[短歌味体 Ⅲ] 入院詩シリーズ・2.16
53
ふと夜中に目覚めて
(人生はまぼろしのよう)
と耳に残る言葉を無言でつぶやいている
54
(銀河系の無限遠点からは
無数の明暗の
つぶつぶにしか見えない)が思い浮かぶ
55
そんなことを思っても、また
今日も
この足下から世界ははじまるさ
56
今日はくもり空でも
わたしの
心の空は静かな晴天
57
初期CD三巻を病室(へや)で
十数年ぶりに
聴く、やっぱりいいなタテタカコ
58
にぎやかな抽象の
すべすべでなく
心の肌合いにぴったり音が添う
註.タテタカコの『そら』『イキモノタチ』『敗者復活の歌』の三巻。よしもとばななつながりで聴き出した。 |
59
いくつもの検査を乗り越え
今日もまた
ほっと一息つく夕暮れ
60
家々の明かり点々と
向こうの
薄闇に浮かぶ午後七時頃
61
内から見たわけじゃないけど
夕食や
テレビ観てるか金曜の夜
62
心はつながりの糸に
ふと足引かれつつも
ひとり病室(へや)を歩き回っている