釜石の日々

「ロシア・イラン・中国が求める新たな世界安全保障秩序」

昨日のビル・トッテン氏訳、「The Russia-Iran-China search for a new global security order(ロシア・イラン・中国が求める新たな世界安全保障秩序)」。今月3日、 The Cradle掲載のペペ・エスコバルPepe Escobarの記事。

西側諸国が存立の正当性に関する危機に直面している一方で、ロシア・イラン・中国は世界の残りの部分を「虐殺者」から保護するために独自の安全保障秩序を考案している

米国は、例外主義者の考え方を待ち受けているものが何か、見当もつかない。中国は2025年初頭に迫る避けられない数々の連鎖や国際金融システムの崩壊の可能性を気にすることなく、断固として文明の大釜をかきまわし始めた。

先週、アンソニー・ブリンケン米国務長官と彼の妄想のような米国の要求リストは、北京で王毅外相と習近平国家主席にほんの迷惑な虫程度にしか歓迎されなかった。王外相は、イスラエルがウイーン条約を破ってダマスカスのイラン領事館を攻撃したことからテヘランが自衛するのは正当であると公式に強調した。

国連安全保障理事会では、中国は今、ノルド・ストリームスへの国家テロ攻撃だけでなく、米国とイスラエルによるパレスチナの国家化阻止にも公然と疑問を呈している。さらに北京は、先日のモスクワと同様、パレスチナの政治派閥を一堂に集め、それぞれの立場を統一することを目的とした会議を開催している。

5月7日、モスクワが戦争終結の戦勝記念日を祝うわずか2日前に、習近平はベオグラードに降り立ち、米国、イギリス、NATOが25年前に中国大使館を爆撃したことを全世界に思い出させるだろう。

一方ロシアは、イスラエルが資金提供を打ち切ろうとしている国連パレスチナ難民救済機関UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務総長がガザの悲惨な人道状況についてBRICS10 の代表に説明する場を提供した。

つまり、国連が腐敗したシステムとして崩壊し、最大の株主である米国がすべての条件を指図するようになったため、重要な政治問題はすでに国連の外で行われている。

BRICSが新たな国連となっていることを示すもうひとつの重要な例がある。ロシアのパトルシェフ安全保障理事会議長がサンクトペテルブルクで、BRICS-10のメンバーであるイラン、インド、ブラジル、南アフリカ、イラクの安全保障責任者を含む100カ国以上が集まる第12回国際安全保障サミットの傍らで中国の陳文清国家安全部長と会談したのだ。

SCOの安全保障ショー

しかしここ数日の重要な岐路はカザフスタンのアスタナで開催された上海協力機構(SCO)防衛サミットだった。中国の董軍新国防相は初めてロシアのセルゲイ・ショイグ国防相と会談し、両国の包括的な戦略的パートナーシップを強調した。

董国防相は、中露軍事交流の「ダイナミック」な性質を強調し、 一方ショイグも、相互尊重と戦略的利益の共有に基づく「国家間関係のモデルを設定する」と強調した。

SCOの全総会で演説したショイグは、NATOに対するロシアの「脅威」についての西側の大規模なプロパガンダに強く反論した。

SCOの国防相会議には、インド、イラン、パキスタン、そしてオブザーバーとしてベラルーシなど全員が参加した。ベラルーシはSCOへの加盟を熱望している。

ロシア、イラン、中国の連動した戦略的パートナーシップは完全に同期していた。董国防相はショイグとの会談とは別に、イランのアシュティアニ国防相とも会った。アシュティアニは、イスラエルのダマスカス空爆に対する北京の非難を惜しみなく称賛した。

北京とテヘランの間で現在起きていることは、昨年モスクワとテヘランの間で始まったことの再現である。イラン代表団の一人がロシアを訪れた際に、両者は相互にハイレベルな「必要なことは何でもする」関係に合意したと発言した。

アスタナで、董国防相のイラン支持は疑う余地はなかった。北京での安全保障会議にアシュティアニを招待し、イランの立場を反映させただけでなく、ガザの即時停戦と人道援助の提供を求めた。

ショイグはアシュティアニと会談した際、さらなる背景を説明し、「シリアにおける国際テロとの共同戦線は、われわれの長年にわたる友好関係の鮮明な例である」と振り返った。そしてロシア国防相は次のように語った:

現在の軍事・政治情勢と両国への脅威は、我々に、国際社会におけるすべての参加者の平等を基礎とする公正な世界秩序を構築するための共通のアプローチをとることを求めている。

新しい世界安全保障秩序

新たな世界安全保障秩序の確立は、BRICS-10計画の中核をなすもので、脱ドル化の論議と並ぶ。これらすべては、ロシア・イラン・中国の多面的で絡み合ったパートナーシップを理解することができない西側諸国にとっては忌まわしいものである。

そして、その交流は個人レベルにも及ぶ。ロシアのプーチン大統領は今月末、北京を訪問する(今日、明日、すでに北京を訪問している)。ガザに関しては、ロシア・イラン・中国の立場は完全に一致している。イスラエルは大量虐殺を行っている。EU、そしてNATO諸国全体にとっては量虐殺ではない。彼らはどんな状況でもイスラエルを支持するのだ。

4月13日、イランが新鋭の極超音速ミサイルを使用することなく西アジアの情勢を一変させ、地球の大多数にとっての重要な問題が明確になった。最終的に、誰が虐殺者を制止するのか、そしてそれをどうやってやるのか?外交筋は、この問題はプーチンと習近平が直接話し合うことになるだろうと示唆している。

ある中国の学者が、ユニークな表現でこう述べた:

今回、野蛮人たちは、孫子の『兵法』、毛沢東思想、習近平の双方向循環戦略、一帯一路、BRICS、人民元のデジタル化、ロシアと中国の無限の力、世界最強の製造業、技術至上主義、経済大国、そしてグローバルサウスの支援を持つ5000年に及ぶ文明の歴史に直面している。

これらと戦うのが、混乱する分裂した米国と完全に制御不能になった西アジアで大量殺戮を行う空母なのである。

米国は、ロシアと中国の戦略的パートナーシップのいくつかの重要な柱を終わらせるか、さもなければ制裁の津波に直面するという「明確な選択」を迫ると脅しているが、北京には通用しない。BRICSメンバーの米ドル離れを阻止しようとするワシントンの希望的観測も同様である。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、モスクワと北京は二国間貿易において米ドルを捨てるところまで来ていると明言している。西側諸国によるロシア資産の完全な窃盗は、BRICS、そして恐怖をもって見守る他のすべての国々全体にとって、究極のレッドラインなのだ。ラブロフが2021年後半から強調してきたように、米国は間違いなく「合意不可能」な帝国である。

BRICS+ Analyticsの創設者であるヤロスラフ・リソヴォリックは、代替決済システムに向けたロードマップはまだ初期段階にあるとして、BRICSに対する米国の脅威を否定する。ロシアと中国の貿易に関しては、ドル以外の高速列車はすでに駅を出発している。

しかし残る重要な問題は、BRICSの指導者でSCOのメンバーであり、同時に米国にとって最も重大な「存立の脅威」とされるロシア・イラン・中国は、いかにして虐殺者を直視せずに新しい世界的な安全保障アーキテクチャを実施することができるのだろうかということだ。

ムラサキツユクサ
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