フランス、ヴィック=シュル=セイユ、サンマルタン教会の洗礼盤。ジョルジュ・ド・ラ・トゥールもここで洗礼を受けたと思われる。
広大なITユニヴァースの中では小さな宇宙塵のようなこのサイト、どういうわけか、アクセスが急増した。人工衛星の破片でも衝突したか(笑)。原因は、どうも2月28日から国立西洋美術館で開催される「ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画」(6月14日まで)と、それに併せたテレビ東京の番組「美の巨人たち:ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」(2月28日)の放映によるものらしい。
TV番組自体は、30分の紹介番組。これでジョルジュ・ド・ラ・トゥールという謎の多い、深い精神性を秘めた画家がすぐに分かるわけではない。短い時間なのだから、画家の生きた17世紀の世界に直接入ることに徹すればよかったと思うのだが、無理に現代パリの照明器具デザイナーに結びつけようとした試みは、とってつけたようで成功しているとは思えなかった。「大工ヨセフとキリスト」の作品解釈、ホントホルストの一枚との比較も、一寸外れて残念。こうした番組の宿命かもしれない。
父親ジョルジュほどの画才に恵まれず、父親の没後、画業を続けることをあきらめた息子エティエンヌとの父子関係は、興味深いテーマだ。いつか記してみたいこともある。
ラ・トゥールという画家、果たして報じられたように400点も制作したかはまったく分からない。案外、寡作であったのかとも思う。ひとつ確かなことは、制作に際して深く思考し、余分なものは一切描かないという画家だったと思う。この画家にとって、描きこまれたものはすべて意味があるのだ。晩年の作といわれる簡素のきわみともいえる「砂漠の洗礼者聖ヨハネ」も、華麗な「いかさま師」も、同じである。
突如世界を覆い尽くした時代の不安に、この乱世をしたたかに生きた画家の作品が、多くの人の心の支えになりうるならば、ラ・トゥール・フリークのひとりとしても大変うれしい。
それにしても、こういう見識があり貴重な映像をちりばめてあるブログを容易に見られることは幸せです。まさにブログは、高齢社会にとっての必須のツールですね。楽しませてもらいます。
17世紀、ロレーヌ公国(現在のフランス東北部)の有り様は、深入りするほどに興味を駆り立てられるところがあります。なんとなく、日本に似ている所も。多少でも楽しんでいただければと思い、日々衰える脳細胞を叱咤しています(笑)。