ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

カーボンナノチューブスポンジ:水中の油を除去出来る

2012-04-18 | 報道/ニュース

カーボンナノチューブにはいろいろな利用法があって、有望なナノ材料であることは何回か説明したとおりである(2/6,4/4,13参照)。カーボンナノチューブ単体、カーボンナノチューブファイバー、カーボンナノチューブの森などが研究の対象になっていた。

アメリカテキサス州のライス大学を中心とする研究グループ(そのうちの一人は信州大学に関係している)は、カーボンナノチューブを3次元的に組み立てることに成功した。まずその興味ある性質をビデオ(http://youtu.be/OCKyMn-2edo)で見ていただこう。まず若い学生が出てきてカーボンナノチューブスポンジを手に持って押しつぶす。力を緩めるとすぐ元に戻ることがわかる。その次に油を吸収するとの説明をするが、後の詳しい説明の方が面白い。次に教授が現れるが、あまり重要なことは言わない。次に再び若い学生が出てきて、このスポンジが疎水性(12/17参照)であることを説明する。水が大嫌いで、ピンセットでちょっと動かすと反発する。持ち上げても水はついて来ない。その次に、このスポンジが強磁性(1/14参照)であることを説明する。磁石で動かすことが出来る。また水中の油を回収した後スポンジを磁石で引き上げることが出来る。次に水中に油を入れる。スポンジに油が吸収されることがわかる。油を絞り出すことも出来るが、火をつけると燃える。燃やした後もスポンジは全く痛まない。再び使用することが可能である。

http://www.nanowerk.com/news/newsid=24911.php

このグループがこのような3次元構造を作り出すのに成功した秘けつは、多重壁カーボンナノチューブにボロン原子を結合させたことにある。ボロン原子はカーボンナノチューブのほぼ中央に結合する。ボロン原子が結合するとカーボンナノチューブが中央で折れる。折れたカーボンナノチューブが他のカーボンナノチューブとボロンを通して共有結合(9/8参照、きわめて強い結合)を作る。このようなカーボンナノチューブを集めると隙間の多い3次元構造ができあがる。隙間があるため、いろいろな物質を吸収出来るが、カーボンナノチューブの疎水性のため水を吸収しない。

カーボンナノチューブスポンジは、高電気伝導性、熱安定性、多孔性、軽量などおもしろい性質を持っている。水中の油成分の除去だけではなく、フィルター、電池の電気容量の増加などもっといろいろな応用が考えられている。


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1 コメント

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ストライベック (関数接合論ファン)
2024-07-12 21:42:55
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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