ナノテクノロジーニュース

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電流測定の画期的進歩: 電子1個ずつの測定が可能に

2012-07-17 | 報道/ニュース

電流とは、通常実に多くの電子の流れである。1アンペアの電流は毎秒約10の19乗個の電子の流れを意味する。電流を測定するには、電流の周りに発生する磁界を利用するのが普通である。

アメリカのカリフォルニア大学などの研究グループは、電子の流れを1個ずつ測定する手法を開発した。電子1個の動きを観察する手法はこれまでにも知られていたが(2/28,3/23参照)、新しく開発された手法では1秒間に10兆個程度の電子を一つ一つ流すことが出来るという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=25835.php#.UAEUGW1qIEs.google

ここで電子ポンプと呼ばれている方法は、半導体表面に約100ナノメーター離して2本の金属のゲート電極を付着させる。ゲート電極の間に半導体量子ドットをおき(下図参照)、ゲート電極の左側から右側への電子の移動が量子ドットを経てしか起こらないようにしておく。電子を1個ずつ移すためには、右側のゲート電極に高い負の電圧を加えておき、その間に左側から数個の電子を量子ドットへ移す。しばらくの間、左側のゲート電極に適当な大きさの負の電圧を加え量子ドットに移された電子の内1個を残して左側の半導体に戻るようにする。量子ドットに2個以上の電子が入ると、電子の反発力によって左側のゲート電極に加えられた電圧を乗り越えて元に戻すことが出来る。量子ドットに残された電子が1個になったころを見計らって、左側のゲート電圧を高くし右側のゲート電圧を下げると、1個の電子が左側から右側へ移ることになる。左右のゲート電極にこのような電圧を繰り返し加えることにより、左側から右側へ電流を流すことが出来る。

この実験は難しい実験で極めて低い温度で行なう必要がある。電子の運動が熱エネルギー(HP2.1A7参照)の影響を受けるからだ。したがって、さしあたって何かに応用されるという見込みはなさそうだ。しかしながら、ナノ粒子を用いると今まで成し得なかったことが可能になる例として紹介した。

          


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