しまいびと

独立型ケアマネジャー兼、終活を専門とするファイナンシャルプランナーです。

小規模宅地等の減額特例は何がなんでも自宅というわけではない

2023-07-03 | 相続・遺言
いきなり事例から入ります。
介護保険を利用中のAさん(女性・90歳)は、
一人娘のCさん(65歳)と二人暮らしです。
Aさんの夫Bさんはすでに他界しています。

AさんとCさんは、
Aさん名義の戸建て住宅に住んでいます。
50坪の敷地に立派な建物が立っており、
長年家族で暮らしてきました。

Aさんの資産はこの家と、
預貯金が1000万円ほどあります。
この家の相続税評価額は、
建物部分が1000万円で、
土地部分は5000万円です。
娘のCさんは預貯金や資産等は持っていません。

さて、
Aさんが亡くなった場合、
遺言書がない場合はCさんが全財産を相続します。
現金:1000万円
建物:1000万円
土地:5000万円
合計:7000万円

そこから基礎控除3600万円を差し引いた
3400円に対し相続税480万円が掛かることになります。
つまり、
相続した現金1000万円のうち半分近くは、
相続税でなくなってしまうということです。

そこで小規模宅地等の特例を検討します。
適用されれば
土地5000万円の評価額が8割減額され、
1000万円となります。

つまり、
現金:1000万円
建物:1000万円
土地:1000万円
合計:3000万円
となると、
全て合わせて3600万円の基礎控除内に収まりますので、
Cさんは相続税を支払わなくて済むということになります。

さて、
この小規模宅地等の特例を適用させるには
いくつかの条件があります。
といってもかなり複雑な制度ですので、
今回はこの事例のようなケースのみ解説します。

亡くなった人が住んでいた自宅の土地
(特定居住用宅地等)を、
配偶者や同居親族等が相続し一定の条件を満たせば、
土地面積330㎡までの部分については、
その評価額が80%減額される。
といった内容です。

この事例の場合は、
Aさんが住んでいた自宅を、
同居していたCさんが相続し、
そのまま所有や居住を続ける場合、
土地面積は約165㎡(50坪)のため、
土地全てにこの特例が適用となります。

さて、
では自宅で暮らしてきたAさんが、
在宅では十分な介護が受けられなくなり、
最終的に老人ホームに入所することになった場合は、
この特例はどうなるのでしょうか?
要件の中にある、
『亡くなっていた人が住んでいた自宅の土地』という
根本的な部分が変わってしまいます。

実は、
平成25年まではこの場合は、
小規模宅地等の特例は適用できませんでした。
ただ、
法改正により平成26年1月1日以降の相続については、
①被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に
規定する要介護認定等を受けていたこと
及び、
②その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に
入居又は入所していたことという要件を満たすときに、
その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで
居住の用に供されていた宅地等については、
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に当たること、
とされました。

この改正のことをあまりよく知らず、
なんとなく古い情報をもとに、
在宅介護が限界であるにも関わらず、
高齢者本人を老人ホームに入所させずに、
自宅に住み続けてもらおうと考える家族の方もいるようです。
節税のためだけに
本人にとって十分な介護が受けられない環境を継続するのは
本末転倒と言えます。

相続はとても複雑ですが、
様々な特例もありますので、
迷われたら一人で考え込まずに専門家に相談しましょう。

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