ナノスケールの部品を集めて集積回路を作り上げようとするナノエレクトロニクス(8/18,10/24参照)では、トランジスタ、メモリ、キャパシター、導線など種々の部品が必要である。スイッチもその例外ではない。研究者たちはどのようにすれば性能のよいスイッチがつくれるか模索中である。
アメリカのピッツバーグ大学の研究者たちは、面白いスイッチを見つけ出した。この研究には、中国の研究者たちが理論の面で協力している。このスイッチは、3個のスカンジナビウム原子と1個の窒素原子からなる分子が中にはいった60個の炭素原子からなるフラーレン(9/8参照)を用いる。この分子は平面状に配置するが、フラーレンに電子を注入すると分子が回転する。この回転によってフラーレンの電気伝導度が変化する。これをスイッチとして用いることが出来る。
もっと小さいスイッチも開発されている。ドイツのミュンヘン工科大学の研究者たちは、テトラフェニルポルフィリンと呼ばれる分子を銀板上に乗せたものをスイッチとして用いた。この分子の中央に空間があってその中に1個の水素原子を取り込むことが出来る。トンネル顕微鏡の針の先から電子を注入するとこの水素が位置を変える。これをスイッチとして利用出来そうであるという。
イギリスのサウザンプトン大学と日本の物質材料研究機構の研究者は、ナノスケールのスイッチを開発中であるというが、その動作原理は明確にされていない。
先週のテレビ番組で田原総一郎氏(8/8参照)が今回の原発事故を契機に、技術に立脚した現代文明を見直すべきだと述べた。しかしながら、私は今回の原発事故特に放射性物質のばらまきは、’技術’を無視した東京電力と日本政府ならびに関与した科学者・技術者の責任であると思う。津波が発生する可能性がある地域で非常電源が地下に設置されているという非常識が原因である(8/14-19参照)。人類がこれまでのような高度な生活様式を保つことが出来なくなるかもしれないが、この地球上に多数の人間が生存し続けるためには、エネルギー源の確保とエネルギーの有効利用に果たす科学技術の役割は甚大であろう。
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