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のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗(新スケール号の冒険)26

2022-09-22 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

(16)-1

 

「ゴロニャーン」

バリオン星の王宮から金色の猫が鳴き声と共に飛び立ちました。

前足で空をかき、後ろ足を大きく蹴りだすと猫は軽々と空中を走り続けるのです。

王宮の前庭に集まった民衆が手を振っています。そびえ立つ物見の塔を巻き込むようにスケール号が

上昇すると、物見台にはバリオン王国の主なる重臣たちが幾重にも並んでいるのが見えます。

スケール号が正面にやってくると、皆が一斉に右手を左肩に置いて出陣の敬礼をしました。

スケール号はくるりと宙返りをしてそのまま空高く舞い上がったのです。

 

一方、バリオンの軍船が隊列を組んで飛び立ちました。

空をおおうように浮かぶ巨大な猫が反乱軍に攻撃されました。その猫を救うべく王様が発射した

黄金の槍の一撃で反乱軍の艦隊は壊滅。かろうじて残った船はほうほうの体で逃げ帰ったのでしょう。

その後バリオンの空は平静を取り戻したのです。黄金の槍の威力はさることながら、あっけない

反乱軍の崩れ方に安堵したものの、タウ将軍はここぞとばかりに強硬策を奏上したのです。

「ストレンジの反乱軍がバリオンに攻めてきた、この事実を見過ごすことはできません。第一波はあっけなく王の槍によって撃退されましたが、ここで安心してはなりません。この機を逃してはならないのです、王様。ここはすかさず戦線をストレンジに押し戻し一気に反乱軍を鎮圧して王宮を取り戻しましょうぞ。」

バリオン軍の全権を賜ったタウ将軍は出撃のためにその日のうちに兵舎に戻りました。

兵を出すのは今しかない。最強の軍を編成し、この機を利用して兵を出すのは、

総司令官としての誇りでもあったのです。

軍備が整い再び王の間に謁見したタウ将軍は青いマントをまとい、太陽の飾り物のついた杖を

携えていました。作戦を指揮官たちに伝えるための、バリオン軍総司令官の軍杖なのです。

互いに姿が見えなくても、軍杖が意志を伝えてくれるのです。

「タウ将軍、引き合わせたい者がいる。」

そう言って王様がスケール号とその乗組員たちを王の間に招き入れました。

「この者たちは?」

タウ将軍は怪訝な面持ちで奇妙な一団を見ました。白い安物のコートを着た年寄。

揺りかごの赤ちゃんとそれを取り囲むぬいぐるみのような動物たち? 

 中でも目を引くのが金色の猫でした。

「あの折、反乱軍に襲われた猫たちだ。」

王様は意地悪そうに笑って言いました。

「あの折?あの時の、空に現われた巨大な怪物のことですか・・」

「まあ、そういうことだ。」

「しかしあれは、反乱軍の攻撃で死にましたぞ・・」

タウ将軍の驚く顔を面白がって王様はその後のいきさつを話して聞かせました。

王様の話なので信じない訳には行きませんが、タウ将軍は半信半疑で話が先に進みませんでした。

そこでスケール号が自分の身体を王の間が一杯に成るほど大きくしてみせました。

タウ将軍が驚いたのは言うまでもありません。

スケール号が静かにしゃがみ込むと、ゆっくりあごを床に付けました。

口髭の先が床に付いてしまって、木の幹のように登って行けそうです。するとその額が開いて階段が

降りてきたではありませんか。博士が丁重に手を差し伸べ王様とタウ将軍をスケール号に案内しました。

一見は百聞に如かず。そう言って博士はのぞみ赤ちゃんの姿を見てもらおうと王様に提案していたのです。

スケール号が巷の猫の大きさに戻るとそのまま王の間を走り去り、天空に身を躍らせると、

グングンと身体を拡大しはじめました。スケール号はやって来た道筋を一気にさかのぼって行った

のです。スケール号はのぞみ赤ちゃんの宇宙空間を原子の大きさからハエの大きさにまで拡大して

きたのです。艦長の命令はますます冴えわたり、その移動に時間がかかりません。艦長が目的地を

思い描くだけで瞬間に移動できるようになりました。ジイジが長い間掛かって習得した技術を

北斗はあっという間に吸収していきます。

素粒子星のつくる無数の銀河を越えると、銀河は光を放つ樹林滞のような細胞となり、

スケール号はその隙間をすり抜け、サンゴのような岩肌にある無数の洞穴を潜り抜け、

やがて泉の底に顔を出すのです。汗の泉を上昇して水面を出ると、もうその上は大きな空が広がって

います。その空に向かって前足をかき後ろ足をけると、スケール号は空に舞い上がりました。

泉はみるみる小さくなり泉の点在する荒野の広がる大地に変って行きます。スケール号がハエの

大きさにまで膨らむと、その大地の全体像が見え、一つのかたまりだったということが分かるのです。

それは痛々しい赤ちゃんの姿でした。

保育器の内側から見るのぞみ赤ちゃんは、スケール号が出発したときより小さく、

赤い皮膚は今にも破れそうに見えました。それを見た王様とタウ将軍はしばらく言葉がありま

せんでした。自分達の目の前で起こっていることがあまりにも異常で考えがついていけないのです。

「あの痛々しい赤子が、バリオン系の星々が集まって出来ている宇宙の姿だというのか。」

王様がうなるようにつぶやきます。

「信じていただくしかありません。王様、これが真実なのです。」

博士が厳粛に答えました。

「・・・・」

「しかし王様、あの子は痛々しくとも健気に生きております。それは王様の強さのおかげなのです。あの子を助けられるのも王様なのです。」

「あの子を私が守っていると。」

「はい王様。しかし時間がありません。」

博士はのぞみ赤ちゃんの衰弱した様子を見て、焦りを隠せませんでした。

これはもう一刻の猶予もありません。

「艦長、バリオンに戻ろう。」

「はふはふ ウっキャー」

こうしてスケール号は身体のスケールを今度は逆に縮小させながらのぞみ赤ちゃんの額に飛び移り、

再びバリオン星に戻ったのです。

 

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (桂蓮)
2022-09-22 02:20:11
話のやりとりがポンポンと弾んで
面白いです。
それぞれ個性が濃くてかぶることがないですね。

ところで、昨日第2号が届きました。
早速、読んでイメージを膨らましてみました。
色があって、
きれいな仕上げだったので
絵本の感じが本格的な感じでした。

また、読もうと思ってます。
読むたびに新しい発見があって
それも面白いですね。

本当に縁って不思議だなーと思っています。
その2冊の絵本の過去を辿ると
数え切れない『縁』の糸が絡まってますね。
複雑に織り交ぜた縁ですが、
あの2冊で、形が浮き上がって
一つの模様になった感じです。

縁はなる、のも多いでしょうけど、
縁に成せる、のもあるねーと思ったりしています。
予め、ありがとうございました。
返信する
桂蓮様 (のしてんてん)
2022-09-23 16:47:04
スケール号の冒険は、これから面白くなります^よ^

ところで思ったより早く着きましたね。あと一週間後かと思っていました。

縁というと、ある日、お会いすることが出来た時、あなたのブログと全く違和感のない姿を嬉しく思ったことがおおきいですね。

具体的に言葉が出ませんが、こうして時間あるときに、交流できるブログのおかげで、成長できたのだと思います。

これからもよろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (桂蓮)
2022-09-23 22:59:41
その面で言えば、初めて対面した時に
もう何百年も知り合っていた感がはっきりありましたね。
初めて会ったのに、もう既に馴染んでいるみたいな感じでしたね。
肌に合う、感じでしたね。

のしてんてんさんはイメージしたオーラーそのものを持ってましたね。

素朴な身振り
謙虚すぎない受け入り方
過剰も過少もない言い方
正直な反応
挨拶の仕方にも嘘や偽りが一切無い
体でものを言う人の共通性を持ってましたね。

正直だ、それが初めての初印象でしたね。
返信する
桂蓮様 (のしてんてん)
2022-09-24 20:10:51
確かに、あの対面の自然さは不思議でした。私の思ったままのあなたが現われたのですから。
そして思ったのです。
桂蓮様のブログは、桂蓮様の真実をほぼ間違いなく表現されていたのだと。

見栄と張ったりの多い中で、この人はとても純真なのだと感じましたよ。

でもまあ、褒め合うのはこのくらいにし^て^、今回お送りした絵本は、私の半世紀にわたる心の探求が自然に形を成したものです。

言葉による認識と、絵画による直観、この二足歩行を長く続けてきましたが、この二つの道が初めて一つにまとまってくれたのです。

しかも子供に語りかけられるほど、自分の思いを噛み砕いてまとめることが出来たのが何より嬉しかったのです。
それで迷いなくお送りしたものです。

そこに描き出した世界観は、五次元思考によってイメージ出来る世界観です。
もちろん五次元思考を理解しなければ見ることが出来ない世界観というのではありません。その逆で、五次元など考えなくてもその世界観は存在して誰にでも認識する事が出来ます。
そしてその認識世界が、五次元(スケールの概念)の存在に気付かせてくれるというものです。

いえいえ、こんな前置きなど気に留めずに、まず桂蓮様の、生のままの心で読んでみてください。
そしてなにか感じて頂ければ嬉しいことだと思います。
返信する

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