しまいびと

独立型ケアマネジャー兼、終活を専門とするファイナンシャルプランナーです。

居宅介護支援事業所のBCPを考える(後編)

2021-10-04 | 介護保険
また前述の話に戻りますが、
ケアマネジャーもサービス事業所も稼働できない場合、
より地域の協力が不可欠になります。

過去の記事で、
私が神戸市東灘区で阪神淡路大震災を体験したことを紹介しました。
大規模災害発生時は、
地域住民同士の助け合いが最も大切になることを痛感しています。

地域に対し、
普段は個人情報の問題があるため、
全ての情報を伝えることは難しいですが、
大規模災害時において、
必要な情報を的確に伝達できる手段を考えておくことも
検討しなければならない重要な課題の一つになります。

また、
災害時の対応において、
サービス事業所のBCPをある程度把握しておくことも
必要になるでしょう。

例えば、
〇訪問介護事業所同士がどのような連携体制を取っているか、
〇デイサービスやショートステイ利用時に災害が発生した場合、
どのタイミングで自宅へ送ることになるのか、
〇デイサービスや在宅リハビリの休止中、
利用者宅への訪問によるなんらかの支援を行ってもらえるか、
〇訪問看護であれば、
電力が必要な医療機器を使用している利用者に対する
停電時の対応方法(自家発電装置を持っているか等)、
〇福祉用具しか利用していない場合、
福祉用具専門相談員に安否確認等を協力してもらえるか、
等、確認しておきたいところです。
加えて、
地域の自治体や社協等の災害支援対策がわからなければ、
現実的なBCPの策定は難しいかもしれません。

また、
大規模災害時は一時的に普通に食料が手に入らなくなります。
阪神淡路大震災のときは、
夜明け前の5時46分に地震が発生し、
夜が明けた7時過ぎにコンビニを2件回りましたが、
すでに食料、水、乾電池等は一切残っていませんでした。
数日で自衛隊の食料支援等が届きますが、
市場で買い物ができるようになるまでにはしばらく時間が掛るでしょう。
ヘルパーの当面のサービスは、
必要な食料を自治体や自衛隊に要請⇒それを受け取り利用者に届ける、
というような内容になるかもしれません。

またケアマネジャーが、
服薬等最新の情報を把握しておくことも大切ですが、
ケアマネジャーやサービス事業所が稼働できない場合は、
利用者本人の居場所に必要な情報があることが求められます。

例えば一つの保険証ケースの中に、
〇被保険者証類
〇現在掛かっている医療機関の全ての診察券
〇薬手帳
〇ケアマネジャーの名刺
等を収納しておくよう促し、
地域や救助機関に周知しておくなども有効な手段かもしれません。
冷蔵庫の中に個人情報を書いたカプセルを入れておく、
といった取り組みを行っている地域もあります。

と、
ここまでいろいろ述べてきましたが、
要するに居宅介護支援事業所のBCPは、
『災害時に単にケアマネジャーまたはその代替え機関が、
居宅介護支援業務を再開できるようになること、
を考えるだけでは不十分で、
安否確認、救助要請、最低限必要なサービスを導入する方法等、
まで考えておかなければならない。』
ということです。

ということは結局、
各サービス事業所のBCPや、
自治体や社協の災害対策等を把握しておかなければ、
イメージがつかめないと思います。

となるとドンドンBCP策定のハードルは上がり、
イチ事業所だけで
どうこうできるような話ではないような気がします。
きっといろいろな機関と話し合いを重ねながら、
独自のBCPを作り上げていく作業が
大切になるのではないでしょうか。

とりあえず私の所属するケアマネ連絡会では、
11月にBCPの研修を行います。

一度の研修だけで理解できるものではなく、
今後も研修の継続等は不可欠になるでしょう。
国が定めた経過措置の3年間は、
実はそれぐらい必ず必要になる期間なのかもしれません。

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