シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0194■橋を渡って

2006-09-21 | 猫の病気
元気なかったアニキも元気になってきた。
アイツはあいかわらずアニキの好きなネコ缶が入ったボールを持って追いかけ回してる。
糖尿病の四つ足はインシュリンを打つ前に喰っとかなきゃいけないから、こうなるんだ。
元ガンの四つ足にはなんにもないけどね。
==============================

アイツの頭ん中にいた茶色の四つ足。
この辺のやつじゃなかったけど、アイツの頭のテレビを見てるうちにすっかり覚えちまった。そいつは病気だった。喰ったり飲んだりしなくなっても、けっこう元気だった。

でも、死んだんだ

見たこともにおいをかいだこともないやつだったけど、こんだけしょっちゅうテレビで見てると交信みたいになんのさ。ぼんやりなんかを感じる。
それが急に消えたんだ。

二本足だってわかるだろう?誰も見てないテレビを誰かが消すと、家の中が静かになる。
「わー、静かー。」
って誰かが言う。あれとおんなじ。
消えたときに、なにかあったって気がつくんだ。

出かけてたアイツは帰ってきてパソコンを見て、やっと気がついたらしい。
そいつの写真を見ながらジーっとしてた。そいつのこと、おいらのこと、アイツの頭ん中にはいろんなものが次から次へと出てきた。

あの茶色の四つ足は橋を渡ったんだ。
いつかおいらが見た、それまで一度も見たことがなかった四つ足にぴったりな小さな橋。
世の中なんでもかんでも二本足用にできてるのに、その橋だけは違った。
あのときのことは前に長い長い話をしたから、こっちから見てくれよな。

きっと、あの橋を渡ったんだろう。

橋を渡るのはワルいことじゃない。いつかは1匹であの橋を渡るんだ。
生まれてきたときに突然やってきたように、突然行くのさ、あの向こうに。
多分ね。
苦しくないし、怖くもない。特に楽しくもないけど、寂しくもないぜ。
そんなに遠くでもワルいところでもなさそうだった。

ただ渡ったら戻れない―――ってこと。

いつか渡るときが来たらわかるぜ。おいらは橋を見たけど、渡るときじゃなかったみたいなんだ。
戻ってきちまったからね。
鈍い二本足にも、渡るときがきたらわかるんじゃないか?

だからあんまり悲しまないほうがいいぜ。
いつかはみんな橋の向こうへ行くんだ。
そこでまた一緒になるんじゃないか?
二本足は見えるものしか覚えらんないけど、おいらたちはにおいで覚えてるから、誰が誰かそんなに簡単に忘れないぜ。
そっちこそ、ちゃんと覚えてろよ!

(↑橋の向こうでまた一緒になるんだってば。)
(つづく)


最新の画像もっと見る