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川内原発説明会を要請、九電は途中退席~11万の署名は受け取る

2015-06-08 16:00:00 | 原子力関係
川内原発説明会を要請、九電は途中退席~11万の署名は受け取る

                   林田英明

  *11万余の署名を大河内氏(右)に手渡す第2次九電福岡本店行動の平良行雄団長
 「時間切れ」を宣告し、九州電力の広報担当者たちは途中退席した。3月2日の“延長戦”となった要請行動は、またも平行線のまま終了。前回同様、徒労感の深い5時間だった。

 川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する県内の市民団体でつくる「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は5月27日、1カ月前に提出していた「社長は川内再稼働に当たって説明責任を果たせ」とする公開質問状に対する回答を得ようとした。内容は①地震②火山③過酷事故対策④使用済み核燃料⑤避難計画⑥九電の責任問題――に分かれ、計42項目に及ぶ。

 話し合いに先立つ九電本店前での集会は、デモ隊の到着を待って開かれた。16日に鹿児島市・照国神社を出発した「311キロ・リレーデモ」である。歩行距離は、もちろん福島第1原発事故の「3・11」にちなむ。岩下雅裕団長はJR鹿児島線沿いを北上したデモの各地での交流も取り上げながら「再稼働は百害あって一利なし」と、参加した200人に強調した。このうち100人が地下2階の会場へ移動し、午後3時過ぎ、九電側と向き合った。冒頭、向原祥隆事務局長が、1月から集めた「九州電力は、川内原発再稼働の前に住民に説明し、同意を得よ」とする緊急全国署名11万2864筆を九電エネルギー広報グループ長、大河内洋氏ら7人に手渡した後、話し合いは始まった。

●目には見えない断層

 しかし、大河内氏の「基本的には広報が担当」とする態度に変わりはないし、合意点を応答から見いだすという姿勢は薄い。甑海峡中央断層などの活断層評価を政府の地震調査研究推進本部が大幅に見直しても九電の評価は従来のままで、「当社の対応に問題はなかった」との姿勢を崩さない。耐震に詳しい石橋克彦・神戸大学名誉教授の懸念するプレート間地震と海洋プレート内地震も地震動の検討に加えるよう市民側が求めても「原発敷地から距離があり大きな影響はない」と突っぱね、マグニチュード9.1も検討したうえで基準地震動540ガルを下回るから発電に影響を与えないと結論づけた。原子力安全基盤機構の言う1340ガルもの揺れが襲う可能性には「試算値に過ぎない」とされた。

 断層は目に見えない。だから、知られている他にもあるのではないかと恐れるのが自然だろう。市民側は1997年3月と5月に起こった鹿児島県北西部地震の例を挙げて予断を排した調査を求めた。なるほど、船による海上音波調査を九電は重ねており、大河内氏は「川内河口に断層はない」と言い切る。しかし向原事務局長は「断層の方向に向かって調べても断層は見えない」と、調査の方法に疑念を示した。九電側が一部の活断層を長く評価した箇所もあると主張した点には「それは原発から遠い所でしょ」とすかさず切り返すと返答はなかった。また、地層のズレを判断するためボーリング調査を求める声も市民側から上がったが、大河内氏は「これまでの調査によって更新世に変化はない」と断言して、ボーリングの意思を見せなかったように九電の結論は初めから決まっているようだ。地震調査研究推進本部の資料に対して「同じデータを見ても評価が異なる」と言うだけでは、建設的な話し合いには発展しない。

●降灰に豪雨の心配は

 ここで九電の指定する2時間の予定が過ぎ、進行役は打ち切りを宣言して大河内氏らは席を立とうとした。まだ質問状の4分の1も終わっていない。堂々巡りで時間を空費したところもあるが、そもそも2時間で終了できる軽い中身とも思えない。出入り口で引き止める市民側との押し問答の後、大河内氏らは席に戻って「事前の質問には回答を用意している」と言いながらも「大規模な住民説明会を開催することはない」とクギを刺した。遠方からも多数、会場入りしているだけに回答は聞きたい。とにかく続行である。

 原子力規制委員会の公開資料には、白塗り、黒抜きが要所に入る。「商業上の秘密」としてマスキングされては第三者の検証ができない。市民側は、基準地震動の質問の中で「メーカーを説得して公開してくださいよ。メーカーに不備を直してもらったほうが皆さんも助かる。制御棒の挿入時間が商業上の秘密であるわけがない」と、懇願と憤怒がないまぜになった問いかけをした。九電の回答は「要請、申し出のあったことは主管部に伝える」だった。官僚答弁の「重く受け止める」以上の響きを感じないため、市民側から「耐震偽装しているのではないかとも思える」と疑念の声が出るのもやむをえないだろう。

 火山対策もお寒いものだ。回答の中で最も反発の強かったのが原発敷地内の火山灰対策である。「15センチの火山灰と30センチの積雪でも建屋に影響はない」と言う。「積雪30センチ?」と驚きの声が上がる。しかし驚くことはない。温暖な鹿児島だが、東シナ海に面している薩摩地方、つまり川内原発側は季節風の影響を受けて雪は降る。鹿児島県の観測史上最高は1959年1月の29センチ。九電はこの数字を意識しているのではないか。だが、問題は雪よりも雨かもしれない。桜島が噴火した降灰に豪雨が重なったら、屋根はもつのか。主要道は九電が自信を示すようにホイールローダーで除けても、建物の上にも灰と雨は降る。向原事務局長が「具体的に何センチまで耐えられるのか」と聞いても大河内氏は「起こりうる最大値で想定している」と答えるだけだった。

●施設管理者が警官導入

 午後7時を過ぎ、今度は進行役ではなく施設管理者が「弊社の対応は終わらせてもらいました」と過去形で強く宣言して大河内氏らは帰ろうとしたため、再び市民側が引き留めに入った。しかし管理者は福岡県警中央署に連絡し、20人の警官が到着。警察の責任者は「あなたたちの立場は分かります。しかし、九電ではなく施設管理者に呼ばれています」との理由で結局、8時前に九電側は退席して、この日の話し合いも中途半端に終わった。

 翌日の産経新聞は次の通りに書く。「この日、福岡市中央区の九電本社には、反原発を訴える団体約200人が集まった。ビルの会議室で応対した九電社員に、高齢女性は『社長が出てくるまでここに立て籠もるぞ』と言い放った。反原発派の“籠城”は4時間を超え、九電の社員が部屋から出られないような騒ぎになったため、警察が出動した」。確かにごく一部、気炎を上げる向きもあった。会議室入場前には「再稼働阻止」のゼッケンをつけた男性が玄関で足止めされる場面にも私は遭遇したが、向原事務局長が「入場を優先してください」と取りなして彼はゼッケンを外した。市民側は、そういう意味でも代表者らを中心に緩やかに統率され、九電に何とか一緒に考えてもらいたいという姿勢を崩さなかった。むしろ、終始一致した行動や発言に支配されていたら、宗教団体のような不気味さに私は敬遠しただろう。それぞれがそれぞれの思いを持って参集している。そして、人によっては九電と同等以上に勉強しているようなやりとりに感心した。「反原発派」と十把一絡げに切り捨てる高瀬真由子氏の産経署名記事は、政権や電力会社の考え方を知るうえでとても役に立つ。しかし、ただそれだけだ。

 市民側は、残りの質問に対する答えを九電側に申し入れることを決めて散会した。免震重要棟やフィルター付きベントも設置しないまま見切り発車するつもりだろうか。再稼働前に改めて場を持つ必要はあるが、市民側の真摯な申し入れに九電がどう対応するか注目される。社員の一時金ゼロは3年連続。生活は厳しい。しかし、市民側と価値観は違っても、原発事故を起こしてはならない気持ちは一緒のはずと信じたい。

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