ISO成功法

ISOと継続的改善を両立させよう。ISOは継続的改善のための、基盤整備に役立つ。基盤整備と継続的改善のコツを整理したい。

1. 「人の振り見てわが振り直せ」

2005-02-05 | 高シナジー経営
自分で気がついて直したいと思うことは、直すことができる。直せないのは、問題解決の方法を知らないことよりも、問題に気がついてないことが多い。組織における問題解決を考えると、より上位者になるほど、解決すべき問題も大きいし、問題の影響も将来にわたる。経営者は、組織の将来に責任があるから、問題を発見して予防できなければならない。「人の振り見てわが振り直せ」ができて一人前といえる。いくつか例をあげる。

(1)ワンマン経営の限界
ドラッカーはあの歴史的名著「現代の経営」のなかで、マネジメントの失敗事例としてフォードの例を取り上げている。1920年代の初めのフォードは3分の2の市場シェアをもっていたが、15年後の第二次大戦勃発の頃にシェアは5分の1にまで落ち込んだ。ドラッカーは当時の経済界で評判になったフォードの「独断的なワンマン経営と秘密警察的な人事管理」について、「企業における人間組織についての検討は、たとえ人数は多くとも、一般従業員とその仕事に関わる問題ではなく、経営管理者のマネジメントに関わる問題から着手することが必要である。」と述べてイエスマンを自分の周りに集め、経営管理者層に対して何も対策を講じなかったヘンリー.フォードの誤りを指摘している。
 また、ドラッカーは、このような問題は大企業だけでなく、むしろワンマン社長とその取り巻きによって経営される中小企業に多いことをあげている。そのような企業では、「最低の士気」「最悪のコミュニケーション」また多くの仕事を掛け持ちするための「最悪の組織構造」が見られるという。そして何よりも問題なのは、一般の従業員の生産性や効率化だけに対策をとり「経営管理者の育成ができてない」ことを指摘している。目標を達成すること、そのための障害や問題点を解決するため、経営者や管理者の役割が大切である。こんな当たり前のことが理解されてないことが多い。

(2)教育に投資する文化の火を消すな
人材育成について別の観点から考えたい。経済学者J.K.ガルブレイスは、第二次世界大戦以降の日本における経済発展の原因として次ぎのことをあげている。
「人的資本に対する投資に対して、割り切った見解が日本人の経済思想に内在している。このことから生まれてくるのが、日本の高度に有能な労働力であり、技術や経営の手腕を持つ豊富な人材である。」
ガルブレイスの分析によれば、第二次世界大戦以降の日本の経済発展は人材育成のために教育に投資を惜しまない文化がつくったということである。
 最近、人材を金で買う考えが多くなり、地道な教育で人を育てる考えが少なくなっている。終身雇用の体制が変わったからというのがその理由である。終身雇用の是非は別の機会に譲るとしても、人を使い捨てのように扱うのは誤りである。長い目で育てるから、人材は人財になる。継続的改善は継続的教育がなければ成功しないことを銘ずべきである。

(3)「ISOは両刃の剣」 官僚的管理は「カイシャ」を潰す
 日本的経営を「カイシャ」という本にまとめたJ.C.アベグレンは次のように述べている。「カイシャにとって危ないのは研究費の金額ではなくてむしろ、官僚主義的な管理体制である。独創性を殺し、新しいアイデアや製品の活発な開発を妨げる封建的体制がいちばん危険だ。」
 官僚的体制の問題について説明は要らないだろう。引用が多くなるが、ドラッカーが実にうまい表現をしている。「自己管理によるマネジメントを行うには、報告、手続き、書式について、根本的再検討が必要となる。報告や手続きは道具である。しかし、これらのものほど誤って使われ、害をもたらしうる道具もない。報告や手続きは、誤った使い方をされるとき、もはや道具ではなく、悪意のある主人となる。」
「報連相」という言葉があるらしい。これを強要する経営者の多くは思い違いしている。「悪意のある主人」が、報告や手続きを上からの管理に使うとき、恐怖の道具になる。またそれをすり抜け自分に責任の来ないように万全の手続きを考えることで、官僚的システムが作られる。文書化を要求するISOの危険性はここにある。ISOを「悪意のある主人」と「官僚的たらいまわし体制」の温床にするな。標準化・文書化という大義が善意で人のいい日本のものづくりの文化を壊していないか考える必要がある。「ISOは両刃の剣」といわれる所以である。
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