お盆期間を含め、昨日まで曇天や雨が続いたが、久し振りに今日は朝から晴れた。最高気温は33度まで上がったが、涼しい風が吹き、木陰だと暑さを忘れさせてくれる。さすがにお盆を過ぎると、風に秋を感じる。と言っても、セミは泣き続けており、セミの声に混じってウグイスも鳴いていた。 1週間前に鹿児島県の川内原発1号機が再稼働された。世論調査では再稼働反対が賛成を上回っている。原子力規制委員会は再稼働にあたっての審査で、「川内原発の運用期間中に巨大噴火が起こる可能性は十分に小さい」「モニタリングを行うことで巨大噴火を予知でき、さらに予知してから噴火までに核燃料を搬出する十分な時間がある」として、火山噴火をほぼ無視して再稼働を認めた。しかし、気象庁の火山噴火予知連絡会会長である藤井敏嗣東京大学名誉教授は、大多数の火山の研究者の意見は、「可能性が大きいとか小さいとかいう判断自体ができない」というものだ、として、原子力規制委員会の判断に科学的根拠がないとされる。2011年の霧島新燃岳の噴火や昨年8月の口之永良部島の噴火などは前兆がなく、予知すら出来なかったことを上げている。九州電力は原子力規制委員会に対して「巨大噴火の平均発生間隔は約9万年。姶良(あいら)カルデラで起きた最後の巨大噴火が約3万年前だから、しばらくは起こる可能性が小さい」として、委員会もそれを鵜呑みにして認めたが、藤井名誉教授によれば、阿蘇カルデラで起きた最新の巨大噴火は約9万年前だが、その前の巨大噴火との間隔は2万年しかなく、いくつかのカルデラ火山をまとめて噴火の間隔を割り出すという考え方自体に合理性がないとされる。しかも九州電力が提出した審査資料から7300年前に起きた鬼界カルデラの巨大噴火を外している。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「カルデラ噴火はだいたい数万年に一度程度の割合で発生すると言われている。カルデラ噴火の場合には噴火の数十年前ぐらいからマグマの大量の蓄積が起こる」のでモニタリングをすることで、巨大噴火を予知できるとしているが、藤井名誉教授は、現在の科学技術のレベルでは南九州のカルデラ火山の地下でどのくらいのマグマが溜まっているかの推定すら出来ず、モニタリングで巨大噴火を予知する手法は確立されていないと、批判されている。鹿児島湾に沿って、ほぼ湾の東西幅で南北に鹿児島地溝帯が走っており、そこには北から加久藤,小林,安楽,姶良,阿多,鬼界の6つの巨大カルデラが並ぶ。その日本でも最もカルデラの集中する地域に近接して川内原発が造られている。15日に噴火警戒レベル4(避難準備)に引き上げられた鹿児島県の桜島は、今も山体膨張が続いており、姶良(あいら)カルデラに属する火山だ。桜島は2万6000年前に姶良カルデラ南縁で海底火山として活動が始まった比較的新しい火山で、何度も噴火して来たが、特に764年、1471年、1779年、1914年の噴火は大噴火で、1914年の大正噴火では溶岩流が海峡を埋めて大隅半島と陸続きになった。M7.1の地震も発生している。 鹿児島地溝帯は活発な活動を続ける火山構造性の地溝帯で、その地下にはマグマが存在する。桜島もその一部である。桜島が属する姶良カルデラは現在の桜島の位置で3 万年前に超巨大噴火を起こしている。姶良カルデラは桜島が誕生してからも、1 万9000年前と 1 万 6000年前にもマグマ噴火を起こしている。桜島の噴火はそれに伴って、姶良カルデラ周辺の地盤を変化させて来た。日本火山学会によると、桜島が噴火すると姶良カルデラ周辺の地盤が沈下し、静穏期になると、その地盤は隆起することを繰り返して来たが、噴火ごとの沈下では元の高さより高くなっており、桜島の地下にマグマが溜まるだけでなく、姶良カルデラ全体の地下でもマグマが溜まって来ていることを表していると言う。こうした火山研究者たちの研究成果は川内原発再稼働にあたって、まったく考慮されていない。
薄の穂