お年寄りの介護問題がいわき市で浮上している。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故後、介護を要する人が増えた。一方で、現場で働く人手が足りない。狭い仮設住宅での生活が長引けば、一段と切迫しよう。
双葉郡も見据えた広域の地域福祉を守るには、介護の担い手育成と確保が欠かせない。被災地に手厚い待遇の改善や養成機関の拡充、設置など若い世代が魅力を感じ地元で働く環境づくりが急務だ。
浜通りの被災市町村では、介護保険の要介護認定者が震災前に比べて大きく増えた。伸び率は、いわき市で11%、大熊や浪江、双葉、富岡の4町で40%を超す。現在、相双地区から、いわき市への避難者は約2万3千人に上る。要介護者も多い。市の推計で、市内の特別養護老人ホームや老人保健施設に約100人が入所する。
特養ホームは20施設合わせて定員約1300人、老健施設は12カ所で約1200人。いずれも満員だ。さらに定員を上回る入所待機者がいる。今後、町外コミュニティー「仮の町」の議論や介護保険財政を見極めながら、施設や在宅介護の在り方を見直す必要があろう。
需要が多い半面、介護福祉士やホームヘルパーなど人材の確保は進まない。福島労働局や県の集計で、介護職員の求人倍率はいわき2・51倍、相双2・61倍と県全体の1・95倍を上回る。実際の就職者は求人の約6%にとどまる。自主避難のため、退職した職員も多い。人手不足で訪問介護を休止したり、短期滞在の定員を減らしたりした施設もある。
県は平成25年度、介護職員を1000人規模で増やす計画だ。当初予算案に2億3000万円を計上した。資格取得の研修会や合同面接会の開催に要する経費などを補助する。浜通りに限定し、職員の住宅手当や給料の上乗せ費用も確保する。現場の実情に合った息の長い支援を望む。
若い人材に、介護職の重要性、魅力を伝える工夫も大切だ。浪江高は避難先でヘルパー2級養成講座の課外授業を開き、26人が取得した。介護職の養成課程を、浜通りの高校で導入、拡大するのも一策だ。既に県内の高校数校で実績を持つ。
「浜通りに専門の養成機関を増やしてほしい」との声も高校生や事業所から聞く。今は、いわき短大に幼児教育科・専攻科福祉専攻(定員25人)があるだけだ。主婦や社会人も介護を学べるような養成機関の拡充、設置を考えたい。(花見 政行)
2013/03/13 09:35 福島民報論説
双葉郡も見据えた広域の地域福祉を守るには、介護の担い手育成と確保が欠かせない。被災地に手厚い待遇の改善や養成機関の拡充、設置など若い世代が魅力を感じ地元で働く環境づくりが急務だ。
浜通りの被災市町村では、介護保険の要介護認定者が震災前に比べて大きく増えた。伸び率は、いわき市で11%、大熊や浪江、双葉、富岡の4町で40%を超す。現在、相双地区から、いわき市への避難者は約2万3千人に上る。要介護者も多い。市の推計で、市内の特別養護老人ホームや老人保健施設に約100人が入所する。
特養ホームは20施設合わせて定員約1300人、老健施設は12カ所で約1200人。いずれも満員だ。さらに定員を上回る入所待機者がいる。今後、町外コミュニティー「仮の町」の議論や介護保険財政を見極めながら、施設や在宅介護の在り方を見直す必要があろう。
需要が多い半面、介護福祉士やホームヘルパーなど人材の確保は進まない。福島労働局や県の集計で、介護職員の求人倍率はいわき2・51倍、相双2・61倍と県全体の1・95倍を上回る。実際の就職者は求人の約6%にとどまる。自主避難のため、退職した職員も多い。人手不足で訪問介護を休止したり、短期滞在の定員を減らしたりした施設もある。
県は平成25年度、介護職員を1000人規模で増やす計画だ。当初予算案に2億3000万円を計上した。資格取得の研修会や合同面接会の開催に要する経費などを補助する。浜通りに限定し、職員の住宅手当や給料の上乗せ費用も確保する。現場の実情に合った息の長い支援を望む。
若い人材に、介護職の重要性、魅力を伝える工夫も大切だ。浪江高は避難先でヘルパー2級養成講座の課外授業を開き、26人が取得した。介護職の養成課程を、浜通りの高校で導入、拡大するのも一策だ。既に県内の高校数校で実績を持つ。
「浜通りに専門の養成機関を増やしてほしい」との声も高校生や事業所から聞く。今は、いわき短大に幼児教育科・専攻科福祉専攻(定員25人)があるだけだ。主婦や社会人も介護を学べるような養成機関の拡充、設置を考えたい。(花見 政行)
2013/03/13 09:35 福島民報論説