釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

近づく実りの秋

2015-09-06 19:13:20 | 自然
お盆の初めからずっと不順な天候が続く。日射しの出たのはわずかに数日ばかりだ。それでもこの時期になると岩手では産直に果物が並ぶようになった。桃や梨、林檎、葡萄、栗などが安く売られている。岩手の豊かな自然はこうした果実も与えてくれる。昨日も轢かれたタヌキを見かけた。一昨日の朝には職場付近の甲子川沿いの細い道路に3頭の鹿も見かけた。川では鮎釣りの人たちの姿もある。自然が豊かに残された岩手は他の東北と同様に時代劇のいいロケ地ともなっている。昨年公開された『蜩ノ記(ひぐらしのき)』はオールロケで、その7割が遠野で撮影されている。また岩手ではないが同じ東北の山形県鶴岡市では藤沢周平原作の映画『蝉しぐれ(せみしぐれ)』が撮影されている。いずれもDVDで見たが、やはりこうした自然の豊かな地域が存分に映し出されている。それがまた時代の中に生きる人の精神を浮き彫りにしているようにも感じられる。こうした時代劇のロケ地として東北が使われることも、やはり東北の風景がその時代と変わらないものを今も残しているからだろう。そして、都会では見失われたものをこうした自然が人の前に映し出してくれるように思えてくる。
稲穂の上を飛ぶ赤トンボ

過酷な労働を強いられる外国人たち

2015-09-04 19:12:14 | 社会
経済産業省中小企業庁の『2015年版中小企業白書・小規模企業白書』によれば従業員が300人以下と定義される中小企業と従業員が20人以下とされる小規模事業者は日本では合計すると全企業の99.7%を占めており、20人以下の小規模事業者だけでも86.5%を占めている。つまりいわゆる大企業はわずか0.3%で、数では1万1000社であり、従業員数は1397万人となっている。中小企業・小規模企業を合わせた数は385万3000社で従業員数は3217万人となる。総務省統計局の2015年7月の労働力調査では就業者数は6381万人となっている。従って、大企業で働く人は全体の22%である。この大企業の中でも円安・株高の恩恵を受けているのは巨大企業だけである。仮に人数が大企業の半分とすれば、アベノミクスで潤っているのは勤労者の1割でしかないと言うことだ。恐らく実際にはそれより少ないと思われるが。そのために全体の実質賃金は下がり続けているのだ(7月だけはわずかに0.3%増となったが)。実体経済は低調で、日本のピラミッド型の企業構造から、しわ寄せはすべて中小企業や小規模企業に行き、そこに働く人たちの賃金は低下する。このこと自体も大きな問題だが、安倍政権は今外国人技能実習制度(TTIP)の拡大を図ろうとしている。これまで3年とされた期間を5年に延長し、業種も拡大する。オリンピックの誘致のために震災後の復興も人手や資材不足に悩まされている。特に就労環境の良くない単純労働では人が集まらない。これを補充するために外国人労働者を利用しようとしている。しかし、この制度は元来、国連や米国政府から批判されて来た。現在も米国大使館のHPには『2014年人身売買報告書』が掲載されており、そこでは「日本政府は、実務と政策のいずれを通じても、政府が運営するTTIPにおける強制労働の利用を終わらせることはなかった。この制度は当初、外国人労働者の基本的な産業上の技能・技術を育成することを目的としていたが、むしろ臨時労働者事業となった。技能実習生の大半は中国人およびベトナム人であり、中には職を得るために最高でおよそ7300ドル相当額を支払い、実習を切り上げようとした場合には、何千ドルにも相当する金銭の没収を義務付ける契約の下で雇用されている者もいる。この制度の下での過剰な手数料、保証金、および「罰則」契約が引き続き報告されている。脱走や外部との連絡を防ぐために、技能実習生のパスポートや他の身分証明書を取り上げ、技能実習生の行動を制限する企業もあった。「実習」期間中、移住労働者は、TTIPの本来の目的である技能の教授または育成ではない仕事に従事させられ、中には不十分な賃金しか支払われない、または賃金が全く支払われない状況に置かれる、契約書を隠される、狭苦しく断熱性の低い住居の賃料として法外な金額を要求されることで借金を抱え続ける労働者もいる。」として批判している。「スバル」の名で知られる富士重工は先にトヨタや日産と並んで史上最高の利益を上げた。しかし、そのスバルの生産は他の企業同様に下請け企業に支えられており、その下請けは厳しい条件下で安い労働力に頼り、多くの外国人労働者が雇われており、その実態は定められた最低賃金以下で過酷な労働を強いられている。大手のメディアは広告料の関係で富士重工に睨まれないようにこうした実態を報じないが、7月28日ロイター通信は『「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者』と題する特別レポートを出している。本来外国人技能実習制度は「開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、日本の技術・技能・知識の修得を支援する制度」となっているが、実態は劣悪な程賃金労働の担い手となっている。厚生労働省もその実態を知りながら、放置して来た。しかし、円安が進み労働条件が日本人以下であるため、主要な「研修生」を送り込んでいた中国からもやって来る「研修生」の数は減り続けており、さらには今年3月に法務省は、受け入れ先から失踪した実習生が4800人となり、2014年までの10年間では約2万5000人になると発表した。残業代の未払いなど労働関連法違反は後を絶たず、労働条件の厳しさが失踪増加の背景にあると産経新聞ですら書いている。格差の階層の底辺に外国人を置いているのが今の日本だ。
秋明菊(しゅうめいぎく)

米国は米国の利益のために日本を利用する

2015-09-03 19:15:05 | 社会
先月12日、沖縄県うるま市沖で米軍ヘリが米艦船上への墜落事故を起こした。しかし、この事故に対しては一切の情報が明らかにされていない。日本の領海内での事故であるにもかかわらずである。24日には相模原市中央区の米陸軍相模総合補給廠で爆発事故が起きたが、日本側には調査権、捜査権がなく、やはりなぜ爆発が起きたのか不明のままだ。以前、ここには米軍基地からの廃棄物が集められ、環境問題となった。周囲には住宅がある地域だ。2004年8月の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では、すぐに構内封鎖が行われ、やはり沖縄県警の現場検証が拒否されている。在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄では米軍の兵士による犯罪も多発しており、2013年1月16日付琉球新報によると、「1996年以降に発生した殺人、強盗、放火、強姦(ごうかん)の凶悪犯罪の米兵被疑者118人のうち、逮捕せず身柄不拘束で事件処理されたのが約半数の58人で、強姦では米兵35人のうち30人と85・7%までもが不拘束だった。」とされる。「日本を守る」とされる日米同盟により、日本には現在31都道府県に『在日米軍施設・区域(専用施設)』が存在し、米軍が関連した事件や事故には日本側の捜査権も調査権もない。1952年4月サンフランシスコ講和条約の発効とともに米軍の表向きの占領政策は終わった形になったが、米ソ冷戦が明らかになって来たため、同じ年の2月には1951年9月成立の旧日米安保条約にもとづく日米行政協定が結ばれ、それを継承する形で1960年の新安保条約締結時に「日米地位協定」が結ばれた。従って、この「協定」の基本はサンフランシスコ講和条約の発効以前にすでに作成されており、まさしく「占領下」に適応される内容をそのまま現在まで引きずっている。このことが世界でも異常なことは他の米軍施設のある国々と比較すれば一目瞭然だ。日本では米軍機が日本の航空法を適用されないで、自由に飛べるが、同じ敗戦国のドイツでは米軍機の飛行は国内航空法が適用されている。またやはり敗戦国のイタリアでは米軍はイタリア軍の許可のもとでなければ行動出来ない。お隣の韓国でも何かあれば共同調査権を持っている。ニュージランドは米艦船が寄港する際、核兵器を搭載するかどうか不明の時に入港を拒否している。イラク戦争後のイラクでさえ、米軍機の中東諸国への出撃は拒否している。世界に展開する米軍が駐留する国々の中でも日本だけが米軍に対しては国内法が適応されない。このあまりにも不平等な「協定」を歴代政府は変えようとはせず、唯一この不平等を改めようとした鳩山由紀夫内閣は潰されてしまった。日本人は日米安保条約によって、米国が日本を守ってくれため、こうした不平等もやむを得ないと考えてしまう。しかし、これほど不平等な「協定」を卑屈に受け入れている政府は他の国には見られない。独立国家では考えられないことだ。戦後日本は対米従属一辺倒でやって来て、米国の一部と言っていいほどの従属の仕方であるが、その米国の一部すらでもない。問題のあるオスプレイは米国国内では訓練飛行すら出来ないにもかかわらず日本では自由に飛行出来る。安倍首相が何故日本国内より先に米国で安保関連法案の成立時期を発表したか、それは未だに日本は実質的に米国の占領下にあるからだ。世界でも稀に見る屈辱的な「地位協定」を甘受する日本は安倍首相がいくら軍備を拡張して「強い日本」を作ろうとしても、他国からすれば、主権国家とは見えていない。日本だけでは戦争を含めて重要な外交方針は決められないのだ。経済やその他の日本の制度についても1994年からは直接的に「年次改革要望書」が米国から示され、それに従って民営化などが促進された。しかし、これもやはり鳩山由紀夫内閣は拒否した。そのため米国は以後「日米経済調和対話」として要望を出すようになっている。従わなければ、その内閣は潰されてしまう。対米従属を拒否し、日本の真の独立を目指そうとするものが米国の意を汲んだ人たちから潰された様は元外務省官僚の孫崎享氏の『戦後史の正体』に詳しい。
薊(あざみの)花

政府寄りシンクタンクさえ経済破綻を言い始めた

2015-09-02 19:12:50 | 経済
今朝まで降っていた雨も上がって、今日はほんとうに久しぶりに晴れてくれた。晴れてみると、やはり日射しはまだ夏の日射しで、気温は最高32度になった。それでも風がよく吹き、やはり晴れると気持ちもいい。日が暮れるのも早くなっているので、晴れた日は曇天よりも夕暮れが少しでも明るくなるのもいい。 2009年に僅差でGDP(国内総生産)を中国に追い越された日本は、それでもわずかながら2012年まではGDPを伸ばし続けていたが、2012年末に第2次安倍内閣が発足して、いわゆる「三本の矢」のアベノミクスが開始されて以後、GDPは年を追って下がり続けている。第2次安倍内閣が稼働する前の2012年のGDPは中国が83867億ドルに対して、日本は59545億ドルであったが、2014年には中国103804億ドル、日本46163億ドルとなり、中国の半分にも満たなくなってしまった。2015年の推計値では中国112119億ドル、日本42104億ドルとさらに日本は低下し、中国とは差を広げている。中国に頼る世界経済が、その中国の経済減速で輸出が伸びず、国内の消費も伸びないためにGDPは低下せざるを得ない。日本の経済全体が低下し続けているにもかかわらず、来年度予算は各省とも膨らむ一方で、ほんとうに国は財政赤字を懸念しているのか疑わざるを得ない。防衛省などは過去最大の予算となっている。アベノミクスは一部輸出巨大斜陽企業と富裕層のために円安と株高を現出させただけで、そのための途方もない日本銀行の金融緩和と言う負の資産を生み出した。多くを占める中小企業や勤労者の所得は低下を続け、GDPの6割を占める消費にむしろブレーキをかけている。現在の安倍政権の経済政策は日本国内のための政策ではなく米国のための政策であるため、当然の結果ではあるが、そのための日本の受ける傷はとても深い。厚生労働省は今日、6月末時点で生活保護世帯が過去最多を更新したと発表した。162万5941世帯、受給者数では216万3128人にもなる。先月20日には、1963年に設立された日本経済新聞系列の老舗のシンクタンクである日本経済研究センターは中期経済予測(2015-2030年度)として、「2020年代後半、経済破綻の可能性―東京五輪後に人口減の悪影響を実感」と題する論考を発表している。最初に「人口減少・高齢化の進展、投資効率・生産性の低迷により、日本の将来は極めて厳しい。アベノミクス第一の矢である金融緩和、第二の矢の財政出動、消費税の再引き上げ先送りで、一服感のある日本経済だが、東京五輪が開催される2020年度以降、成長力(潜在成長率)は低下し、20年代後半にはマイナスに陥る。第三の矢として期待される成長力の押し上げ策(成長戦略)なしでは、財政破綻の危機に直面するか、生活水準の低下を甘受するか、苦渋の選択を突きつけられる恐れも強い。」として書き出している。米国発の自由貿易および市場主義経済を全地球上に拡大させるグローバリズムと一体化した新自由主義の経済は国内的には規制緩和の名で要するに既存斜陽巨大企業の保護政策であり、延命策に過ぎない。その延命策のために勤労者の賃金が削られ、成長の根幹である消費が縮小している。国内消費が拡大しない限り国全体の経済成長はあり得ない。そして経済成長がなければ国の税収も増えず、財政再建などなし得るべくもない。勤労者から搾り取った利益と円安の差益を社内に溜め込んで、企業買収に使うだけで、国内的に見れば、企業は自らの首を絞めている。日本経済研究センターの予測はまだ甘く、さらに早く経済破綻がやって来るだろう。
黄花コスモス

少子化にもかかわらず顧みられない子供たち

2015-09-01 19:18:47 | 社会
現在の日本は国の行く末を左右する多くの重要な問題を抱えている。平和や民主主義と言った政治的な問題、新しい産業構造の創出や格差、赤字財政と言った経済的な問題、少子高齢化と言う人口構造の激変などどれをとっても早急に手をつけなければならない問題が山積みされている。中でも将来国を支えて行く子供の問題はすぐにも手を付けなければならない。しかし、現政権は他の問題同様にむしろ問題を深刻にさせるばかりである。メディアも子供のいじめやそこから生まれた子供の自殺や殺人には飛びつくが、現在の日本で一層深刻な母子家庭の貧しさはほとんど報道しない。昨年6月19日、 文部科学省は、2011年年以降に自殺した国公私立の小中高校、特別支援学校の児童生徒約500人について実態調査をした結果を公表した。いじめが原因の子供の自殺は2%だが、経済的困難を悲観した自殺は5%になる。しかもその他の学校関係が原因とされるものや、家庭環境が原因とされる自殺の背景にも実際は家庭の経済的困窮が存在しているケースが多い。一般に貧困にはアジアの一部や、アフリカで見られるような最低限の衣食住も満たせず、生きていくこと自体が厳しい「絶対的貧困」と、日本を含む先進国などで見られる、その社会の平均的な人々が享受している習慣や行為ができない「相対的貧困」がある。所得の多い人から順番に並べて、人数的に真ん中に位置する値を中央値と言い、経済協力開発機構(OECD)は1人あたり所得の中央値の半分に満たない場合を「相対的貧困」としている。1人あたり所得は税金や社会保険料を除いた世帯の手取り収入を用いる。1985年には日本は相対的貧困率が12.0%で17才未満の子供の貧困率は10.9%、消費者物価を加味した実質貧困線は108万円であった。以後相対的貧困率も子供の貧困率も年々上昇して行き、2000年にはそれぞれ、15.3%、14.5%となり、2012年には相対的貧困率16.1%に対して子供の貧困率16.3%と初めて子供の貧困率が相対的貧困率を上回った。実質貧困線も1997年の130万円をピークに以後毎年下がり続けて、2012年には111万円となった。この時の名目貧困線は122万円であるから、手取りが月ほぼ10万円の生活になる。「平成25年国民生活基礎調査の概況」では2012年時点で6人に1人が相対的貧困となる。17才未満の子供のいる世帯の貧困率は15.1%で、一人親世帯では54.6%と一気に上昇し、その9割までが母子家庭、シングルマザーである。貧困が貧困の連鎖を生み出す。バブル崩壊後、日本では賃金が上昇することなく、非正規雇用が拡大し、家庭は不安定な収入におかれるところが増加し、それも一因となり離婚も増えた。しかし、母子家庭を支える制度は十分に機能せず、現政権になってからは生活保護すら受給を受けるのに厳しくなった。貧困は母親も子供も悲惨な事件に遭遇させる。2013年には群馬県で3才の子供が餓死し、大阪市でも28才の母親と3才の子供の遺体が一部ミイラ化して見つかり、昨年も乳幼児3人が犠牲となり、千葉県の銚子市では追い込まれた母親が13才の親子仲の良かった娘を絞殺してしまった。核化した社会ではシングルマザーは孤立し、行政も財政難もあって対応はむしろ冷たい。多くのそうしたシングルマザーは精神を病んで行く。少子化が進む日本で国の貴重な子供たちがそうした悲惨な状況に置かれて、国も真剣に対応しようとしない。何よりも貧困に置かれた子供たちを救済しなければならない。安倍首相は「国を守る」と言い、軍備を増強し、戦争の出来る国にしようとしている。昨日防衛省は来年度の予算の概算要求が過去最大の5兆911億円となると発表している。しかし、その守る国とは一体何を指すのか。その国の貧困に置かれた子供たちを放置して、首相が守ろうとするものは何だろう。
薬師公園入り口の額紫陽花