細胞膜を破壊することなく細胞内部を観察する内視鏡の作成が、ナノワイヤーやナノチューブを用いて試作されている。最近、アメリカの国立バークレイ研究所の研究者たちは、尖らせた光ファイバーに酸化チタンのナノワイヤーを接続し、優れた性能を持つ内視鏡を作成した。細胞の中で発生した光が、光ファイバーから酸化チタンを通って伝搬される*。この光を観測することによって、細胞の中の生理現象を観察しようというものである。ここでは、酸化チタンのナノワイヤーが光の波の導波管の役目を果たしている。
*http://www.nanowerk.com/news/newsid=23805.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29
昨日フォートニック結晶が導波管として使えることを述べた。酸化チタンなどの半導体や金属のナノワイヤーも導波管として使えることを述べておこう。半導体に光が入射すると電子と正孔(9/27参照)が生じる。電子と正孔とが結合すると両者とも消滅するが、電子と正孔とがクーロン力で結びついたものはエネルギーを持っていて、励起子と呼ばれる。励起子の持つエネルギーがナノワイヤーの中を伝搬する。また、金属のナノワイヤーでは、光によって発生したプラズマ振動(プラズモン,11/17,18参照)のエネルギーが伝搬する。
これまで、細胞の観察には光学顕微鏡が使われて来た。しかしながら、光学顕微鏡では光の波長(400-600ナノメーター)より小さいものを観測することは出来ない。電子顕微鏡はさらに小さいもの観測出来るが、観測に使われる電子が照射されると細胞が変化してしまう。細胞内の生理現象の観察にはナノテクノロジーの助けが必要である。
この内視鏡を注入しても細胞が死なないことや外から注入した光が十分収束していることなどが確認されている。細胞の中の特定の場所から発せられる光が観測出来るようになるであろう。今後の発展が期待される。
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