こぶしの花や木蓮が咲く季節になると知人の歯科技工士(佐田さん・仮名)のことが思い出される。
その人は生真面目で研究熱心であった。
白衣姿は研究者や学者のような風貌でもあり、ラボでは社長ではなく「先生」と呼ばれていた。
ある歯科技工材料を開発したのに、なかなか薬事認可が下りなかった。
「いつになったら、認可が下りるのでしょうなね。何か問題でもあるのでしょうか」」と怪訝な顔をする。
頼まれたので、厚生省(当時)の開発課へ聞きに行く。
「どこからか、圧力がかかっているのですか」とズバリ聞いてみた。
「そのようなことは、ないよ」と歯科技官は否定した。
「こんなにあるんだ。簡単にいかないよ」と机上の書類を示す。
一人で裁くのに大変なのだろうと種類の厚さに目を留めた。
当時、参院議員をしていた木暮山人さんの会社が独占している歯科技工器材であり、類似製品に認可が下りないのを疑問視する人もいたのだ。
報告に行くと「まだ、時間がかかりそうですか」と佐野さんは落胆した。
佐野さんのラボの外にコブシと木蓮の花が見えた。
「来週、石神井公園で花見をするのですが、よければ来てください」と笑顔となった。
ラボの近くには作家・檀一雄の「火宅の家」があった。
「小説、読みましたか?」と聞かれたが、当方は小説をほとんど読まなくなっていた。
そして、「おもしろいですよ」と小説「火宅の人」を貸してくれた。
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映画「火宅の人」について: 家庭を捨て、新劇女優と同棲するなど、苦悩を抱えながらも自由奔放に生きた放浪の作家・壇一雄の自伝的同名小説を「蒲田行進曲」の深作欣二監督が映画化した人間ドラマ。
『火宅の人』は、檀一雄の長編小説で遺作である。
『新潮』1955年11月号より20年にわたり断続的に連載され、1975年に新潮社から単行本が刊行された。
没後に第27回読売文学賞と、第8回日本文学大賞を受賞した。





その人は生真面目で研究熱心であった。
白衣姿は研究者や学者のような風貌でもあり、ラボでは社長ではなく「先生」と呼ばれていた。
ある歯科技工材料を開発したのに、なかなか薬事認可が下りなかった。
「いつになったら、認可が下りるのでしょうなね。何か問題でもあるのでしょうか」」と怪訝な顔をする。
頼まれたので、厚生省(当時)の開発課へ聞きに行く。
「どこからか、圧力がかかっているのですか」とズバリ聞いてみた。
「そのようなことは、ないよ」と歯科技官は否定した。
「こんなにあるんだ。簡単にいかないよ」と机上の書類を示す。
一人で裁くのに大変なのだろうと種類の厚さに目を留めた。
当時、参院議員をしていた木暮山人さんの会社が独占している歯科技工器材であり、類似製品に認可が下りないのを疑問視する人もいたのだ。
報告に行くと「まだ、時間がかかりそうですか」と佐野さんは落胆した。
佐野さんのラボの外にコブシと木蓮の花が見えた。
「来週、石神井公園で花見をするのですが、よければ来てください」と笑顔となった。
ラボの近くには作家・檀一雄の「火宅の家」があった。
「小説、読みましたか?」と聞かれたが、当方は小説をほとんど読まなくなっていた。
そして、「おもしろいですよ」と小説「火宅の人」を貸してくれた。
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映画「火宅の人」について: 家庭を捨て、新劇女優と同棲するなど、苦悩を抱えながらも自由奔放に生きた放浪の作家・壇一雄の自伝的同名小説を「蒲田行進曲」の深作欣二監督が映画化した人間ドラマ。
『火宅の人』は、檀一雄の長編小説で遺作である。
『新潮』1955年11月号より20年にわたり断続的に連載され、1975年に新潮社から単行本が刊行された。
没後に第27回読売文学賞と、第8回日本文学大賞を受賞した。




