ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

ナノテクノロジー関連会社トップ20

2012-09-29 | 報道/ニュース

アメリカのNanoBusiness Commercialization Associationが2012年にナノテクノロジーを用いて最も画期的な新技術を開発した会社、大企業ならびにベンチャー企業トップ20を発表した。その結果を分野別に整理したのが下の表である。

http://www.internano.org/content/view/713/251/

 

大企業

 ベンチャー企業

 

新材料

BASF(ドイツ),Evonik(ドイツ), LG Electronics(韓国),Mitsubishi(日本)

NanoMech(アメリカ)

新材料(強靭)

General Motors(アメリカ)

 

新材料(建築)

Behr(ドイツ)

 

新材料(太陽光)

DMS(ドイツ),DuPont(アメリカ)

 

新材料(放射性物質除去)

 

Kurion(アメリカ)

汚染除去

 

ABS Materials

水の浄化

 

Produced Water Absorbents(アメリカ)

コーティング

Lockheed Martin(アメリカ)

HzO(アメリカ),Nanofilm(アメリカ)

触媒

 

Siluria(アメリカ)

透明電極

 

Cambrios(アメリカ)

LED

 

Bridgelux(アメリカ),Nanosys(アメリカ)

エネルギー貯蔵

 

Nanosys(アメリカ)

メモリスター

Hewlett Packard(アメリカ)

 

メモリ

 

Nanotero(アメリカ)

コンピューターチップ

Apple(アメリカ)

 

マイクロプロセッサ

Intel(アメリカ)

 

フォートニックデバイス

 

SiOnyx(アメリカ)

高性能コンピューター

Samsung(韓国)

 

量子コンピューター

IBM(アメリカ)

D-Wave Systems(カナダ)

通信

 

Kovio(アメリカ)

次世代リソグラフィ

 

Molecular Imprints(アメリカ)

ドラッグデリバリー

Bayer(ドイツ),Novartis(スイス),
Pfizer(アメリカ)

Cerulean(アメリカ)

癌治療

 

Mersana(アメリカ)

癌ワクチン

Amgen(アメリカ)

 

診断

GE(アメリカ)

Metabolon(アメリカ),NanoInk(アメリカ)

スキンケア

L'Oreal(ドイツ)

Solazyme(アメリカ)

栄養補助食品

 

Solazyme(アメリカ)

大企業が製品の高性能化にナノテクノロジーを取り入れようとしている姿が垣間見える。韓国は新製品開発に力を入れているようだ。ベンチャー企業は圧倒的にアメリカに多い。アメリカはITに続き、ナノテクノロジーでも世界を制しようとしている(5/1参照)。ちなみにNanowerkの統計によると、ナノテクノロジー関連会社数は全世界2283社のうち、アメリカ1187社、ドイツ225社、日本62社、中国45社、韓国29社である。日本は研究投資額は多いが、省庁縦割行政のなかで研究で得られたブレークスルーがいち早く産業化に生かされているのだろうか。

 


水素自動車用水素貯蔵の新しい方式

2012-09-26 | 報道/ニュース

水素燃料とする水素自動車は環境にやさしい究極の自動車としてその出現が望まれている。解決すべき問題点の一つは水素の貯蔵方式である。ガソリンと同様液体にして貯蔵するのが最も好ましいが、水素を液体にするには-250℃まで冷却する必要がある。車の中で冷却するのは不可能である。

ナノ粒子は(表面積/体積)比が大きい。表面に水素分子や水素原子を吸着させて貯蔵するという試みもあるが(3/2参照)、必ずしも大きな貯蔵量が得られない。スウェーデンの大学院生がフラーレンやカーボンナノチューブ(ホームページ2.2A)の水素貯蔵への利用を目指して実験を繰り返し、学位論文に発表しようとしている。フラーレンと水素ガスを混合し400℃程度の高温にすると、水素がフラーレンの内面に付着しC60Hxという分子が形成される。xの値が40程度に達するとフラーレンが分解する。しかしながら白金やニッケルの触媒を用いて同様な反応を起こさせるとフラーレンの分解は防止出来るようである。圧力を加えないで温度を上昇させると水素は放出される。したがって、フラーレンを水素貯蔵に利用できそうであるが、水素を放出した後のフラーレンは元の形に戻っていないという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26774.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UFvjhNADRec.google

この研究の成果は、フラーレンが水素の水素貯蔵材料として利用出来ることを確立したわけではない。しかし、C60Hxという形で貯蔵出来るとその貯蔵効果は大きい。新しい水素貯蔵方法に一つの道筋をつけたものといえよう。さらに、水素付加させたフラーレンが分解して生ずる水素と炭素の化合物はこれまで知られていない全く新しい化合物で、その特性解明にも興味が持たれている。


原子炉専門家よ 反省・奮起を: 日本の原子力産業が衰退する

2012-09-25 | 報道/ニュース

一番下に9月25日付朝日新聞名古屋版声欄に掲載された記事を添付してあるが、少し説明を加えておきたい。

我々が福島原発事故で学んだことは、(1)原発は地震・津波で操作不能に陥ることがある、ならびに(2)地震震度ならびに津波の高さを安易に想定してはならない、であろう。この教訓をもとに、どのような事態が起ころうとも放射性物質のばらまきすなわち放射線公害が起こる確率を最低にするような方策を講じて欲しかった。このことは不可能ではなかろう。実際福島原発の地下室にあって水没した非常用電源が正常に動作し燃料を冷却し続けることが出来ておれば、このような悲惨な事態にはならなかったであろう。

残念ながら、官・産・学が取った安全対策は極めて不可解なものであった。まず、原子力安全・保安院が各原発に安全対策を提示するよう指示し、両者協議の上応急的安全対策を決定した。こともあろうに原子力学会はこれを学会の安全対策に対する提言として採用した。しかし、その不完全さを認識していたのであろう。これを前期提言とし、より完全な安全対策を中期提言としている。多くの原子炉専門家は、このダブルスタンダードに準じて応急的安全対策を講じた原子炉の安全性が確保されていると述べている。たとえば大飯原発を例にとると、応急的安全対策とは、4m余の高さの津波で水没するはずの非常用電源が、その建物のドアにシール施工を施すことによって11mの津波にも耐え得るという。さらに、電源車を用意することになっている。地震・津波で何が起こるか分からないなかで、これから十分な安全対策であるとは思えない。

原子力学会がこのような状態であると、今後の政府の再稼働決定にも疑問が残る。政府が決めた5人の原子力規制委員会委員が政界や経済界からの圧力のもと、純粋に技術的な立場から結論を下せるとは思えない。原子力学会すなわち原子炉専門家の集まりが、技術的な立場から上記委員会委員に助言出来るよう体制を整える必要があろう。

私は、原子炉専門家は次の二つの点で反省すべであると思う。まず第一に、地震国にふさわしくない現存の原子炉(非常用電源は地下にまた燃料プールは高い階層に)を建設し続けたこと、第二は上記のダブルスタンダードである。その上で、放射線公害を起こす確率を最低に出来る原子力発電所を選定し、それらの原子炉に対する安全対策を提言してほしい。電力会社にも原子力規制委員会にもこのようなことが出来るはずはない。ニ度と福島でのような放射線公害を起こさないよう努力すること、これが原子炉専門家の義務であろう。

さらに、人類の将来のため、より安全性の高い次世代原子炉の開発を目指してほしい。すでにアメリカではその兆しが見えている。地震国日本ほど次世代原子炉に対する要望が強いはずである。ちなみにもんじゅ型高速増殖炉は地震国日本に設置すべきではない。制御不能に陥ったとき水冷ができないからだ。プルトニウムも燃料として利用出来るような次世代型原子炉(たとえばTWR、2/13参照)が開発できないものだろうか。

若い原子炉専門家に大いなる奮起を促したい。このままでは日本の原子力産業は衰退の一途をたどるであろう。後継者も育たないであろう。


ナノテクノロジーと化粧品

2012-09-24 | 報道/ニュース

AtoZ Nanotechnologyはオーストラリアのナノテク情報発信会社であるが、時々特定の分野でのナノテクノロジーの現状を紹介している。これまでもいくつか紹介してきたが、化粧品産業でのナノテクノロジーの記事を紹介しておこう。

ナノ粒子が化粧品に使われる理由は、紫外線吸収効果は高めるためと、有効成分を細胞膜を透過しやすいナノ粒子に乗せて運ぶことによって(ドラッグデリバリー、9/6参照)、その効果を増進するためである。
http://www.azonano.com/article.aspx?ArticleID=3100

日焼け止めクリームは紫外線を吸収する酸化チタンや酸化亜鉛粒子などを含むが、これらの粒子をナノサイズにすることによって紫外線吸収効果が高まり、また可視光線を反射しやすくする。しかしながら、最近の研究によるとその安全性が必ずしも保証されてるとはいえない。これらのナノ粒子は光触媒の作用をもつ。すなわち紫外線を吸収することによって周辺の分子を分解し、ラジカルと呼ばれる反応性の高い分子を作り出す。これらのラジカルがガン発生の原因となる可能性がある。またナノ粒子が血流にまぎれ込んだ時の人体に対する影響はあまり明らかになっていない。

ローションクリーム、老化防止クリーム、などスキンケアクリームの有効成分を細胞内に運び込むのにナノ粒子が用いられる。これらのナノ粒子は、脂質やデンドリマと呼ばれる枝分れした分子であるが、毒性を持たない。また生物適合性が高く拒絶反応を起こさないことが知られている。しかし皮膚細胞に用いたときその有効性を疑問視する向きもある。

ナノ粒子はいろんな面でその効果を発揮しつつあるが、その危険性には常に注意を払う必要がある。リスクに関する研究も多くなされている。政府も高い関心を示していて、アメリカ政府(FDA,食品医薬品局)、EUともに勧告を発している。オーストラリアはまだだそうだ。さて日本では。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24971.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.T5IoK5mc30s.google
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26557.php

 


超薄いレンズ

2012-09-21 | 報道/ニュース

ハーバード大学を中心とするアメリカ・イタリーの共同研究グループは、極めて薄いレンズの試作に成功した。その厚さは髪の毛の1000分の1程度で、現在のところ特定の波長の光にのみに使用出来るが、広い波長の光に対応出来るものも製作出来るという。将来スマートフォンやカメラにも利用出来るという。名刺の厚さのスマートフォンの実現も夢ではなさそうだ。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26766.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UFqWoByiFD0.google

現在眼鏡などに使われている凹凸レンズは、光の屈折を利用するもので1200年代から存在している。Fresnelレンズという平板型レンズが1970年代に開発されたが、これは入射した光が焦点を結ぶように光の屈折板を配置したものである。最近になってナノ粒子を利用した新しい型のレンズが開発されている(1/23参照)。さらに、波長より短い間隔でプラズマ振動を誘起する金属ナノ粒子を配置した人工表面に逆V字型ナノアンテナ(8/2,13参照)で集光した光を導くとレンズ作用が働くことが明らかになっている。薄いレンズはこの原理を応用したものである。


細胞間の携帯電話

2012-09-19 | 報道/ニュース

イギリスでは携帯電話をcellphoneと呼ぶ。これはcellure phoneの略で、cellureには"細胞の"という意味のほかに"地域内の通信"という意味があることに由来する。AがBに電話をしてある要件を依頼したとしよう。Bがその依頼を実行しAに報告したところでその通信は完結する。

さて、チューリヒの研究グループは哺乳類の細胞間の電話、cell phone、を実現することに成功した。通信を媒介するのは分子である。細胞Aにindoleと呼ばれる分子を注入すると酵素の作用によってL-tryptophanと呼ばれるたんぱく質が生じる。細胞Bにこのたんぱく質が入るとacetraldehydeが生じ、細胞Aがこれを受信する。細胞Aに一定量のacetraldehydeが蓄積されるかまたは細胞Aの中のindoleがなくなると細胞Aからの信号が停止する。バクテリアとイースト菌との間の通信はすでに知られていたが、哺乳類の細胞間の通信を実証したのはこの実験は初めてであるという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26723.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29

cell phoneは細胞増殖をコントロールしているという。細胞培養器の中に細胞Aと細胞Bならびに血管壁の内皮となる細胞を混入する。細胞Bが発する化学物質が内皮の透過性を増大させる。これによって血管壁細胞が増殖するが、細胞Aが細胞Bから受ける信号に従って透過性の増大を阻止する化学物質を発するという。この仕組みがうまくいかないときには腫瘍になる可能性があるという。このことから、将来cell phoneが予防や治療に活用出来ると考えられている。


Janusナノ粒子の効用:光触媒作用の効率化

2012-09-17 | 報道/ニュース

以前ナノ粒子のコアシェル構造について述べたことがある(4/12,16,9/4/12参照)。コアシェル構造とは、球状のコアとなるナノ粒子を、コアとは異なる他の材料でコートしたものである。それぞれの材料が持つ特性を生かすことができ、種々の応用が考えられている。

Janus構造とは、下図に示すように2種類の材料が構成する半球を接着させたものである。Janusとはギリシア神話に出てくる二つの頭を持った神の名前である。コアシェル構造とは異なって、表面が2種類の材料で構成されている。通常は球状ナノ粒子の表面の半分を他の材料でコートすることによって作成される。たとえば動物の細胞と付着しやすい材料と全く細胞を付着させない材料で構成されるJanusナノ粒子は、動物の細胞に付着して保護するのに利用出来る。ポリエチレン繊維を親水性と疎水性をもつJanus粒子でコートすると、親水性の部分が繊維に付着し繊維の疎水性が増大することも示されている。

シンガポールの研究グループは、Janus構造が太陽光による水分解用触媒(10/18参照)の効率を増進させることを示した。彼らが用いたJanus構造は、球形の酸化チタンナノ粒子に球形の金ナノ粒子を付着させたもので、通常のJanus構造とは少し異なっている。金ナノ粒子は光を吸収してプラズモン(11/17,12/21,1/23参照)を誘起する。プラズモンのもつエネルギーで酸化チタン中に電子正孔対が作られ水を分解するが、その効率は金ナノ粒子を酸化チタンでコートしたコアシェル構造のものの2倍程度になるという。また金ナノ粒子の半径を大きくすると効率が増大するという。未だ実用に供することが出来る段階ではないが、触媒作用の機構を明らかにする上でも重要な結果であるという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26686.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29

          


バブルを出さずに水を沸騰させる方法(ビデオ付き)

2012-09-14 | 報道/ニュース

1756年にドイツの研究者Leidenfrostが面白い発見をした。非常に高温に加熱したフライパンを水で覆うと水滴がフライパン上を跳びはねる。これはフライパンが水蒸気の膜で覆われているからである。ところが温度がLeidenfrost温度と呼ばれる温度より低くなるとこの水蒸気膜が不安定になってバブルが発生するようになる。水蒸気膜は熱伝導度が小さいためフライパンの温度が水に伝達されにくく、水がゆっくりと加熱される。水蒸気膜が存在し得ない温度になるとnucleate boilingという現象が生じる。この現象はフライパン表面の不均一性のため特に温度が高い個所が核となって爆発的な沸騰が起こる現象で、原子炉の冷却などでも好ましくない。さらに、水を循環させる冷却装置などでは、水とパイプとの間にliquid-solid dragと呼ばれる摩擦力に似た力が働くが、水蒸気膜の存在はこの力を弱めることが出来る。

上で述べたことから明らかなように、沸騰点まで水蒸気膜を安定に存在させ得ることが好ましい。ノースウェスタン大学の研究グループは、金属を強い疎水性(12/17参照)の膜でコートすることによってこの目的が達成出来ることを示した。その研究成果はビデオ(http://vimeo.com/49391913)で一目瞭然である。ビデオは380℃に熱した直径2cmのステンレス球を水中に落下させたときの様子を示したものである。左は親水性の膜でコートしたもの、右は疎水性の膜でコートしたものである。いずれの場合も、温度が高い間は球の表面で発生した水蒸気が球の上部に集まって放出される。球表面の温度がLeidenfrost温度より低くなると、左側では表面にはバブルが発生する。しかしながら右側では沸騰点に達するまで水蒸気の放出が続くことが分かる。
http://www.nature.com/news/how-to-boil-water-without-bubbles-1.11400#/b1

熱したステンレス球を常温に保たれた水中に落下させても水蒸気膜が安定であるという。船舶に塗装するとliquid-solid dragを減少させることができ、また凍結防止に役立つかもしれないと指摘されている。


グラフェンで海水の淡水化

2012-09-12 | 報道/ニュース

水資源の安定な供給が世界的な問題になっている。海水を効率よく淡水化することがこの問題の解決策の一つであろう。現在逆浸透膜に圧力を加え、海水中のナトリウムイオンや塩素イオンを取り除く方法が用いられているが(10/1参照)、必ずしも効率が良くない。浸透膜には数ナノメーターの穴が開けられた高分子であるが、イオンが透過できない理由はいくつかの水分子が付着しているからである。

マサチューセッツ工科大学の研究グループは、1ナノメーター程度の穴をあけたグラフェンが、海水の淡水化に現在使用されている逆浸透膜の100倍から1000倍程度の性能を示すものと指摘している(グラフェンに関するまとめとブログ記事の取材についてはホームページ(URLはプロファイルに)2.2A1参照)。グラフェンは薄くて強靭である。しかも穴をあけても強さはほとんど変わらない。現在のところ計算機シミュレーションのみが実施されているにすぎない。高い効率を示す理由はグラフェンが1原子層で浸透膜に比べてはるかに薄いからであるという。さらに穴に水素原子を付着させるとイオンをますます透過させなくなるという。
http://www.nature.com.libproxy.ucl.ac.uk/nnano/journal/v7/n9/full/nnano.2012.153.html

グラフェンによる海水の淡水化を実現するにはなお歳月を要するであろう。グラフェンシートを重ね合わせて30インチの大きさの透明電極用グラフェン膜の作成にも成功している。また穴を開けるにはグラフェン膜をイオンビームで照射することは考えられている。このほか、蓄積されたイオンにを速やかに取り除く方策も必要であろう。速やかの実現が期待される。


ナノテク関連会社情報

2012-09-09 | 報道/ニュース

Solar3D社は、従来のシリコン太陽光発電パネルの2.5倍もの効率を持つ3次元太陽光発電パネルの製作に成功したと報じている。同社が製作したパネル自身の詳細は明らかではないが、以前紹介した(8/13参照)光アンテナ付き太陽光発電パネルと同様にシリコンパネルをこの字型に折曲げたものを透明な絶縁体の中に埋め込んだもののようである(http://www.nanowerk.com/news/newsid=21490.php)。3次元と呼ばれる理由は、太陽光パネルの凹凸構造による。透明な絶縁体は、光を屈折させ出来るだけ効率よくシリコンに吸収させるためのものである。パネルの背面には反射板が置かれていて反射した光が吸収されるようになっている。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26616.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UEgK8v5CVSA.google

コーティング製品も数多く発表されている。Integran Technology社は、金属やポリマーなどを素材の特性を残しながら多重にコート出来る柔軟性のあるコーティング手法を商品化したと発表している。また、Dynaflo社は、LIQUID-ARMORと呼ばれるナノコーティング剤を発売している。スマートフォンやカメラのレンズにもコーティング可能で、従来の製品の2倍の強度を持つという。タッチパネルの感度にも影響を与えないという。また、NANOCLEAN社は自動車産業用の自動洗浄プラスチックス製品の開発を手掛けているが、ミラーの試作に成功したと報じている。その手法はハスの葉を参考にしたもので、レーザーでプラスチックスに凹凸を付けさらにコーティングを施したものである。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26372.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29
http://hothardware.com/News/Dynaflo-Announces-ScratchResistant-LIQUIDARMOR-Screen-Protector-Spray/
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26292.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UCXD__h0P7c.google


個別化医療とナノテクノロジー

2012-09-07 | 報道/ニュース

診断された病名に対して医療方針が決まる現在の医療法に加えて個別化医療が取り入れられつつある。個別化医療とは、各患者の病状の進行状況を示すバイオマーカーや遺伝子配列を検出し、それに対応した医療を行うことである。特にがん治療において遺伝子配列の検出は重要で、特定の治療法がその患者に有効であるかどうかが異なるという。A to Z Nanotechnologyに個別化医療に対するナノテクノロジーの寄与に関する記事が掲載されていたので紹介しよう。

http://www.azonano.com/article.aspx?ArticleID=3078

第一にバイオセンサー(3/14参照)の感度の向上によって病気の進行状況を示すマーカーの検出が簡便、迅速、かつ検出による患者への影響を少なく出来る。ナノ粒子はその大きさが小さいため少数の分子が付着しても電気的または機械的性質の変化が検出出来る。カーボンナノチューブやグラフェンの特異な性質を利用すると数個の分子でも検出出来る(12/2参照)という。第二にナノテクノロジーを用いた遺伝子解析の新しい手法が開発されていて(5/25参照)、がん患者に最も適した薬品の選択が容易となる。薬品をナノ粒子に乗せて直接がん細胞へ運ぶドラッグデリバリーの手法も開発されていて(下表参照)、あわせてがん治療に画期的な変化が期待されている。

これらの技術は半導体集積回路に組み込まれ、ラボオンチップ(1/31)と呼ばれる装置が開発されつつある。この装置は持ち運びが便利で各患者の状況を容易に検出出来る。これによって広い範囲の病気に対する個別化医療が可能になりつつあるという(これまでの医療に関する記事については2/16参照)。

ドラッグデリバリー

カーボンナノチューブ

9/28/11,1/26/12,

ダイヤモンド

1/8/12,

ナノピル

3/27/12,

10/30/11,

 


ナノ触媒でメタンガスの燃焼効率を高める(ビデオ付き)

2012-09-04 | 報道/ニュース

天然ガス発電は今後ますます重要視されるであろう。天然ガスの主要成分であるメタンガスはきわめて安定な分子で、完全燃焼させるこことが困難であった。しかもメタンガスが燃焼しないで大気中に放出されると、二酸化炭素の20倍の温室効果をもたらす。

メタンガスの燃焼には触媒が用いられるが、その効果は必ずしも十分ではない。1000℃以上の高温で燃焼させると、メタンガスの燃焼効率は増大するが酸化窒素や一酸化炭素などの有毒ガスを放出する。低い温度で効率よくメタンガスを燃焼させる触媒の探索が進められていた。

ペンシルベニア大学とスペインおよびイタリーの共同研究グループは、これまで使われていた触媒より30倍も効率が高い触媒の作成に成功した。この触媒はパラジウム(Pd)と酸化セリウムのナノシェル構造(4/12,16参照)で、球状のパラジウムナノ粒子を薄い酸化セリウムナノ粒子で覆ったものである。この触媒を用いることによって、400℃でメタンガスをほとんど完全に燃焼出来るという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26278.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29

コアシェル構造はナノテクノロジーで種々の目的に用いられていたが、触媒に応用されたのはこの研究が初めての様である。パラジウムと酸化セリウムの相乗効果が触媒の効率を増進しているという。ビデオ(http://youtu.be/lVGgPvUhGYw)で触媒の構造とメタンガス(正4面体)と酸素と反応の様子を見ることが出来る。


ナノサイズ高温超伝導体膜をメモリに

2012-09-02 | 報道/ニュース

約20年以上も前に高温超伝導体(4/11参照)と呼ばれるものが見つけられた。それまで知られていた超伝導体は金属で、-250℃以下の低温ででした超伝導を示さない。超伝導を示さなくなる温度を臨界温度と呼ぶが、高温超伝導体では臨界温度が-100℃より高いものも見つけられている。高温超伝導体とは特殊な金属酸化物で、酸化度を変えることなどによって臨界温度が変化することが知られていた。

イスラエルの研究グループは、光を照射することによって高温超伝導体の臨界温度が制御出来ることを見つけだした。彼らは50nm程度の厚さの高温超伝導体上に単分子層高分子膜を成長させた。高温超伝導体と高分子のいくつかの組み合わせについて実験を行った。その結果、紫外線を照射することによって臨界温度が数度上昇し可視光を照射すると臨界温度が下降する組み合わせ、光を照射している間だけ臨界温度が上昇する組み合わせを見つけだした。高温超伝導体が薄膜であることと、その表面に一様に付着した高分子との間に何らかの反応を起こさせることが臨界温度を変化した原因であろう。
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/08/120827122503.htm

このような系はエネルギー消費量の少ないメモリとして有用であろう。