2012年末に第二次安倍内閣が成立し、打ち出された「アベノミクス」の実態がこれらのグラフで明瞭だろう。労働分配率は急激に低下し、企業の取り分は一層増加した。しかもそれは史上最高である。人件費は日本のバブル崩壊後、ほとんど横ばいのままだ。アベノミクスをマネー面で推進したのが日本銀行である。その日本銀行の公表しているマネタリーベースの推移を見ると、下図のようになっている。マネタリーベースの日本銀行による説明は「マネタリーベースとは、「日本銀行が世の中に直接的に供給するお金」のことです。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値です。 」となっている。要するに日本銀行が世の中に向けて発行した有効な総紙幣量である。
このグラフを見るだけで、いかに異常な紙幣の発行か分かる。しかもこれだけ異常に発行しても、実質的には世の中にその紙幣は出回ってはいないのだ。今月5日に日本銀行調査統計局が発表した2017年12月末時点のマネタリーベースは479兆9976億円である。今月5日に日本銀行が発表した12月31日現在の「営業毎旬報告」を見ると、市中銀行が中央銀行に預ける当座預金が368兆4893億円である。つまり480兆円近くの紙幣を世の中に流して、そのうち76.8%が日本銀行の金庫に収まっているのだ。いくらお金を印刷して市中銀行を通じて世の中に流そうとしても、市中銀行は借り手がいないため、多少でも金利の付く日本銀行に預けざるを得ないのだ。この「営業毎旬報告」では17兆2353億円が上場投資信託、つまり株式に投じられている。超低金利で市中銀行から投資目的で多額の資金を借り受けられる富裕層だけが「異次元の金融緩和」の恩恵を受け、しかもその株式を中央銀行が買い支えている。さらに、「営業毎旬報告」では日本銀行の国債保有高は440兆6729億円となっている。日本銀行が発行した紙幣は国債購入のために91.8%が費やされている。市中銀行や保険会社が政府から買った国債を日本銀行がさらに高い金額で買い取ることで、金利を下げている。これほど多額の国債を中央銀行が買い取り、超低金利を維持し、政府の財政を助けざるを得ない状態に追い込まれているのが日本の現状だ。毎年80兆円の国債の購入であるから、今年中に日本の1年間の所得であるGDPと同じになる。政府財政が崖っぷちに追い込まれ、国民の間では格差が拡大している。このまさに異常な日本の現状をメディアは何も報じない。
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