時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

13歳の夏に僕は生まれた

2006年06月07日 | グローバル化の断面

映画のオフィシャル・サイト
http://www.13natsu.jp/

  最近珍しくかなり多くの映画評論家が、高いポイントを与えた映画が目にとまった。「13歳の夏に僕は生まれた」である。このブログの主題でもある移民の世界が対象であるだけに、「移民問題」ウオッチャーとしては見ておきたい。近くの映画館で上映されるまでは時間がかかりそうであり、早速出かけてみた。

  テーマはこのブログで再三とりあげてきたアフリカからヨーロッパへの不法移民問題である。主人公サンドラは、北イタリアの小都市プレシャの裕福な工場主のひとり息子。13歳の夏、父とその友人と出かけたクルージングで、過って海に転落するが、密航船に救助され、それまで知らなかった過酷な世界を知る。

  密航船は沿岸警備隊に発見され、移民収容センターに送られる。サンドロだけは身元が分かり、両親のもとに帰る。命の恩人であるルーマニア人のラドゥと、妹といって紹介された自分と同じ年頃の少女アリーナを信じきり、両親に引き取りを懇願する。息子の生還で生き返る思いをした両親もそれを聞き入れる。

  しかし、結果は厳しく裏切られる。サンドロは自分のまったく知らない世界を改めて知らされる。サンドロはどこへ行くのだろうか。

  こうしたテーマを取り上げた作品の多くがそうであるように、結末はオープンエンドで終わる。監督にも確たる答はないのだろう。映画自体の出来は決して悪くはないのだが、やはりもう一歩の踏み込みが足りない。結論が途中で見えてしまう。やはり移民の根源に立ち入り、究明しないかぎり、情念に訴えるだけで終わってしまい、不完全燃焼することになる。「愛」が問題の解決にはなりえないのだから。

  移民船の中でラドゥが言った 「動脈の血と静脈の血は隔てられ、決して混じりあわない」という言葉が耳に残った。 この映画の日本語タイトルにはかなり苦労したと思われる。しかし、原題QUANDO SEI NON PUOI PIÙ NASCONDERTI 「生まれたからには隠れられない」の意味は深い。

  

本ブログ内関連記事 

http://blog.goo.ne.jp/old-dreamer/e/8a35f37b7889280c4514cec256611fb9

*私事ながら、ヨーロッパ移民問題に造詣が深く、日米間の比較移民研究・調査を共にしたK.T.さんが亡くなられた。深い哀悼の意を表したい。

 

 

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