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のしてんてんハッピーアート

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セリナの物語10

2007-08-19 | 小説 セリナ(短編)

私は地下道の一角を意識から振り切るように、信号が青に変わるや国道の交差点を足早に渡りはじめた。遅い時間の国道を走る車は少なかった。
横断歩道を半分渡り切ったときだった。

パァパァパァパァアー!!

突然クラクションが鳴って、私の左手から赤いスポーツカーが飛び出してきた。
私は身がすくんで立ち尽くした。
交差点をスピードも緩めず、赤信号を突っ切ろうとした車が私に襲い掛かった。
グワャー・・・、意味不明の言葉と悲鳴を同時に上げて身をよじった私の数センチ前を赤いかたまりが疾走した。

ギギギギッッ急ブレーキの音がして、激しくスリップした車が止まった。
同時に運転席から若い男が出てきて怒鳴った。
「バカ野郎!死にたいんかおっさん!」

「信号無視のお前が言うことか!」
私は腹の中で叫び返し、男を無視して横断歩道を渡った。
「アホンダラ!」男はそう言捨てて立ち去った。

わずか数秒の出来事に私の肝はまだ冷え切っていた。

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