釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

変わらない寺田寅彦の危惧

2012-12-14 19:21:51 | 社会
比較的今朝はここ数日では気温が下がらなかった方だろう。しかし、雲が多く、日射しがあまり出ない。気温が低い日が続いたせいか昨日からやや風邪気味になって来た。暖房の効いた室内と屋外を出入りしていると体力を消耗するのだろう。出勤時に甲子川沿いの菊を家の前に並べていただいている元校長先生のお宅の前を通ると、昨日まで出ていた菊が今朝は無くなっていた。もう菊の花も終わってしまったようだ。気温が急激に下がったので、花もその影響を受けたのだろう。 「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉は地球物理学者である寺田寅彦の言葉として一般には知られている。夏目漱石の門下生として、文人でもある寺田寅彦は1923年(大正12年)9月1日の関東大震災に遭遇している。震災後の調査に加わり、後に東京帝国大理科大学教授として東京帝国大学地震研究所所員を兼務している。「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉は実際には寺田寅彦の著作には出ておらず、弟子が常々寺田寅彦の言っていた言葉の趣旨を考えて述べた言葉のようだ。寺田寅彦の随筆に『天災と国防』があり、日本は地理的に特殊な位置にあるため、「気象学的地球物理学的にもまたきわめて特殊な環境の支配を受けているために、その結果として特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命のもとに置かれていることを一日も忘れてはならないはずである。」と書いている。そして「しかしここで一つ考えなければならないことで、しかもいつも忘れられがちな重大な要項がある。それは、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実である。」「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっていると、どうかした拍子に檻を破った猛獣の大群のように、自然があばれ出して高楼を倒壊せしめ堤防を崩壊させて人命を危うくし財産を滅ぼす。その災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細工であると言っても不当ではないはずである、災害の運動エネルギーとなるべき位置エネルギーを蓄積させ、いやが上にも災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのものなのである。」と述べている。科学や技術など文明が進めば自然の動きを抑えられるどころか、かえって、自然が一旦、暴威を振うと被害は一層甚大になる。日本列島周囲では昨日だけでM2.5以上の6つの地震が起きている。米国地質調査所(USGS)のここ1週間の世界の地震マップを見ても日本を含む太平洋周辺部に地震が集中していることが分かる。共同通信によれば、東北大学地震・噴火予知研究観測センターの松沢暢教授(地震学)の研究で地球で起きる地震の最大規模は理論上「マグニチュード(M)10程度」となることが分かった。確率的には1万年に1回程度しか起きないが、地震のエネルギーは昨年のM9.0の地震の30倍にもなる。これまでの世界の観測史上で最大の地震はM9.5のチリ地震だ。日本は「災害を大きくするように努力して」列島中に原発を建設してしまった。東日本大震災を経験して尚、このまま原発を放置し続ければ、経済的衰退以前に列島は壊滅して行くだろう。90年前にすでに寺田寅彦は今の日本の状況を危惧していたのだろう。90年経っても、事態は何も変わっていない。選択は、今、我々一人一人にかかっている。
米国地質調査所(USGS)の過去1週間の世界の地震マップ