下であるミネアポリス連邦準備銀行総裁である。彼はFRBの「非伝統的」金融緩和に大きく貢献している。ゴールドマンからは他にも国家経済会議議長やニューヨーク連邦準備銀行総裁を務めたスティーブ・フリードマン、同じくニューヨーク連邦準備銀行で要職を務めたウィリアム・ダドリー、行政管理予算局局長・大統領首席補佐官を務めたジョシュワ・ボルテンなども送り込んでいる。米国中央銀行は100%民間であり、要職は巨大投資銀行が抑えている。リーマン・ショック後、巨大投資銀行を救済する方法が「非伝統的」金融緩和であった。直接の救済だけでなく、その後の資産価格の上昇・拡大で、巨大な利益を上げて来た。その一方で、「非伝統的」金融緩和は、米国に史上稀にしか見られない格差を生み出した。10%の富裕層が富の70%を保有し、株式および投資信託の全所有権の93%以上を直接所有している。一方で、底辺90%が債務の72.4%を負っている。これだけ富の格差が拡大したのは歴史上、フランス革命前と1929年の世界大恐慌前の2度しかない。米国では4300万人もが毎日の食事に窮し、政府支給のフードスタンプに頼っており、数百万人が下水道設備のない、不潔な環境での生活を強いられている。ホームレスは各都市で増え続け、その正確な数すら把握されていない。「The United States Is Now A Banana Republic(アメリカ合衆国は今やバナナ共和国だ)」。フランス革命ではトップ10%がギロチンにかけられた。世界大恐慌では、第二次大戦が勃発した。米国で次には何が生まれるか。
八幡神社前の大樹


経済協力開発機構OECDの警告

2019-11-25 19:18:23 | 社会
21日の米国経済紙ブルームバーグBloombergに「The World May Have a Bigger Problem Than a Potential Recession(世界には潜在的な景気後退よりも大きい問題があるかも知れない)」と題する記事を載せた。この日、経済協力開発機構OECDが、「世界経済見通しで、各国政府が政策や投資方法を改革しない限り、世界経済は改善されないと警告した」ことを伝えている。OECDの報告では、「「最大の懸念は…景気循環ショックよりも対処されていない構造変化を反映して、見通しの悪化が衰えずに続くことだ」、 「これらの変化を金融および財政政策で対処できる一時的な要因とみなすのは政策的な誤りとなるだろう。それらは構造的だ。」と述べられている。また、不透明な現在の貿易戦争については、「世界秩序の大きなシフトの一環」であると捉えられている。主要先進国は、軒並み経済成長率やインフレ率が低下しており、2008年以後、世界経済を牽引して来た中国も、経済減速が目に見えて来た。2008年後、先進国は財政政策と金融政策を極端なまでに発動して来たが、その効果は限定的であるばかりでなく、資産バブルと言う副作用が大きくなっている。不動産開発で国内経済を活性化することで、世界経済を牽引して来た中国では、今、不動産開発にブレーキがかかり、開発企業とそれへの融資金融機関に債務問題が大きく頭をもたげて来ている。まるで、1990年代初頭の日本と同じ状況になって来ている。日本の経済産業省によると、中国のGDPに占める個人消費は40%であり、米国の70%、日本の60%とは隔たりがある。投資が個人消費よりも大きく、2008年以後の中国の経済拡大は、まさにこの不動産開発と言う投資でもたらされた。今、その投資が減速している。EUを牽引して来たドイツも、先週の中央銀行の金融安定性報告書によると、利回りの乏しい銀行は「比較的リスクの高いビジネス」および不動産セクターへの融資を拡大し、その不動産も中央銀行の評価では、多くの都市の住宅価格を15%から30%過大評価している。このため、報告書では、「ドイツでは金融の安定性に対するリスクが高まり続けている」と警告している。ドイツの中央銀行総裁は、「低金利は金融安定性リスクをもたらす」と以前、述べていた。ドイツは輸出主導型経済であり、世界貿易の鈍化により、過去5四半期でほとんど成長が止まっており、状況がさらに悪化すると、「企業および家計の債務の持続可能性の悪化」を引き起こし、ひいては連鎖的なローンのデフォルトおよび信用評価損につながる可能性がある。ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行は、すでに多額の損失を出しており、株式価値は90%以上を失い、多くの犯罪捜査をも受けている。また、2番目に大きなコメルツ銀行は、2008年の金融危機で救済を受け、一部は国有化されているが、やはり株式価値は98%以上急落している。OECDは、「当局の対応が目先の財政・金融政策にとどまる限り、世界経済は今後数十年にわたって停滞する」と見ている。日本は1990年代から長期停滞が続いており、2014年からマイナス金利を導入した欧州連合EUが日本に続いて低迷状態に入り、現在、米国、中国がまさに後を追って「日本化」に入り込もうとしている。「日本化」とは、高齢化と人口減少、産業構造の問題により、財政政策も金融政策も効力を発揮出来ず、経済の低迷から脱することが出来ない状態を言う。中国は数年前から内需主導型経済へのシフトに取り組んではいるが、経済規模が大きいために、逆に、その進みが遅い。瀕死のドイツの巨大銀行も、次の金融危機にはとても耐えられない。EUを牽引して来たドイツが、この状態のため、次に金融危機が到来すれば、EUの存続すら危うくなる。「Everything Bubble」状態の米国もまた、次の金融危機では、基軸通貨ドルの地位が急落するだろう。今後、一層、人口減少・高齢化が加速する日本は、次の金融危機で、さらに凋落が進むのは間違いないだろう。年金や医療・福祉も大きく削減せざるを得なくなる。実質的な財政破綻を迎えることになる。
八幡神社前の大樹

資本主義のリセット?

2019-11-22 19:23:27 | 社会
人類は洞窟に住み、狩猟生活を何万年も続けた。平地での農耕による穀物生産は、1万1300万年前のヨルダン渓谷が最古であり、中東地域の広大な肥沃台地において1万2000年前に始まったとされて来た。しかし、2015年に、イスラエル・ガリラヤにある「オハロII (Ohalo II)」と呼ばれる地域で2万3000年前の地層から、14種類の農業で使われた植物種と、13種の農業が始まった事でこれから雑草へと変異していくその最初の段階に当たる種を発見したことから、小規模な農業はもっと早く始まっていたとする論文が発表された。狩猟時代は基本的に、小集団が短期間に消費することであった。余剰はわずかであった。しかし、農耕が開始されると、その集団が消費する以上のものを産み出し、余剰が生まれた。この余剰が様々の職種の存在を可能とした。現代の資本主義も、原則は変わらない。余剰生産こそが資本主義の原則である。そして、資本主義の原則である余剰生産が維持される限り、金利はプラスでなければならない。しかし、2014年に欧州中央銀行ECBは世界史上初めてマイナス金利を導入し、日本銀行が2016年に、続いてマイナス金利を導入した。このマイス金利は資本主義の基本原則を否定するものだ。オランダでは実際に、市中銀行がマイナス金利を導入しており、ドイツでもやはり60%の市中銀行が何らかの形でマイナス金利の導入を検討している。英国の著名な経済紙the Financial Timesは、先月、“Capitalism: Time for a Reset(資本主義:リセットの時)”なる表題の記事を載せている。市中金融機関のマイナス金利導入とは、預金者が金利を取られ、借金する人が金利をもらえることであり、資本主義の定義が逆転する。そして、日本を先頭に、先進国の高齢化と新しい技術、企業寡占、史上最大の債務がインフレを低下させ、デフレを定着させることも、やはり資本主義のリセットをもたらす。先進国では2%未満のインフレ率がすでに定着してしまっているが、今では新興国のBRICS +インドネシアでさえ、平均インフレ率は3.5%ほどであり、2008年のリーマン・ショック直後の7%から見れば、大きく低下している。低金利、低インフ率が現在の「世界の経済的安定」維持の柱になってしまった。このため、高金利や高インフレ率にはもはや耐えられない脆弱な経済体質となってしまっている。中央銀行が自ら資本主義を否定してしまった。何故そうなったか。金融危機で潰れるべき巨大金融機関を救済したためである。確かに巨大金融機関を潰すことは、一時的には経済に大きな打撃を与えるが、回復すれば、まさに健全な経済が蘇り、中央銀行や政府財政は無理な負担から解放されるのだ。米国憲法では、今も正貨は金貨と銀貨である。1929年に始まった世界大恐慌で、米国大統領セオドア・ルーズベルトは、国民から金(ゴールド)を没収し、金本位制を放棄した。それも憲法を変えることなくだ。これが先鞭となって、1971年にニクソン大統領も同じようなことを行った。いずれの大統領も政府が必要とする通貨を大量に印刷したかった。以来、現在まで、中央銀行は思う通りに通貨を発行し、そのために金融危機を繰り返している。中央銀行は、金融危機で膨大な不良債権を抱えた巨大金融機関を救済するために、自ら資本主義を機能不全に陥らせてしまった。
八幡神社前の大樹

明治維新は幕府財政破綻による

2019-11-21 19:15:40 | 社会
徳川家康が1603年に江戸幕府を樹立してから1868年にその幕府が消滅するまで間、幕府は財政的に決して豊かではなかった。幕府の領地は全国の4割でしかなく、この時代は、言ってみれば米本位制で、米が武士の俸給であった。4割の土地から得られる米を売って幕府は財政を行った。江戸時代を通して3度の大きな財政改革を行ったが、結局はうまく行かず、財政の窮状により江戸幕府は破綻した。江戸時代の通貨は金貨や銀貨が使われたが、その金銀の含有量を減らすことで、一時的には幕府の財政を凌げたが、含有量を減らして、金貨、銀貨の流通量を増やしたことで、物価が上がり、インフレを起こし、庶民や武士は苦しい生活を強いられることになった。生産規模の拡大が最も重要であったが、それが叶わず、通貨量の増大で財政を凌ごうとしたことが、幕府の破綻の原因である。時代が明治となっても、政府財政は豊かではなかった。明治政府が成立した後の1870年に欧州で当時の大国フランスと新興国プロイセン(後のドイツ)との戦い、普仏戦争が勃発した。そして、新興国プロイセンが大国フランスを敗り、多額の賠償金を得た。この賠償金によりプロイセンは通貨を統一し、産業を発展させ、1880年代にはフランスを追い越し、1900年代には英国にも迫る勢いとなった。こうしたプロイセンの経過を見た明治政府は、衰えていたとは言え、当時の日本には超大国であった隣国清に目を付け、清に戦いを挑んだ。1894年の朝鮮半島をめぐって起こされた日清戦争である。大国としてまだ余力のあるはずの清は、戦意をなくして、和解の道を選んだ。日本は清からプロイセンと同じく戦費の2倍近い多額の賠償金と台湾、遼東半島などを領土として拡大し、朝鮮半島への支配を強めた。金や銀が通貨発行の元であったため、金銀の保有量が限られていた新興国プロイセンや大日本帝国は、大国に戦勝することで、財を得、産業振興・軍備拡張の元本とした。準金本位制下の第2次大戦後の敗戦国日本は、戦後復興から高度経済成長まで、ともかく国外に物を売って、稼ぐしかなかった。稼ぎが大きくなると、政府の税収も増え、財政規模も大きくなって行く。産業の発展に見合った財政と通貨量が、最も経済を安定させる。しかし、戦前からの統制経済色が残された日本は、戦後も官僚による統制が残り、日本銀行が創り出したバブルが崩壊すると、さらに日本銀行が前面に出始め、アベノミックスでは市場にまで直接日本銀行がしゃしゃり出るまでになり、大量の通貨発行を行った。低迷する実体経済を遥かに超える通貨を発行した。本来であれば、強烈なインフレになるはずであるが、そうはならなかった。大量発行した通貨が世の中に流れなかったからだ。日本銀行の大量発行した通貨は二つのダムに溜まり、世の中へは流れ出なかった。406兆円の日本銀行の当座預金、463兆円の企業内部留保と言う「ダム」に溜まった。しかもそれだけではなく、1018兆円の海外資産と言う形で、通貨は形を替えて、日本から出て行った。GDP550兆円規模の国で、単純に2000兆円近い通貨が、幸いにも世の中に流れないでいる。何かの切っ掛けで、「ダム」が決壊したり、海外資産が国内回帰すれば、間違いなくインフレは避けられない。過去の歴史で、実体経済を遥かに超えて通貨を発行したり、債務を抱えた国で、破綻を避けられた国はない。後者の例では、第2次大戦中の巨額の債務を抱えたままの戦後の英国に見られる。1976年の英国通貨ポンド危機で、英国はIMFの資金提供を受けざるを得なかった。実質的な破綻である。世界は当時「英国病」と称したが、現在は、「日本病」と言われる。
紅葉し始めた八幡神社前の大樹

広がる農薬の汚染

2019-11-19 19:18:04 | 科学
島根県の宍道湖付近の稲作農家が1993年5月からイミダクロプリドという農薬を使いはじめた。この同じ年から、宍道湖に豊富に棲息していた甲殻類や動物プランクトンなど節足動物が減り始めた。さらに、翌年の終わりには、それらを餌とするニホンウナギやワカサギも激減した。以後もイミダクロプリドなどのネオニコチノイド系農薬の使用は年々増え続けた。ネオニコチノイドは1990年代から農薬として大規模に使われ始めた。節足動物に対する毒性は強いが、哺乳類など、より大型の動物への毒性は弱いとして、従来の農薬よりも安全なものとして広く使われるようになった。ネオニコチノイド系農薬は昆虫の神経系を麻痺させ、死に至らせる。すでにこの農薬が蜜蜂や蝶にとって有害であることが分かっている。欧州連合EUでは、最も広く使われていたネオニコチノイド系農薬であるイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3種類を屋外で使用することが禁止されている。ネオニコチノイド系農薬は、植物に吸収されて、葉やその他の組織の中に蓄えられるだけでなく、土壌へも浸透し、降雨によりさらに湖や小川へ流出する。湖では流れこんだ農薬が蓄積されて行く。これまでは、陸棲昆虫へのこの農薬の被害が研究されて来ていた。11月1日付けの科学誌「サイエンス」に、産業技術総合研究所と東京大学に所属する山室真澄氏らが、初めて水棲動物へもこの農薬が影響していることを明かにした論文が掲載された。宍道湖では、1980年代初頭から、漁場の調査が継続的に行われていた。研究者たちは、水質、節足動物と動物プランクトンの数、魚の漁獲量などを幅広く記録していた。1993年にこの農薬が使われ始めて、魚の餌になる微小な甲殻類などの動物プランクトンの量は、平均で83%も減少していた。特に、オオユスリカの幼虫は、2016年には絶滅していた。ネオニコチノイド系農薬を作っていたモンサントは、2018年にドイツの化学工業及び製薬会社であるバイエルに買収されている。今年8月には、米国ネバダ大学リノ校の魚類生物学者ゼブ・ホーガン氏らが、1970年以降のおよそ40年間で、体重30Kg以上の「淡水の巨人たち」の個体数が、世界中で94%も減少していることを発表している。そして、9月には、カナダのサスカチュワン大学毒物学センターのマーガレット・エング氏らがネオニコチノイド系農薬により、北アメリカ大陸の渡り鳥が激減したことを発表している。米国とカナダで生産される作物のほとんどは、ネオニコチノイド系農薬で処理された種を使用しており、鳥たちは移動中に休憩する先々で、その種を口にする。2014年には、渡り鳥だけでなく、農業地帯に棲息する鳥の個体数が、ネオニコチノイド系農薬が水中に高い濃度で含まれている地域で減少していることが、オランダのラドバウド大学とオランダ野外鳥類学バードライフセンターの研究者らによって発表されている。米国の内務省魚類野生生物局の水産生物学者であったレイチェル・カーソンは、1962年に著書『沈黙の春(Silent Spring)』で、農薬が鳥たちの歌声を消してしまったことを、すでに警告している。人間にとっても極めて重要な自然環境を、「利益」のために破壊し、自らの首を占めている。本来は、これを国の規制当局が防がなければならないが、「利益」は政官財の癒着を促し、日米などはいまだに規制されずに使われ続けている。種子法まで変えて、日本では農家から種を奪ってしまった。
百日紅

金融緩和こそがバブルの生みの親

2019-11-19 19:17:26 | 経済
昨夜も米国の主要株価3指数、S&P総合500種.SPX、ダウ工業株30種DJI、ナスダック総合IXICが史上最高値を更新して取引を終えている。株式は本来、企業収益に見合って上下する。しかし、株式が投機的になると企業収益を超えて過剰に上昇し、いわゆるバブルとなる。これを数値で表したのが、ノーベル経済学賞を受賞したイェール大学ロバート・シラーRobert James Shiller教授の考案したShiller PE Ratio S&P 500である。この係数では25を超えるとバブル状態となる。1929年の世界大恐慌直前には32.56であった。また、2008年のリーマン・ショック前には27.42でピークを付けていた。現在のそれは35を超えている。にもかかわらず、主要メディアは決してバブル状態とは言わない。1991年の日本のバブル崩壊も2008年のリーマン・ショックもその直前の数年間はいずれも金融緩和が行われていた。その金融緩和がバブルを生み出したが、それらの金融崩壊後もさらに異常なまでの金融緩和で対処して来た。崩壊した金融紙ステムを回復させるために金融システムに低金利付きマネーを流し込む。それも異常な低金利と大量の中央銀行による債券買い取りと交換のマネーの金融システムへの流し込みによってである。日本はバブル崩壊後の金融システムの不良債権処理は10年ほどかけて終えたにもかかわらず、その後も金融緩和を続け、2013年からは、「異次元」の金融緩和にまで突入した。これにより、金融システムを救済するどころか、金融システムを逆に脆弱化させている。金融機関は軒並み赤字化してしまった。では、何故そこまでしてマイナスの付く「異次元」の金融緩和を続けているのか。マイナスの金利が付くのはあくまでも政府の発行した国債だけである。つまり、このアベノミックスで始まった「異次元」の金融緩和の目的は政府救済が主であり、とりあえず経済が維持されていると見せかけるために、日本銀行が株価を支えているだけである。今では日本銀行は486兆円もの国債を保有し、市中金融機関が日本銀行に持つ当座預金には406兆円が積み上がっている。政府を支えるために日本銀行が市中金融機関から、無理やり額面以上の高価格で買い取ったが、それで市中金融機関がお金を受け取っても、実体経済が低迷しているため市中金融機関には利用先がなく、受け取ったお金の多くをただ日本銀行の当座預金に預けるしかない。「異次元」の金融緩和は実体経済や市中金融機関の改善には全く繋がっておらず、むしろ国民の預金を目減りさせ、金融機関の収益を悪化させているだけである。しかし、逆に言えば、ここまでしなければならないほどに政府債務が追い込まれているのが日本である。日本銀行は政府を救済するために行った、この「異次元」の金融緩和のために極めて高いリスクを負ってしまった。長期金利が上がれば、資本金の多くない日本銀行にとって、瞬間に債務超過となり、ソブリンリスク(国に対する信用リスク)になる。そして、今、その長期金利が上昇し始めている。世界のどこかで金融危機が発生すれば、日本にも波及する。その時、市中金融機関は現金の必要性に迫られ、保有する国債を売って現金化せざるを得なくなる。金融危機はまさに日本国債の危機にもなる。売られた国債を日本銀行が全て買っても、そこまでする日本銀行への信用は破綻することになもなる。つまりは日本銀行が発行する「円」が信用を失う。米国も中国もやはり債務爆弾を抱えており、中央銀行や政府は、バブル崩壊を避けようと懸命である。しかし、そのこと自体がさらにバブルを膨らませる。そしてその崩壊をさらに巨大にするだけである。
落ち葉