福島原子力発電所の事故が引き起こした放射性物質による汚染があちこちで問題になっている。ナノ粒子が水中の放射性セシウムや放射性ヨウ素を容易に取り除き得るというニュースが目についた。
オーストラリアのクインズランド大学のZhu教授が見つけたもので、酸化チタンのナノファイバーやナノチューブが汚染水中のセシウムイオンを吸着するというものである。ナノファイバーやナノチューブが局所的に構造変化を起こしセシウムイオンをしっかりとつかまえてしまうようである。1グラムの酸化チタンで1トンの水が処理出来るという。また、酸化チタンの表面を酸化銀でコートするとヨウ素を吸着出来るという。
現在福島原子力発電所では、分子篩と呼ばれる膜を通して濾過すること並びに吸着剤を用いる手法がとられている。Zhu教授は、ナノ粒子を用いるほうが現存する吸着剤を用いるよりはるかに性能が高いと述べているが、具体的な数値は明らかでない。
セシウムイオンはナトリウムイオンと同じように振る舞う。海水の塩分を取り去ることができれば飲料水や農業用水などに使い道があるが、福島原子力発電所で用いられているような膜を通す方法では過大な電力が必要である。そのため、ナノテクノロジーに期待がかかっている(10/1参照)。計算機シミュレーションでは、海水をカーボンナノのチューブやグラフェンを通すことによって、塩分が取り除けることが示されている。また、現在の膜を通す手法にカーボンナノチューブを併用すると、効率が良くなるという実験結果もある。
現在の福島の問題は、莫大な量の汚染した土の保管場所である。セシウムもストロンチウムも共に水溶液をつくりやすい元素である。土から放射性セシウムやストロンチウムを除去する方法が開発出来ないものであろうか。
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