ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

原発安全対策を早急に

2012-11-28 | 報道/ニュース

ワシントンポスト誌によると、アメリカの科学者が福島原発事故調査のため来日し、原子炉に何が起ころうとも大事故に至らないよう安全対策を策定しようとしている。原子力規制委員会委員の更田氏は"規制づくりに忙しく安全対策を議論する暇がない"というが、何時地震が起こっても不思議ではなくしかも次々と原発が再稼働されようとしている日本では、順序が逆ではなかろか。日本の原子炉専門家は原子力ムラの温泉にでも浸っているのであろうか。さらに9月25日参照。


おわびと科学技術政策について一言

2012-11-02 | 報道/ニュース

ブログ"ナノテクノロジーニュース"を続けてきましたが、当分の間専門的な仕事に戻ろうと決心しました。そういうわけで約1年間ブログの執筆を休ませていただきます。

さて、半導体に続いてエレクトロニクスとかつて日本が誇った産業が危機に立たされつつあるようです。この原因は開発途上国が安価な製品を供給するからであると考えられていますが、日本の科学技術政策の貧困にも起因しているかのように思えます。科学技術政策とは、基礎科学の進行と、さらにグローバルな基礎科学の進行を的確に把握した上での製品化につながる新技術開発の推進を目指すべきです。特に後者は経済発展ならびに雇用促進に密接に関係しているはずです。高度成長期には通産省がアメリカに追い越すという目標の元、企業を援助しました。1980年代末以降この機能が全く失われています。これがGNPの増加が停止した理由とも考えられます。これまでブログで科学技術政策、特に日本とアメリカとの違いについて述べてきました(8/18-9/4/2011,9/18-20/11,9/29/11,10/15/11,12/6/11,12/30,31/11)。下に要点をまとめておきます。

(1)日本の総合科学技術会議はほとんど機能していません。科学技術基本政策の作成は文部科学省に丸投げ、いくつかのサブグループはすべていずれかの省庁に属しています。アメリカの大統領直属の科学技術に関する諮問機関PCASTと比べものになりません。基礎科学で見いだされたブレークスルーが速やかに生産活動に導かれるよう体制づくりが必要です。省庁縦割り行政でしかも独立法人が介在する現状を打破する必要があります。
(2) 基礎研究で得た成果を商品化し経済発展ならびに雇用の促進に貢献するのは企業です。どのような分野で大企業やベンチャー企業の開発研究ならびに生産活動を支援するかは国策ですから、この方針は国が決めるべきです。これは経済産業省や厚生労働省の仕事だと思います。現在日本では独立法人NEDOが担当しているようですが、その機能を果たしているのか疑問です。
(3) 最近の科学技術研究はほとんどグループ研究です。しかるに文部科学省や日本学術振興会の基礎研究に対する研究費援助は旧態依然とした個人向けです。研究グループの特定の研究計画を支援し、その成果を追随するという体制を確立すべきです。
(4) ノーベル賞受賞研究を達成した年代のピークは40歳程度だそうです。30代後半の優秀な研究者がグループを組織して研究に取り組めるような体制が必要です。iPS細胞の山中教授はこの数少ない成功例だと思います。ちなみにアメリカの大きな大学では準教授が就任すると数千万円以上の経費が与えられ、グループを構成し研究室を立ち上げているようです。
(5) 基礎研究のテーマに文部科学省が方向付けをすべきではありません。日本の研究費の配分方式はトップダウン方式です。アメリカのボトムアップ方式を見習うべきです。また文部科学省の評価により特定の大学に多額の研究費を援助するシステムがあります。このような体制のもとでは大学や研究所のスタッフならびに研究者は官僚に頭が上がりません。原子力学会が原子力ムラにはまり込んでいる(9/25参照)のもこのような理由によるのでしょうか。
(6) 最近論文の評価に被引用数が用いられます。日本は先進国の中では最低です。上位20位にも入りません。これは若手が満足すべき条件で研究を遂行できないからだとも考えられます。

アメリカの半導体産業やエレクトロニクス産業は日本などに追いつかれ衰退しています。しかしITで世界を制覇し、さらにナノテクノロジーでもトップに出ようとしています。日本が技術先進国で有り続けるには、簡単に追随できない新技術を開発し続けることが必要でしょう。