釜石の日々

海外は日本の現状を見ている

先月22日、米紙The Wall Street Journalは、「Abenomics Will Long Outlast Its Author(アベノミクスの影響は後の世代にまで)」と題する記事を載せた。副題には「データを踏まえると日本政府の市場支配率はゾッとするほど高い」とある。ここでは日本銀行も政府機関として見ている。日本銀行は半官半民の株式会社なのだが。日本銀行は現在主要株式のほとんどで大株主となっており、国債市場の50%を保有しており、「世界的な「国家資本主義」台頭への懸念は中国に向きがちだが、こうしたデータを踏まえると、日本政府の市場支配率もゾッとするほど高い。」と書いている。そして、「アベノミクスの巻き戻しの影響は、おそらく数世代に及ぶのが現実だろう。」としている。日本のメディアではここまで指摘するメディアはない。政権から睨まれるのを避けるからだ。日本の現状は「極めて」異常な経済状態となっているが、どのメディアもそのことを報じない。報じないばかりか経済は好調だとのトーンが強い。経済の好調は、あくまで民間企業の好調さによるのであり、通常の経済では、国債も株式も民間が購入するものだ。民間が購入して株価が上がり、国債も民間が購入して金利が下がれば、景気がいいと判断される。しかし、今の日本では株も国債も日本銀行が支える異常な状態だ。日本の経済成長の指標である国民総生産GDPに占める製造業の比率は、今ではわずか20%でしかない。その中のさらに輸出産業となると20%を割る。20%に満たない企業のために政府は円安誘導をして来た。円安は国民にとっては高い輸入品を買わされることだ。勤労者の実質賃金が増えない状態が続き、このため消費は一向に増加しないで来た。過去5年間、輸出大企業の内部留保だけが積み上がり、他の国内企業の利益は芳しくない。自立した好調な経済では、賃金上昇と消費の拡大が経済を成長させる。それらが今の日本にはないため、かろうじて経済成長率はプラスを維持する状態だ。日本銀行はいつまでも株や国債を買い続けることは出来ない。金本位制ではない、裏付けのない通貨であるため、いくらでも「円」を印刷することは可能だが、印刷すればするほど、その通貨の価値は必ず下がる。今は、企業を含めた国民は「円」を信頼し切っているが、「円」への信頼は国民だけでなく、国外にも維持されなければならない。しかし、その国外がすでに日本銀行の異常さに触れている。米国も日本に劣らず政府債務が過剰になっているため、日本は現在まで、何食わぬ顔で過ごせて来た。しかし、もうこの先長くはそれは通じなくなる。日本銀行はもう後戻り出来ない道に踏み込んでしまったが、だからと言って、このまま進んでもやはり同じ結果が待つだけである。その結果とは、国債の暴落、通貨「円」への信用の喪失である。金本位制から外れた、いわゆる不換紙幣の陥る落とし穴は、際限のない紙幣の増刷である。米国も日本も、EUも中国も、みんなその落とし穴に落ち込んでしまった。中でも日本が突出している。突出しているだけでなく、中身が悪過ぎる。中央銀行が株にまで手を出しているからだ。政府系金融機関は、リスク資産には手を出さない、仮に手を出してもリスクを考え、少なくするのがこれまでであった。しかし、現政権は日本銀行、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、共済年金、ゆうちょ銀行、かんぽ生命と言った5頭のクジラと呼ばれる機関に内外の株式を大量に保有させている。株式の好調さなど、あくまでも見せかけでしかない。ここまでやらなければ、現在の日本の経済が維持出来ないのだ。海外の投資家はこんな日本をしっかり見抜いている。儲けのチャンスが訪れれば、瞬時に国債の暴落を仕掛けるだろう。国債の実物は日本がほとんどを保有しているが、国債の先物は実物を保有していない海外の投資家も売り浴びせることが可能なのだ。1992年の英国のポンド危機、1997年のアジア通貨危機ではヘッジファンドによる売り浴びせが危機を招いた。英国のイングランド銀行は投資家ジョージ・ソロスに大敗した。巨額の資金力を持つ世界の投資家は、一国を相手に戦えるのだ。相手がたとえ中央銀行であってもだ。現在の日本で、通貨の信用をなくすと、政府は何も手を打てなくなる。一度リセットするしかないのだ。
秋の実り

来週は所用でブログは休むことが多くなるかもしれません

コメント一覧

管理人
なりさんへ
いつもコメントありがとうございます。
拙いブログをお読みいただき恐縮です。
内外の記事は出来るだけ読むようにはしていましたが、所用のためブログを書けませんでした。今月も何かと所用があるため、時には書けない日があるあもしれませんが、よろしくお願いいたします。
ほんとうにいつもありがとうございます。
なり
いつも楽しみに読ませて頂いてます。
27日から、投稿が途切れてしまいましたが、如何されましたでしょうか?
以前にこのような事がなかったので、気になってしまいました。
また投稿されてもらえれば、嬉しい限りです。
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