釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

地震と噴火

2012-01-29 19:16:44 | 文化
今朝は-7度になっていた。日中もほぼ氷点下で晴れていても寒い。しかし、空は澄み切った「釜石ブルー」が広がっていた。午後には久しぶりに白く雪が残った庭に小さく可愛い黒っぽいミソサザイが姿を見せてくれた。昨夜も岩手県沖でM4.9の地震があった。以前程頻回ではないが、相変わらず余震が続いている。昨年1月鹿児島・宮崎県境の霧島連山、新燃岳(しんもえだけ)が噴火しているが、火山周辺の地殻変動をGPS(全地球測位システム)で観測すると、地下のマグマだまりの大きさを推定できるそうで、ここしばらくは噴火は見られないが、専門家によれば地下ではマグマだまりが既に昨年を上回る大きさまで膨らんでいるという。富士山についても地下でのマグマだまりに関連する隆起が起きている。地殻変動による影響は地震だけではなく、火山の活動にも大きく影響する。昨日の午前7時43分、富士五湖直下を震源とするM5.4の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。気象庁はこの地震について「富士山の活動とは関係ない」と発表する一方で、「すでに日本は地震活動期に入っている。M9の東北地方太平洋沖地震によって活発となったプレートの動きが富士山の火山活動に影響を及ぼしている可能性が高い」と考えてもいる。1707年のM8.6の宝永地震では49日後に富士山の宝永大噴火が起きている。その後300年間富士山の噴火は起きていない。千葉大学大学院理学研究科の津久井雅志准教授は「地震の揺れがマグマだまりを刺激することになり、影響が心配です」と語り、東京大学地震研究所の武尾実教授も「富士山のマグマだまりは地下10キロ以内に1つ、15キロより深い場所に1つ。少なくとも2つあるといわれています。噴火発生前には地震が頻発する傾向にあり、警戒が必要です」と述べている。昨日たまたま1984年に製作された映画『空海』をDVDで観た。その中で修行中の空海が富士山の噴火に遭遇する場面があった。その頃富士山は781年、800年、802年、864年と続いて噴火している。864年の噴火は「貞観大噴火」と呼ばれており、869年に起きたいわゆる「貞観大地震」と連動した地殻変動であった。富士山の青木ヶ原の大樹林に見られる溶岩群はこの時の噴火で形成されたと言われる。当時富士山北麓には広大な湖が広がっており、『日本三代実録』では「(せのうみ)」と呼ばれており、「青木ヶ原樹海」もやはり、そこにあったために流れ出した溶岩で埋められた。去る23日には静岡県は東海・東南海・南海の3連動地震を踏まえ、巨大地震によって誘発される富士山の噴火や、中部電力浜岡原発(御前崎市)の事故を盛り込んだ第4次地震被害想定を来年6月をめどに公表する方針を打ち出した。しかし、昨日のような富士山直下型地震が発生していることを考えると来年6月などという余裕はないのではないかと心配される。現在中部電力浜岡原発は運転を停止しているが、核燃料からは崩壊熱が出続けており、使用済み核燃料プールとともに冷却を続けなければならない。浜岡原発は相良-掛川層群比木層 という砂と泥からできた地層であり、地盤としては極めて問題がある。北海道大学平川一臣教授らの浜岡原発周辺のボーリング調査結果で、8000年以上前から100 - 200年周期で東海地震が起きており、さらに従来想定されていた東海地震とは別タイプの大規模地震が約4800年前、3800 - 4000年前、2400年前、それ以降にもう一度発生していることを確認したという。地震や富士の噴火で核燃料の冷却が継続出来なくなると福島第一原発事故以上の放射性物質の拡散に繋がる恐れがある。現在の運転停止は決して「安全」を保障するものではない。日本の科学や技術は確かに水準が高いが、ロケットの独自開発にも失敗しており、世界で最も科学と技術の水準が高いと言われる米国ですら断念した核燃料サイクルでも成功に覚束なく、膨大な国費が費やされている。今回の震災は自然がいかに強大な力を有し、人の信頼する科学や技術が脆いかを教えた。しかし、その後の国や科学者とされる人たちにはそうした自然の教えに耳を傾ける姿勢は見られない。このまま行けば大惨事は再び避けられないことになるだろう。
釜石駅前の「日本近代製鉄の父」大島高任の像と「高炉の火」のモニュメント
震災で「高炉の火」は一度消えてていた。4トンの鉄鉱石には「ものづくりの灯を永遠 に」と刻まれている