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台風2号被害と草加市の対応-なぜ市長・副市長は帰宅してしまったのか

2023年06月15日 | 市政・議会・活動など

台風2号による草加市内の被害状況と、草加市の災害対応について現時点で調査・確認できた範囲で独自に検証した内容をまとめました。

災害対応は、市役所にとって市民の生命や財産を守る非常に重要な役割です。今後の危機管理が大きく改善していくことを期待して、かなり厳しい内容も率直に書きました。

 

■27年前の台風17号に次ぐ甚大な被害

台風2号・豪雨により、6月1日23時から3日10時までの総降水量は越谷市で289.5mmを記録(※1)しました。

草加市の被害状況は、6月14日時点で床上浸水 60件、床下浸水173件もの被害が確認されています。近年で最も甚大な被害を記録した2013年の台風25号(床上浸水19、床下浸水138)を上回り、27年前の1996年に生じた台風17号(床上浸水46、床下浸水917)に次ぐ被害規模です。床上浸水については台風17号をも上回っています。

また、草加市内公共施設も草加文化会館の水漏れや、記念体育館・地下駐車場の冠水、アコスや氷川コミュニティセンターの雨漏り、吉町テニスコート事務所や草加北ミニコミュニティセンターで床上浸水などの被害が生じました。

(※1)気象庁「令和5年台風第2号と前線による6月1日から3日にかけての大雨に関する気象速報(6月6日付)」より

 

 

 

■雨のピークと満潮がほぼ重なった

佐藤憲和が独自におこなった調査結果や国土交通省データをもとに、綾瀬川の水位や降水量、市役所の対応を【表1】で時系列にまとめました。

草加市内を流れる綾瀬川や伝右川は、東京湾の潮の満ち引きの影響を受ける河川です。満潮時は東京湾の方の下流から上流に逆流し、水位も自然と上昇する特徴があります。草加市の水防を考える際に、干潮・満潮時間も非常に重要な情報となっています。

今回の台風2号も、17時台に降水量が一気に増えたあと、21時頃まで綾瀬川の水位は一時低下しましたが、満潮から干潮にむかっていた時間帯でもありました。その後は午前3時まで水位が上昇し続けました。天気予報でも注意されていた通り午前0時から2時ごろにかけて降水量がピークを迎えた時間帯であり、満潮(3時24分)にむかっていた時間帯(※2)です。

(※2)正確には、東京湾の満潮時間の1~2時間後に綾瀬川の水位がその影響のピークに達します。ただし、豪雨や台風時など増水し流れが急な際の潮位の影響は通常時と異なる可能性もあります。

 

【表1】台風2号の記録と草加市の対応

 

■市長も副市長も不在の失態

台風が近づいてきた2日の日中から建設部や都市整備部職員による水防活動がおこなわれていましたが、その後の危機管理は過去の教訓がいかされたとは言えない後手後手の対応となりました。

表1の通り、山川百合子草加市長と高橋理絵副市長とも6月2日は市役所にいましたが、2人揃って23時10分に退庁(帰宅)してしまいました。先ほど触れた通り、これから降水ピークと満潮を迎えていく情報が出ていたにも関わらずです。災害時こそ自治体トップとしての決断とリーダーシップが問われます。市長も副市長も不在という失態をおかしてしまいました。基本的なことですが、状況に応じて副市長と交代して帰宅し休息するなどしながら全体の指揮をとるべきでした。

山川市長と高橋副市長が帰宅した後、中川や綾瀬川が氾濫危険水位をこえ、市内あちこちで冠水や浸水被害が拡大していきました。草加市は、被害が拡大している最中の1時10分になってようやく災害対策本部を立ち上げました。本部長(市長)も副本部長(副市長)も不在のなかで…

なぜこのような対応だったのか?市役所が2日21時55分に「綾瀬川及び伝右川で水位が下がっています」「道路冠水も引いている状態です」と、まるで山場を越えたかのようなお知らせ(台風2号に伴う市の対応について・第2報)を市民に発していたことが多くを物語っているのではないでしょうか。潮位や降水予報が出ていながら危機を察知できなかった現在の草加市役所の危機管理能力に危機を感じます。

 

■対策方針を決める本部会議は台風が去ったあと

2時20分になって山川市長は市役所に戻ってきましたが、その後の対応にも疑問が残ります。

災害対策本部では、まず本部会議を開き「災害応急対策の総合的な基本方針を審議・決定する(地域防災計画より抜粋)」ことが基本です。ところが、今回の第1回本部会議は台風が去ったあとの3日11時頃に開かれました。しかも、本部会議の議事録によると、現場で救助活動にあたっていた消防本部からは誰も参加していません(現時点で理由は確認できず)でした。

 

■遅れすぎた本部設置

下の【表2】は、中川と綾瀬川流域の近隣自治体が災害対策本部を設置した時間です。埼玉県が災害救助法を適用した越谷市と草加市、松伏町は青色で表記しました。草加市以外は、19時から21時の間に災害対策本部を設置していました。

また、鉄道が計画運休をおこなうように、台風被害を未然に防ぐために避難所の設置も先手先手で進めることが昨今の危機管理対応の流れです。手遅れになるくらいなら空振りでも良いんです。草加市でも過去の教訓から早め早めの設置が標準となったはずでした。ところが今回は、雨がピークを迎えた深夜の暗く危険な時間帯に避難所を開設する後手後手の対応でした。

【表2】災害対策本部の設置記録

6月2日(金) 19:00 越谷市、八潮市
  19:30 吉川市
  20:45 三郷市
  21:00 松伏町
6月3日(土) 1:10 草加市

※埼玉県ホームページをもとに作成

 

■休日をとってから復興対応

また、復興などの対応にも課題を残しました。

埼玉県は3日、草加、越谷、松伏に災害救助法を適用しました。災害救助法が適用されると、避難所設置や食料供給、土石など障害物の除去費用など被災者の救助にかかった費用は、埼玉県が支払う(一部国負担)ことになります。

しかし、草加市は災害対策本部に災害救助室を設置することも、もしくは災害対策本部から災害復興対策本部へ移行することもなく、3日14時25分に本部を廃止してしまいました。本部廃止を決めた第2回本部会議(会議録より確認)では、「水防のメンバーのみで対応可能」などの意見が出され、災害救助法や罹災証明に関する議論などもほとんどなく終了してしまいました。

その結果、翌4日(日)は市役所は通常通りの休日となり、翌5日(月)から罹災証明などの各種対応が始まりました。本部機能があれば日曜日も職員を参集させ各種対応にあてるための根拠を持てたにも関わらずです。

また、4日の山川市長の行動は、お祭りなどの市内イベントに参加したため、市役所への登庁は15時10分から1時間ほどでした。高橋副市長は登庁しませんでした。市職員が災害対応にあたられたご苦労には感謝しかありませんが、甚大な被害下でも役所だから日曜はお休みという役所対応では困ります。※ただし、危機管理課職員などは土日返上で対応にあたっていた点を触れておきます。

 

(写真)3日午前3時過ぎの松原記念公園前の様子、佐藤撮影

 

■市議会との信頼関係構築を

次に、山川市長と高橋副市長が災害対応についての事実を市議会ではぐらかした点についてです。

現在開かれている草加市議会6月定例会で、各議員から台風2号の対応について緊急質問が行われました。質問した複数の議員が、2日から3日にかけての市長と副市長の行動を時系列で説明するよう求めましたが、市長も副市長も何時にどこにいたのかをはぐらかし続けたまま答弁を終わらせました。

答弁に違和感を覚えたことから私は後日、議会事務局を通じて公式の資料要求を市長室におこないました。市長と副市長の登庁記録や公用車の運行記録、災害対策本部の議事録などを入手しました。すると、前述の通りの事実が判明しました。

市長も副市長も就任わずか1年目で、住民から選ばれた議員の公式な議会質問に事実を隠すような姿勢が非常にショックでした。二元代表制の問題にもつながりかねません。埼玉県職員だった高橋副市長に至っては、山川市長が大野元裕埼玉県知事に依頼して4月から副市長に就任した方です。就任後はじめての定例市議会でこのような姿勢をとられるようでは、高橋副市長人事に同意した市議会との信頼関係を自ら壊そうとしているようなものです。

災害時の対応は、常に緊急でありすべてが完璧にできるはずはありません。ミスもあります。ですが、失敗や反省点があれば素直に認め、市議会と執行部が一緒になって改善策を考えていくことが自治体運営にとって大切ではないでしょうか。

 

■あらためて知水をすすめる時

草加市の歴史は、水とのたたかいです。私が子どもの頃、松原団地が海のようになっていた記憶が残っています。歴代の市長や執行部、議会、市民が連携して河川改修や放水路の建設、排水ポンプ場の整備などの水害対策を進めてこられました。その結果、近年ではかつてのような被害が圧倒的に減少しました。当時、草加市では水を知って水を治める「知水(ちすい)」が進められました。

草加市の治水が進み水害自体が減少したことで、結果として今回のように市役所が水を知る知水力が後退している現状を痛感しました。

草加市はこれからも水とたたかい、水と共存していくまちです。改めて知水の必要性を認識しました。

 

【記事に必要な文言等を追記しました(2023年6月27日)】東京湾の満潮が綾瀬川水位に与える影響についての記述について、正確には東京湾の満潮時間の1~2時間後に綾瀬川の水位がその影響のピークに達します。しかし、ブログでは東京湾が満潮になると同時に綾瀬川が受ける影響水位もピークに達するような読み取り方もできてしまうため(※2)を追記しました。

コメント (1)
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