釜石の日々

避暑地

今日は昨日と違って朝から五月晴れのとても気持ちのいい日となった。昨日と入れ替わっていて欲しかったものだ。それでも昼休みに、朴の木の花を見たいこともあって、再び、八幡神社前の旧道を通って、山へ入っていった。今日は光に透かされた緑の葉と長く垂れ下がる山藤の薄紫がとても鮮やかに見に入る。突然目の前を横切る動物がいて、よく見ると狐だった。狐は釜石へ来て、初めて目にする。北海道ではいつも日常的に見ていたが、岩手では轢かれた狸ばかりで、狐はこれまで目にすることはなかった。冬毛がすでに抜けて、まだら状の毛並みになっていた。道の両側から若葉がせり出し、緑のトンネルを作ってくれている。周りではいくつもの小鳥たちがさえずり、爽やかな風がとても気持ちがいい。山の桐の花はまだ蕾だが、職場の裏山ではもう桐の花も藤の花と同じく咲いて来ている。 東北は冬は北海道ほど寒くなく、まして釜石は沿岸部にあるため、南からの暖流で、内陸より気温も高く、雪も積もることはない。夏は関東以南ほど暑くもなく、1年を通してとても気温が安定していて、そのために植物が豊かだ。明治の新政府は近代国家を急速に樹立するために多くの欧米人を招聘した。日本へやって来たそうした欧米人は東京の夏の暑さを避けるために自分たちの避暑地を日本の中に開発した。1888年、明治21年に最初の欧米人専用の避暑地が軽井沢に造られた。次いで翌年、日本三景の一つである宮城県の松島の高山に造られ、1920年、大正9年に三つ目の避暑地が長野県の野尻湖畔に造られた。現在でも軽井沢以外はそれぞれ外国人専用の避暑施設がある。これらの欧米人の避暑地に魅せられて、日本人の間でも避暑地の開発が行われるようになり、現在までに各地に避暑地が造られていった。東京から比較的近い箱根にも福沢諭吉からこれからの国際観光の重要性を学んだ山口仙之助によって1878年にすでに洋風の富士屋ホテルが建てられ、多くの著名な欧米人が利用している。こうした避暑地では夏にはヒグラシが鳴き、近くの清流からはカジカガエルの鳴く声が聞こえて来る。釜石では夏になると近くの山からはヒグラシの声が聴こえて来て、流れの音が家にまで聴こえて来る甲子川からはカジカガエルの声が聴かれる。こうした蝉やカエルたちの声を聴いているとほんとうに自分がまるで避暑地にいるような錯覚を覚えることがある。昨日甲子川の堤を歩いていると、オオヨシキリの声が聴こえて来た。もう釜石は初夏に入ったのかも知れない。
旧道の緑のトンネル

山藤

朴の木の花

桐の花
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