釜石の日々

過酷な労働を強いられる外国人たち

経済産業省中小企業庁の『2015年版中小企業白書・小規模企業白書』によれば従業員が300人以下と定義される中小企業と従業員が20人以下とされる小規模事業者は日本では合計すると全企業の99.7%を占めており、20人以下の小規模事業者だけでも86.5%を占めている。つまりいわゆる大企業はわずか0.3%で、数では1万1000社であり、従業員数は1397万人となっている。中小企業・小規模企業を合わせた数は385万3000社で従業員数は3217万人となる。総務省統計局の2015年7月の労働力調査では就業者数は6381万人となっている。従って、大企業で働く人は全体の22%である。この大企業の中でも円安・株高の恩恵を受けているのは巨大企業だけである。仮に人数が大企業の半分とすれば、アベノミクスで潤っているのは勤労者の1割でしかないと言うことだ。恐らく実際にはそれより少ないと思われるが。そのために全体の実質賃金は下がり続けているのだ(7月だけはわずかに0.3%増となったが)。実体経済は低調で、日本のピラミッド型の企業構造から、しわ寄せはすべて中小企業や小規模企業に行き、そこに働く人たちの賃金は低下する。このこと自体も大きな問題だが、安倍政権は今外国人技能実習制度(TTIP)の拡大を図ろうとしている。これまで3年とされた期間を5年に延長し、業種も拡大する。オリンピックの誘致のために震災後の復興も人手や資材不足に悩まされている。特に就労環境の良くない単純労働では人が集まらない。これを補充するために外国人労働者を利用しようとしている。しかし、この制度は元来、国連や米国政府から批判されて来た。現在も米国大使館のHPには『2014年人身売買報告書』が掲載されており、そこでは「日本政府は、実務と政策のいずれを通じても、政府が運営するTTIPにおける強制労働の利用を終わらせることはなかった。この制度は当初、外国人労働者の基本的な産業上の技能・技術を育成することを目的としていたが、むしろ臨時労働者事業となった。技能実習生の大半は中国人およびベトナム人であり、中には職を得るために最高でおよそ7300ドル相当額を支払い、実習を切り上げようとした場合には、何千ドルにも相当する金銭の没収を義務付ける契約の下で雇用されている者もいる。この制度の下での過剰な手数料、保証金、および「罰則」契約が引き続き報告されている。脱走や外部との連絡を防ぐために、技能実習生のパスポートや他の身分証明書を取り上げ、技能実習生の行動を制限する企業もあった。「実習」期間中、移住労働者は、TTIPの本来の目的である技能の教授または育成ではない仕事に従事させられ、中には不十分な賃金しか支払われない、または賃金が全く支払われない状況に置かれる、契約書を隠される、狭苦しく断熱性の低い住居の賃料として法外な金額を要求されることで借金を抱え続ける労働者もいる。」として批判している。「スバル」の名で知られる富士重工は先にトヨタや日産と並んで史上最高の利益を上げた。しかし、そのスバルの生産は他の企業同様に下請け企業に支えられており、その下請けは厳しい条件下で安い労働力に頼り、多くの外国人労働者が雇われており、その実態は定められた最低賃金以下で過酷な労働を強いられている。大手のメディアは広告料の関係で富士重工に睨まれないようにこうした実態を報じないが、7月28日ロイター通信は『「スバル」快走の陰で軽視される外国人労働者』と題する特別レポートを出している。本来外国人技能実習制度は「開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、日本の技術・技能・知識の修得を支援する制度」となっているが、実態は劣悪な程賃金労働の担い手となっている。厚生労働省もその実態を知りながら、放置して来た。しかし、円安が進み労働条件が日本人以下であるため、主要な「研修生」を送り込んでいた中国からもやって来る「研修生」の数は減り続けており、さらには今年3月に法務省は、受け入れ先から失踪した実習生が4800人となり、2014年までの10年間では約2万5000人になると発表した。残業代の未払いなど労働関連法違反は後を絶たず、労働条件の厳しさが失踪増加の背景にあると産経新聞ですら書いている。格差の階層の底辺に外国人を置いているのが今の日本だ。
秋明菊(しゅうめいぎく)
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