息子のクラスに体毛のない子がいる.他のママ達は「キモセラピー(抗癌剤治療)している子なんだと思うわ」と今でも深刻な表情で噂しているけれど,私は「無毛症」とかいう,生まれつき毛のない子だろうなと,会ったときからそう思っている.
なんてたって元気がいいし,顔色が良いし,肌艶も良い.おまけに眉毛もまつ毛もないし,毛根らしきものが見当たらないから.でも真相は定かでない.
ただ心配だったのが,息子がその子に余計なこと言わないか?ということだった.子供って結構残酷なところがあるから,みんなと違っていると虐めのターゲットにしちゃったりするくらいでしょ?ズケッと言って傷つけたりしやしないかとか思って,息子になんて説明しようかちょっと考えた.
そこで「クラスにね,髪の毛のない子がいるでしょ?黒い髪やブロンドの髪,クリクリの髪の子がいるように,毛が生えない子もいるのよ.それもその子だけに与えられたスペシャルなことなの.でももしかしたら,今その子は皆みたいに毛が生えてないのが嫌だなって思ってるかもしれないし,分からないから,髪の毛がないのを笑ったり,変だって言ったり,そういうことは言わないようにね.」と言うと,
息子,「はぁ~~?!」って顔して,
「お母さん 何言ってるの?間違ってるよ.あの子の髪はまだ生えてきてないだけだよ.待ってるんだよ.リーちゃんだって髪の毛生えてくるの遅かったし,僕だってまだ髭が生えてないし.でも見て!だんだん眉毛が繋がってきてるんだ!何にも心配いらないんだよ.時期がきたら生えてくるの.みんな違う時なだけだよ.」
と自信満々に言ってきた.へぇ~,そういう解釈の仕方があるんだ.大人はキモセラピーだの先天性の病気だの言っているのに,子供って,なんて希望のある解釈の仕方をするんだろう…と思った.
もう一つ.息子の学校では,問題児は退学処分があるというのは聞いていたが,目の当たりにすることになった.児童の問題行動や成績よりも,その子と向き合う保護者の姿勢,要は「問題保護者」で子供の退学処分が決められているように思う.「学校や他の生徒の足を引っ張ろうとも,迷惑をかけようとも,あたしゃ知ったこっちゃない!!」という開き直った態度で,問題を改善しようと試みない保護者の場合,校長がズバッと退学処分を言い渡す.
私を含め,この校長のサバサバ感が好きだという父兄も多いが,反感を持つ父兄も多い.
息子のクラスに双子の子がいた.PreK(年中)から引き続きの子で,PreKのときは一番の問題児ではあったが,暴力を振るったりではなくて,普通に座って話を聞いたり学んだりできないという問題.常にフラフラ歩き回ったり,大声出したりして,授業妨害になるのは事実だった.
PreKでは双子は一緒に同じクラスということだが,キンダーからは別別のクラスにさせられるのが一般的.それがこの双子はまた2人して同じクラスだった.母親が「うちの双子は2人一緒じゃないと行動できないので,キンダーも同じクラスにして欲しい」と学校に言ってあった.おまけに双子のうちの一人(問題行動の大きいほう)は,市の派遣した特別アシスタントが常に一緒にいることになり,サイエンスやコンピューターなどのちょっと難しくなる授業は控えさせたいということと,宿題も一般の子よりも少なめでお願いしたいということを学校に申し出た結果,校長が登場し「そんなに特別対応が必要なのであれば,特殊教育のある学校を紹介しましょう.そのほうがお宅のお子さんのためにも良いでしょう.学校も担任も,クラスの子全員も,全ての予定を変えて対応するということは,どれだけ多大な迷惑をかけることになるというはお分かりですか?」と始り,結局その双子の母親は「こんな屈辱的なことを言われたのは初めてだ!こんな学校辞めてやる!」と激怒し,真新しい制服を着て登校させた今学期初日を最後に子供達を辞めさせた(因みにこの双子の父親は高校教師).
さて,初日以来来なくなった2人.「○○と●●(双子の名前),今日も来てなかったの.どうしてかな?」という息子に,何て言おう…とまた悩む.
「○○と●●はね,違う学校へ行くことになったんだよ.あのね,デヴィッドの行ってる学校はね,いい学校だけど厳しい学校なの.学校のルールが守れない子,ちゃんと先生のお話が聞けない子,ホームワークをしてこない子,お友達と仲良くできない子,そういうできないことがいっぱいだったらね,学校の一番偉いボス先生(校長のこと)が『この学校でできないんだったら,違う学校へ行きましょうね』と言って,違う学校へ行かされちゃうの」
と言うと,息子,
「違うよ,お母さん.あのね,今度のクラスね,すっごい悪い子がいるの.こんな悪い子見たことがないってくらい悪い子なの.いきなり皆を蹴ったり叩いたりするの(先生が『要注意生徒が一人いるので注意して見ています』とは言っていた).○○と●●も悪い子だったけど,キンダーガーデン行って,『こんなに悪い子がいるなんてビックリ!もうこんな学校嫌だ!もっといい学校へ行って,自分達はもっといい子になろう』と思って自分達から辞めたんだよ.絶対そうだよ!」
そうか,そういう解釈の仕方もあるか…(苦笑).大人の考え付かないような明るい,未来のある解釈の仕方をするなと思う.
それに,今日本が大変な領土問題のことも.
正直,NYでは日本の領土問題のことも,今の日中韓関係のことも,驚くほど何にも報道されない.全く持って無関心.中国系も韓国系も沢山の移民がいるアメリカで生活している私は,不快なニュースばかり見ていると日常生活に支障をきたしそうになるので,見れないなら見ないで構わないと思っている.だけど日本のニュース(NHK)も見れるようにしているので,ちらっと知ってしまう.でも,その放送もやっぱり制限しているのか,さらっと流す程度でそれほど領土問題にクローズアップはされていないように思う.
だけど,やっぱり息子がいろいろと聞いてきた.日本にいたときから聞いてきていたのだけど,状況や人種のこと,暴力(反日デモ)のこと,War(戦争)になるのかということも.できるだけ息子に不安を与えないように,息子の友達関係に響かないように,息子のアイデンティティーを傷つけないように,と母親の私は言葉を選んで気を使いながら説明しているというのに,
息子.
「チャイニーズもジャパニーズも,ダークスキンの人(黒人)もホワイトスキンの人(白人)もみんな同じ神様が作って,島も海も山も空も全部神様が作って.それを欲しい欲しいって取り合って,何やってるの?馬鹿タレな大人ばっかり!どうしてなの?!今,神様泣いてるよ!」
確かに….
「欲しいから怒って物投げて壊して,そんなことPreK(年中)でもしないよ.どうやって自分の物にするか,自分の頭でよく考えて,ネゴシエイト(交渉)しないと.お友達が持ってるオモチャや絵本を貸して欲しいときと一緒.ほんと何やってるのねぇ?」
とも.
子供でも分かってる.いや,子供のほうがずっと分かっているのか….
「あなたは自分の人種のことも,チャイニーズとジャパニーズ,コリアンとジャパニーズの島問題のことも何にも心配しなくていいから,お友達みんなと仲良くしなさいね」
と言うと,明るく笑顔で「うん!」と答えてくれた.
その顔はほんとにまだまだ幼い5歳児の顔.
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