時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

鎮魂の旅から(1)

2011年05月07日 | 特別記事



 このところ、多くの知人、友人との別れがあった。その中には、大震災の最中、突然病を得てなくなられたS先生もおられた。かねて「見るべきものは見つ」といわれていただけに、3.11大震災の一端を体験された直後に亡くなられたことは、お望みの通りの人生であったと思いたい。あの地震と津波がもたらしたすさまじい光景は、多くの人にとっても、一時は末世ここにきわまったように見えたのではないか。不安と騒然とした空気が漂うなか、メディアの注目も逃れ、別れは唐突ではあったが、名実共に激動の年月を過ごされた方の人生を閉じるにふさわしく、厳粛なものであった。

 日本では余震が続く時、オサマ・ビン・ラビンの米軍による殺害が発表された。9.11のワールド・トレード・センターで最愛の息子を失った友人にも、ひとつの区切りがついたようだ。アメリカのメディアの一部には、同胞の敵討ちを果たしたような報道もみられる。しかし、すでにアルカイダの報復宣言もなされている。新たな不安の始まりにすぎない。この時代の狂気に終止符を打つことはきわめて難しい。
 
 いくつかの仕事が重なり、小さな旅をする。節電で暗い東日本を離れて西へ向かうと、なにごともなかったような明るい日本がそこにあった。しかし、落ち着いてみれば、そこここに込められた被災地への思いに慰められる。阪神・姫路大震災を経験した西は、今度は東を支援することになった。かつて、信じられないほどの苦難の日々を過ごした西の人々の経験は、さまざまな形で支援の活動に生かされている。

 短い旅を決めさせたのは鎮魂の思いだった。故人がこよなく愛した古寺がある地を訪れることだった。名残の桜も美しく、やわらかな初夏の光が竹林の間から射し込んでいた。

































コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする