アメリカにはナショナルナノテクノロジーイニシアティブ(NNI,9/2,10/22参照) という省庁を貫いた組織がナノテクノロジーに関する予算配分などを取り仕切っている。大統領直属の科学技術諮問委員会(PCAST8/20,9/2参照)が昨年3月にNNIに勧告を行った。この勧告に対するNNIのメンバーへのヒアリングが最近行われた。その様子はビデオで、また議事録で読み取れる*。
*http://www.tvworldwide.com/events/pcast/111102/)
http://www.whitehouse.gov/administration/eop/ostp/pcast/meetings/past
PCASTの勧告の主なものは、(1)過去10年間140億ドルの投資にかかわらず製品化されたものが少なすぎる、(2)環境、健康、安全に重点を置くべきである、などである。NNIの各省庁代表する担当者がヒアリングを受けている。官民の連携を緊密にすることや技術トランスファー(11/14参照)の効率を上げることなどが議論されている。技術トランスファーは最近しばしば話題に上る言葉で、基礎研究で開発された技術が生産活動に関与する企業等に伝達されること意味する。
いずれにしても、科学技術政策がオープンに議論されることは非常に好ましい。残念ながら日本にはPCASTもNNIも実質的には存在しない(8/19,20参照)。
原子力に話を移そう。鳩山氏はイギリスの科学誌Natureに投稿し、福島原子力発電所の窮状を述べ、原子力発電所を国営化するであると主張した。しかしながら、現状のまま国営化しても改善されるとは思われない。経済産業省が原子力発電所を支配し続けると思われるからだ。
Natureには、鳩山氏の投稿に対して「分岐点」という論説を掲げている**。それには、日本政府は科学者の意見を聴くべきであるという。科学者は、バイアスのないまた政治とは無関係な立場から、何が明らかになっていて何が明らかでないかを明確に説明し、危険を回避する方法を明示するであろうという。過去においても日本では、水俣病、血液製剤、BSEなどの問題をあいまいな科学的情報に基づいて処理し、その責任を官僚や政治家に押しつけたという。福島原子力発電所でも、東電や経済産業省が問題を処理し、彼らと無関係の科学者の意見が事故対策に反映されていないと述べている。
**http://www.nature.com/nature/journal/v480/n7377/full/480291a.html?WT.ec_id=NATURE-20111215
Natureのこの論説にも納得し難い。福島原子力発電所の事故処理には原子力安全委員長が関与していたはずである。またその他の過去の事件にも、関与していた科学者・技術者がいるはずだ。どうも日本では科学者・技術者が官僚に逆らえないような構造になっているのだろうか。ひょっとしたら日本での研究費配分方式(8/21,22参照)がその原因かもしれない。
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