
千歳は私の想像とは違って、雪が少ないと思った。
至る所に黒い土が顔を見せ、道はぬかるんでいた。
それでも地上の空気は凛と張り詰め、その冷気が私の頬を引き締めた。私は里依子の面影を胸に、表皮よりも心に緊張を覚えながらロビーに掲示された空港の案内板を眺めたりしていた。
鈴の音のような声が私の名を呼んだ。振り返るとそこに里依子が立っていた。
彼女は仕事を抜け出して来たのだろう、体によく合った紺色の制服姿をしていた。それは私の思い描いた里依子とは少し違っていて、身の引き締まる思いを抱かせた。
ふと私は、里依子は少しやせたのではないかと思った。あるいはそれは身を包んだ制服のせいなのかも知れないと思い直したりしていると、里依子は笑いかけて大事そうに抱えていた一通の封筒を私に差し出した。



※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます