きつねの戯言

銀狐です。不定期で趣味の小説・楽描きイラストなど描いています。日常垢「次郎丸かなみの有味湿潤な日常生活」ではエッセイも。

昔話『絵姿女房』のアレンジ小説の後書き解説 2018.07.28

2018-07-29 04:08:31 | 日記
 恒例の後書き解説。
昨日一日で書いたアレンジ小説について。

 きっかけはとある同級生の誕生祝いメッセージの返信から。
その同級生には以前とある事件をネタに小説のリクエストを頂いたことがあり、その話のついでに冗談半分で「日本昔話の『絵姿女房』のアレンジ小説書いてみて」という流れになった。

 タイトルは知ってるけど、どんな話だったかはわからなかったので、ネットであらすじを検索してみたら、諸説あります、という感じ。
大筋は同じなのだが、行商人に化けて売りに来るものが桃だったりリンゴだったりほうろくだったりといろいろあるし、妻が拉致られてから夫が行商人に化けてやって来るまでの期間も数日から数ヶ月、数年レベルと長かったり短かったりいろいろ。

 ポイントを箇条書きにして眺めるうち、何も行商人である必要性はないことに気づく。
要は笑わない妻が笑顔になるような状況をもたらす変装をして来れば良いだけ。
なので比較的最初の段階で旅芸人という設定は決っていた。

 ひっかかったのは、着物を交換して入れ替わったことになぜ家来たちは気づかなかったのか、ということ。
それをクリアするためには夫と領主は似ていなければならない。
それについては同級生と「他人の空似か、先代の隠し子で腹違いの兄弟か、縁起が悪いと捨てられ生き別れた双子か」なんて悪のりをしたので、その中で一番しっくり来たのが腹違いの兄弟という設定。

 最初は妻が元旅芸人でその衣裳という案もあったにはあったが、素人の農夫が突然短期間で芸を身につけるのは難しかろうということで、夫の母が元旅芸人であればその血筋で比較的簡単にマスター可能であろうということから隠されていた母の形見を妻が見つけていたことにした。

 そうすると旅芸人の母と先代領主の間にできた隠し子が夫となり、必然的に夫の父は妻とお腹の子供を引き受けたということになり、設定上は繋がった。

 とはいえ、最初から全てが決っていた訳ではなく、漠然と冒頭で農夫はオタクにしようと思っていたのと、『嫁の顔が好き過ぎる』と公言している芸人さん夫婦をイメージしながら序盤はややコミカルなテイストで書き進めた。

 領主と家来が登場するシーンで演出上領民の生活や生命を軽んじるヤツという設定にしたが、おかげでラストを締めくくる時に、『夫婦仲良く暮らしましたとさ』だけではなく、たまたま後付けで閃いた隠し子設定とも相まって、贅沢でクズの前領主と対比して質素な新領主と才色兼備の妻という構図が出来上がったのは予期せぬ効果で、前領主のクズエピソードがはからずも伏線になってうまく機能した。

 ほんのお遊びのつもりがガッツリ本気になってしまったが、最初はそんなつもりではなかったので、結局登場人物には全く名前をつけていなかった。
ちゃんと名づけるべきだったかなあ、とも思ったが、昔話では名前がないのもよくあることなのでそれで良いか、ということにしておこう。

 良い頭の体操をさせてもらい、お題をくれた同級生には感謝と同時に、完成したのが深夜なのにもかかわらず、早速読んで感想を述べると伴に公開の許可を頂いて本当に有り難いやら申し訳ないやら。
 いつも小説完成後は映像化の妄想でキャスティングを論じるのだが、それもまた一つの楽しみではある。

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