ナノテクノロジーニュース

ナノテクノロジーは日進月歩である。その全貌がわかるよう、日々飛びこんでくるニュースを中心に説明する。

合金を強くする

2012-08-31 | 報道/ニュース

我々の周辺にある合金は多くの場合結晶粒の集まりである。結晶粒の中には転位と呼ばれる欠陥が含まれていて(6/15参照)、外部から力を加えると転位が動くことによって結晶粒が変形する。結晶粒をナノサイズにして転位の動きを小さくすることによって金属を強靭に出来ることが以前から知られていた。しかしながら、ナノサイズの結晶粒は不安定で他の結晶粒と結合して形を変えてしまうので、ナノサイズ結晶粒合金は実用化されていなかった。

マサチューセッツ工科大学の研究グループがこの問題に対する新しい解決策を見いだした。彼らはナノサイズ結晶粒間の界面の安定性に重点を置き、種々の合金について界面の安定性を理論的に計算した。その結果見つけ出された一例として、高強度合金として知られいるタングステン-チタン合金について、このナノサイズ結晶粒合金が1000度の高温でも長時間安定であることを明かにした。この研究成果は高強度合金の利用されるであろう。
http://spectrum.ieee.org/nanoclast/semiconductors/nanotechnology/super-metal-alloys-achieved-with-design-tool-for-stable-nanocrystals

この研究成果はさらに広い意義を持っている。合金の耐腐食性も結晶粒を小さくすると増大することが知られている。安定性の高い耐腐食性ナノサイズ結晶粒合金の開発にも応用されるであろう。


2次元エレクトロニクスの新しい材料

2012-08-26 | 報道/ニュース

グラフェンのような単分子層で構成される材料で電子回路が作れれば、これまで予想もしなかったことが実現出来るであろう。なにしろ厚さが薄いため全く人間の目には見えない。ディスプレイを内蔵したガラス窓や一様に光を出す壁を実現することも容易であるという。もちろん半導体チップに代わるものが作れれば、演算速度を速めさらには材料費ならびに消費電力を削減出来るであろう。

グラフェンをトランジスタやメモリなどエレクトロニクスに利用しようとする試みは多くなされてきた。しかしながら、グラフェンは禁止帯の幅が0であるのが欠点である(HP2.2A1参照、グラフェンに関するブログ記事の所在も含む)。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、2層の硫化モリブデン(MoS2)を用いてトランジスタを作り出し、さらにそれを組み合わせてスイッチやメモリなどの集積回路を作成することに成功している。この物質の禁止帯の幅は1.8電子ボルトで、シリコンの禁止帯の幅より大きくトランジスタとしての性能も優れているという。また機械的にも強い。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26451.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29

2次元エレクトロニクスへの本格的な第一歩として興味深い。


次世代メモリ:強誘電性超分子ネットワーク

2012-08-24 | 報道/ニュース

固体に電界を加えると固体を構成する分子が双極子となる。強誘電体(1/30参照)と呼ばれる材料では、分子間の相互作用が強く、双極子となった分子が隣接の分子の双極子を同じ方向に向けようとする。このような材料に電界を加えると、材料全体が分極しその分極は電界を取り除いてもそのまま残る。逆方向に電圧を加えると逆方向に分極する。一方を1、他方を0とするとコンピューターメモリに利用出来る(7/12参照)。

以前から無機の強誘電体は多く知られていたか、最近になって軽くまた製作費が安い有機強誘電体が開発されてきた。2個の分子を結合させ一方から他方に電子が移るようにすると双極子が生じる。このような分子対を結晶化して強誘電性を持たせ得ることが知られていたが、常温で強誘電性を維持することができなかった。最近ノースウェスタン大学の研究グループは、常温でも双極子が保持される分子対を見つけ、これを強誘電性を持つ3次元的超分子ネットワークに積み上げることに成功した。超分子とは分子対が水素結合によって結ばれたものである。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26447.php

現在コンピューターのハードディスクなどのメモリには強磁性体(1/14参照)が用いられているが、強誘電性を用いる方が小消費電力、長耐久性、高速メモリなどの利点がある。磁気メモリーを強誘電性メモリに置き換えると全米で消費電力費を60億ドル削減出来るという試算もある。

新しくつくられた材料が常温で強誘電性を持つことだけではなく、分子対の自己アセンブリ過程にも興味が持たれている。


完全性の高い半導体ナノ結晶の新しい生成法

2012-08-22 | 報道/ニュース

半導体ナノ結晶(量子ドット,4/10,5/13,6/6参照)は、電子回路やフォートニック回路、バイオセンサー、ディスプレイ、太陽光発電など広い範囲の応用が期待されている。しかしながらこれまでの生成法では、ナノ結晶にクラックが存在したり、また小さな結晶の集まりになっていて結晶粒間で電子が流れにくいなどの欠陥があった。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、定まったナノサイズ領域にクラックが存在しない結晶膜を作成することに成功した。この研究グループは5mm角の酸化シリコンの基盤を100nmの厚さの高分子でコートする。高分子にリソグラフィによって区切りをつける。区切りの1辺の長さは30nm程度にすることが出来るという。このうえに通常の方法で約50nmの厚さの化合物半導体結晶膜を析出させる。その後、高分子を融解させてその上に乗っている結晶膜を取り除く。高分子の存在が結晶膜内のひずみを緩和し、クラックの存在を少なくするなどの効用があるという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26412.php

PbS,PbSeなどいろいろな化合物半導体ナノ結晶膜が作成されているが、その電気伝導度が従来のものに比べて180倍に達するものもあるという。この研究の成果は、応用上重要な意味を持つだけではなく半導体ナノ結晶の基本的な性質を明らかにする上でも重要であると考えられている。

ちなみにこの研究のスポンサーはアメリカ陸軍、エネルギー省(DOE)、サムソン電子である。



大学ランキング

2012-08-20 | 報道/ニュース

昨年、イギリスTimes Higher Education(10/7参照)とQS(10/14参照)が発表した大学ランキングを紹介した。Academic Ranking of World Universities が発表した2010年大学ランキングを紹介しておこう。このランキングは研究成果に重点を置いて評価したものである。その評価の評価は(1)教育の質、卒業生の中でのノーベル賞その他の賞受賞者10%、(2)研究者の質、ノーベル賞その他の賞受賞者20%、被引用数(10/29,12/30,2/26参照)の多い論文の著者数20%、(3)研究成果、ScienceとNatureに掲載された論文数20%、その他主要専門誌に掲載された論文数20%、(4)研究者のその他の活動10%、とある。

上位20位は、イギリス2大学と東京大学(20位)を除くとすべてアメリカの大学が占めている。日本の大学は、京都(24)、大阪(75)、名古屋(79)、東北(84)と続く。順位は明確にされていないが、101-150位には東京工業大、151-200位には北海道、九州、つくば、201-300位には慶応、301-400位には広島、金沢、神戸、長崎、岡山、東京医科歯科、早稲田、401-500位には千葉、群馬、日本、新潟、大阪府立、徳島、東京医科歯科、山口の各大学がそれぞれランクされている。自然科学に限定すると、東京(8)、京都(16)、東北(41)、名古屋(50)と順位が上がる。それぞれの大学について、基準各項目についての評価が表示されている。
http://www.arwu.org/ARWU2010.jsp

アジアの大学も比較的良い位置を占めている。シンガポール国立大学、ソウル国立大学は101-150位に位置している。中国ならびに香港の大学も151-200位を先頭に、500位までに約10大学がランクされている。


ダイヤモンドより硬い材料

2012-08-18 | 報道/ニュース

炭素原子が構成する材料は数多い。ダイヤモンド、フラーレン、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンやカーボンナノファイバーなど炭素原子で構成されるナノ粒子がある(HP2.2A参照)。この中でいやすべての材料の中で最も硬いのがダイヤモンドであった。今回スタンフォード大学の研究グループは、フラーレンに静水圧を加えることによって新しくダイヤモンドより硬い材料を作り出すことに成功した。
http://physicsworld.com/cws/article/news/2012/aug/16/new-form-of-carbon-is-so-hard-it-can-indent-diamond

フラーレンとは60個の炭素原子が作るサッカーボール状のナノ粒子である。フラーレンは結晶を形成するが、これに非常に強い静水圧を加えると、すなわち四方八方から均等に圧力を加えると、サッカーボールが潰れてアモルファスカーボン(ダイヤモンドでもグラファイトでもない炭素原子の集まり)になることが知られていた。最近になってフラーレンと他の分子とを混合した結晶がいろいろな興味ある性質を示すことが明らかになってきた。スタンフォード大学の研究グループは、フラーレンとキシレンが形成する結晶に静水圧を加えた結果、生成したアモルファスグラファイト状の材料がダイヤモンドを傷つけ得ることを示した。この材料には、炭素のsp3混成軌道とsp2混成軌道(HP2.1C参照)とが混在しているという。sp3混成軌道より結合力が強いsp2混成軌道の存在が、sp3混成軌道のみで炭素原子が結合しているダイヤモンドより硬い理由であろう。

人工ダイヤモンドの生成には1500℃以上で静水圧を加える必要がある。これに対して新しい材料は常温で静水圧を加えることによって生成出来る。しかしながら、今のところどちらの生成がより経済的であるかは不明であるという。フラーレンのサッカーボールの中にいろいろな金属イオンを閉じ込めることが出来る。このことを利用すると種々の特殊機能を持った高強度の材料を生成出来る可能性もある。


最高分解能のカラープリント

2012-08-15 | 報道/ニュース

カラープリントのピクセル(画素)の大きさは光の波長の約半分程度、250nm、すなわち1インチあたり100,000がリミットである。現在のレーザープリンターやインクジェットではそのリミットの十分の1程度にしか達していない。リミットに近いピクセルが実現すると、プリントの分解能を上げることが出来るだけではなく、ディスプレイやデータストレージにも利用できそうである。

シンガポールの研究グループは、プラズモニックス(11/17,18,12/21, 1/23,3/9参照)を利用してリミットに近い分解能を持ったカラープリントに成功した。彼らが作成したピクセルは4本の直径100nm程度の柱を金銀合金の反射板の上に立てたものである。柱の上にプラズモンを発生する円柱状の金銀合金が載せられている。その直径と柱間の距離によって反射する光の色が変わるという。
http://www.abc.net.au/science/articles/2012/08/13/3564362.htm
http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=highest-possible-resolution-color-images-achieved

色素ではない種々の色を出せる新しい材料を開発したもので非常に興味深い。色素と違ってプリントの安定性も高いという。アメリカのABCテレビや一般向け科学雑誌Scientific Americanにも報じられている。


太陽光発電その後

2012-08-13 | 報道/ニュース

太陽光発電についてはもニュースが多い(2/20,21参照)。ナノテクノロジーが太陽光発電に貢献し得るのは次の3点であろう。(1)太陽光のすべての波長領域の光を太陽光パネルに送り込むこと、(2)太陽光パネルに送り込まれた光を効率よく電気エネルギーに変換する。(3)パネル表面を清浄に保つ。セルフクリーニングコーティングを施した太陽光発電パネルについてはすでに紹介した(7/25参照)。

アメリカの国立再生エネルギー研究所(NREL)とNatcore Technology社は共同でブラックシリコン太陽光発電パネルを商品化しようとしている。ブラックシリコンとは反射係数を極度に小さくしたシリコン太陽光発電パネルである(2/21参照)。反射係数を小さくする手法はもともとNatcore Technology社が開発し特許化していたもので、今回NRELが新特許を獲得した。シリコンの表面にナノポアー(12/20参照)を作成し、ナノポアーを金属ナノ粒子で満たしさらに酸化シリコンでコートしたものである。Natcore Technology社の初期の特許で金や銀のナノ粒子で満たすことになっていたが、N RELは銅ナノ粒子で満たすよう改良を加えたもののようである。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=26180.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UBtB2dChIr0.google

太陽光を有効に集める手法、光アンテナ(8/2参照)に関してはいろいろな工夫がある。ノースカロライナ大学の研究グループによると、図のように光の波長の程度の凹凸をつけておくと、入射光が共鳴を起こして有効に吸収されるという。図の茶色の部分は光を吸収しない絶縁体で、青い部分が光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体である。この手法によると、光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体部分の厚さを従来の約10分の1にも出来るという。またノースウェスタン大学では種々の波長の光を吸収する色素を加えた半導体パネルを開発中であるというであるという。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=25704.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29


新しいタイプのナノモーター

2012-08-11 | 報道/ニュース

自然界にはいろいろなナノサイズのモーターが存在している。たとえば細胞の鞭毛(11/7参照)、精子の尾、細胞のアデノシン三リン酸に よる駆動などがその例である。ナノテクノロジーの目標の一つは、モーターを備えたナノサイズマシンを作成することにある。すでにナノサイズの分子モーター について述べたことがある(9/17参照)。

13個のボロン原子よりなるクラスターは10個の原子の 輪の中に位置している3個の原子が回転しやすいことが知られていて、Wamkelエンジンと呼ばれてい(下図)。Wankelエンジンとは、エンジン中の回転部 分の中心が外枠の中心と一致しないエンジンである。ロサンゼルスにあるカルフォルニア大学(UCLA)の研究グループは、以前からこのWankelエンジ ンについて研究を進めていたが、最近になって外側の原子の輪の中にある内側の原子の輪が紫外線レーザーの照射によって回転することを明らかにした。この モーターの特徴は、レーザー光によって注入される熱エネルギーが外側の原子の輪に拡散し、系全体の温度上昇が最小限に食い止められることである。また、電 圧を加えることによって回転を一方向に制限することが出来るという。
http://www.chemistryviews.org/details/ezine/2330971/Shedding_Light_on_a_Molecular_Engine.html

ボロンクラスターがナノテクノロジーの構成ブロックとして重要な役割を果たすことになるかもしれない。


細胞膜をまねた人工ナノポアー

2012-08-08 | 報道/ニュース

細胞膜のイオンチャネルは、生物体が健康を保てるよう細胞膜を通過出来るイオンを制限する。イオンチャネルはタンパク質の集まりで、ナノポアー(12/20参照)の存在と化学反応や電気信号によって通過出来るイオンが制限されている。このような性能を持つナノポアーを人工的に作り出そうと試みられていた。

中国、アメリカの共同研究チームは、ドーナツ形の分子を積み重ねカーボンナノカーボンのような円筒状のチューブを作成し、これらをさらに化学結合によって束ね、1ナノメーターより小さいポアーを持つ膜を形成することに成功した。このようなナノポアーは、溶液中でセルフアセンブリ(5/3参照)によって形成される。チューブの直径は0.88nmである。このナノポアーは、カルシウムイオンと水を通すがナトリウムイオンやリチウムイオンは通さないという。
http://www.nanowerk.com/news2/newsid=25971.php?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+nanowerk%2FagWB+%28Nanowerk+Nanotechnology+News%29#.UAYrKt8kK_g.google

ドーナツ形の分子の積み重ね方を変えることによって異なったイオン選択性を持たせることが出来るという。この研究に用いられた手法は水の浄化や分子フィルターなど広い応用の基盤となるものと期待される。


北大グループが次世代トランジスタへの第一歩を

2012-08-06 | 報道/ニュース

現在用いられているシリコンをベースとする集積回路(LSI)が限界に近づきあることは周知の事実である(HP1.1,12/14参照)。その解決策の一つとしてサラウンディングゲートトランジスタのアイディアが提案されていたが、実現されていなかった。このトランジスタは3Dトランジスタまたは垂直トランジスタと呼ばれるが、トレインとソースをナノワイヤーを結び、ナノワイヤーを取り囲んだ電極をゲートに使用するものである(2/22参照)。半導体表面に垂直にナノワイヤーを規則正しく成長させる方法が見つかっていなかった

北海道大学の研究グループは、シリコン表面にインジウムガリウムリン(InGaAs)のナノワイヤーを成長させることに初めて成功した。数百ナノメーター間隔でシリコン表面と垂直にナノワイヤーを成長させ得るという。ゲート構造に種々の工夫を凝らした結果、オンオフの電流比が100万にも達するという。また、シリコンと比べてInGaAs中での電子の動きが早く、次世代トランジスタの1候補として有望であるという。
http://physicsworld.com/cws/article/news/2012/aug/02/nanowires-give-vertical-transistors-a-boost
                


グラフェンがフォートニックチップに

2012-08-04 | 報道/ニュース

信号を光で伝達するフォートニックチップが次世代LSIに要求される(4/3参照)。しかしながら、ナノサイズの領域の中で光を電界によって制御することはあまり容易ではない。

最近号の専門誌 Nature Physicsによると、グラフェン(ホームページ2.2A1参照)上に発生させたプラズモン(11/17,12/21,1/23参照)を電界を加えることによって制御出来るという。グラフェン表面に走査型トンネル顕微鏡(9/17,10/11参照)の針を近づけておき赤外線を照射するとプラズモンが発生する。プラズモンはグラフェン上を移動し両端で反射し定在波を作る。グラフェンは禁止帯幅 0 の半導体とみなされ、電界を加えることによって電子濃度を制御出来るという特性を持っている。この性質を利用するとプラズモンの強度を制御出来るという。
http://www.nature.com/nphys/journal/v8/n8/full/nphys2381.html?WT.ec_id=NPHYS-201208

プラズモンを制御する技術、プラズモニックスはこれまでは金属を足場とするものであったが、金属では上に述べたような電界によるプラズモン制御は不可能である。グラフェン上のプラズモンの性質についても研究が進みつつあるが、グラフェンの欠点は禁止帯幅をそれほど大きくすることができない(グラフェンナノリボンにすることにより,HP参照)。今回の実験では、赤外線や可視光線のエネルギーを有効にプラズモン作成に利用するため、走査型トンネル顕微鏡の針の助けを借りている。光アンテナ(8/2参照)と組み合わせることも試みられている。

グラフェンプラズモニックスの研究が今後ますます盛んになるであろう。


DNAの助けを借りた光アンテナ

2012-08-02 | 報道/ニュース

TVアンテナは、特定の波長のTV波に乗せられた信号を電気信号に変えてTV受信機に送り込む。微弱な電磁波を的確に受け取るため、共鳴現象が用いられる。光の波を電気信号に変える光アンテナは、太陽光発電、光センサーなど広い応用範囲をもち、その開発が進められている。共鳴現象を利用するためには、アンテナは送られてくる電磁波の波長程度の大きさでなければならない。したがって光アンテナは100nm程度の大きさであることが必要で、ナノアンテナとも呼ばれている。

特定の波長の光を受信するのは、その波長に対応するフォートンエネルギーと同じ励起エネルギーを持った原子または分子である(HP2.1B 3参照)。原子または分子に到達するフォートンを出来るだけたくさん吸収するために、金属ナノ粒子の近くに原子または分子を配置するという手法がとられている。金属ナノ粒子はプラズマ振動(1/17,12/21, 1/23参照)によってフォートンを吸収しそのエネルギーが一部原子または分子に伝達され、アンテナとしての効率が増加する。しかしながら、金属ナノ粒子および原子または分子を正確に配置することがあまり容易ではなく、十分な知見が得られていなかった。

フランスの研究グループは、DNAを用いて金ナノ粒子と分子の配列を作成し、光アンテナとしての特性を精密に測定することに成功した。DNAはA,G,C,Tの4種類のモノマーから構成される高分子であると見なすことが出来、一端からの位置を正確に規定出来る。彼らはDNA鎖の両端に金ナノ粒子を取り付け、金ナノ粒子間に色素分子を付着させた。この系を光アンテナとして用いると、分子単独の場合と比べると約100倍の光が分子に吸収されるという。いろいろな配置のナノアンテナを作成し、その特性を調べている。

光アンテナ研究の新しいステップとして興味深い。