時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

どうすれば重荷を下ろせるか:日本が生きる道は

2010年12月06日 | 雑記帳の欄外

 しばらく前まで、TVは朝晩のニュースくらいしか見なかった。TVが特に嫌いというわけではないのだが、単純に画面の前に座っている時間がなかったにすぎない。そのためもあって、朝の連続物、大河ドラマのたぐいはほとんどまったくといってよいほど見たことがない。他方、新聞など活字は割合よく読んでいる。明らかに活字派なのだ。

 
最近、少し様子が変わってきた。自由になる時間が増えたことに加えて、細かい活字を読むことに疲れ、次第に見るに安易な映像世界派へ傾いてきた。もともと好きなサッカーなどのスポーツ番組を見る時間も少しずつ増えて、思いがけずのめりこんでいたりする。スポーツ番組は嫌いではない。団体競技でも、個人が自分の持つ全力を投入してプレーする姿に惹かれるからだろうか。

 
他方、最近少し気になっていたことがある。司馬遼太郎の『坂の上の雲』あるいは『竜馬伝』などの明治期、懐古番組が話題になっていることだ。それもこの国唯一の国営TVともいうべきNHKの独占的?制作、放映だ。TV番組の原作となっている作品については、一通り読んではいる。しかし、今頃どうしてと思うほどの入れ込みようだ。この制作側のいささか異様と思うほどの熱の入れ方が気になり、その裏を考えてしまう。近頃、すっかり活力がなくなり、不安に追われているような現代の日本人に、なにかを考えさせ、時代の閉塞感を打ち破るような活力を発揮させようとの誰かの深謀遠慮が働いているのではないかと邪推してしまう。

 
ところが外国にも同じようなことを考える人もいるようだ。著名な国際的雑誌 The Economist が日本の実質的な国営放送局NHKは、隠れた政治的課題を持って、これらの番組を制作、放映しているのではないかという記事を掲載している。

 真偽のほどはわからないが、「龍馬を殺さずに生かしておいてくれ」という投書が
NHKに多数送られてきているという。新年から始まる大型番組『坂の上の雲』にも、制作者の間には方向性を失っているこの国について考えるために、「国民は歴史から学ばねばならない」という意図がかなり明瞭にあるようだ。『坂の上の雲』の原作者司馬遼太郎は、日本人の間に好戦的な愛国心が惹起されることを恐れて、作品がTVなどに映像化されることを望んでいなかったと伝えられている。しかし、その願いは果たされなかった。

 人口減少、少子高齢化がもたらした数々の重い問題に加えて、日本の周辺も緊迫感が漂っている。あのThe Economist 誌は、日本の高齢化社会がもたらす問題の特集に、次のような辛辣な表紙を掲載している。




この重圧をいかに取り除くか

 時の氏神がご機嫌を損ねたのか、「普天間基地」、「尖閣列島」、「北方領土返還」、さらにはお隣り韓国での「ヨンピョン島砲撃事件」など文字通り「問題山積」の状況が生まれている。東アジアの緊張は明らかに高まっている。いずれの問題も対応を誤れば、一触即発の危機になりかねない。

 「日本が大陸と地続きでなくてよかった」という思いがする反面、地政学(ジオ・ポリティックス)上の特性を生かして、悲惨な結果につながるような過ちを繰り返さぬよう、日本人は深く考えねばならない時だ。アジアとアメリカとの地政学的プレート・テクトニクス、深層基盤が重なり合い、上下入れ替わろうとする歴史的転機にさしかかったようにも見える。その先端部での現象が今起きていることではないだろうか。日本の生きる道はどこにあるか。「和魂洋才」を掲げて一世紀半以上の年月を過ごしてきた日本は、これからアジア、アメリカどちらの基盤に比重を移そうとしているのか、あるいは移すべきなのか。坂本竜馬がその答を与えてくれるとは思えない。大河ドラマも心して見なければならない。現実はドラマよりもはるかにすさまじい様相を呈している。時々意識して末端神経を活性化していないと、蜘蛛の糸に縛られてくるような気がしている。


Reference
“Televised nostalgia in JapanThose were the days” The Economist December 4th 2010. 


 

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