以前に説明したように(10/2参照)、太陽光発電では、光のエネルギーで半導体の価電子帯の電子を伝導体へ移す。このように、電子を低いエネルギーから高いエネルギーを移すことを励起という。この高いエネルギーにある電子が負荷を通って半導体に戻ってくる。このことによって、光エネルギーが仕事をした、すなわち有効に使われたことになる。
太陽光には種々の色すなわちエネルギーを持ったものが含まれている(10/2参照)。太陽光発電の効率を上げるには、色々なエネルギーの光を吸収して励起をおこす必要がある。シリコンの場合はこれがうまくいかず、そのため効率が31%以上にはならない。
さて、自然界での太陽光利用の典型例は光合成である。すなわち、植物の中で炭酸ガスと水とから砂糖が作られている。光合成では、まずクロモフォアと呼ばれる分子が光を吸収して励起される。このエネルギーが合成をつかさどる分子集団に移る。光合成では、光エネルギーがクロモフォアの励起エネルギーに変換される効率が95%より大きいことが知られている。しかも、励起エネルギーが反応を起こす分子集団に0.1ナノ秒以下の短時間で移ることが明らかになっている。どうしてこんなに高い効率が得られるかまた反応が速やかに起こるかはまだ明らかにされていない。
一つ明らかにされていることは、この現象に量子的干渉効果が作用していることである。光を平行に並んだ二つのスリットを通すと干渉効果が起こって濃淡の縞が生じることがよく知られている。このことは、クロモフォアの配置がエネルギー効率を上げる一つの因子であることを示しているようである。この現象の権威カリフォルニア大学のフレミング教授は、人工的な光合成を実用化するのに20年程度必要であるという。
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