▲血洗島編から明治初期までが出色! NHK大河ドラマ「晴天を衝け」
いままで幕末・維新の大河ドラマとは相性が悪く、念の為NHKのHPで確認したところ、「龍馬伝(2010)」のみ、最後まで視聴を完走したことを思い出しました。
理由の一つとして、登場人物の立ち位置によって善悪が逆転するという気持ち悪さが、幕末・維新の大河ドラマ視聴のハードルを高くしているように個人的には思います。
当ドラマは後年、渋沢栄一が企業人として大成した基礎が血洗島にあるとして、血洗島編を丁寧に描写しました。
その丁寧さゆえ、人間・渋沢栄一の成長を、間近から見守るように感じることができました。
徳川慶喜・平岡円四郎主従の関係も、コミカルだが丁寧に描写され、そのため、後年、平岡が暗殺された時の慶喜の悲しみの深さもよく理解できるように思いました。
草薙くん演じる慶喜は、英明だけれど人間味溢れる人物でしたが、やはり、将兵を置き去りにして敵前逃亡した徳川最悪の将軍という私個人のイメージまでは払底することはできませんでした。
通常の幕末・維新の大河ドラマのクライマックスである、大政奉還から戊辰戦争の間、主人公がパリ滞在中で本国の状況がよくわからない、という展開も、史実通りとはいえなかなか斬新でした。
ただ、渋沢栄一の偉業の本番である、壮年、晩年の描写がかなり雑だったように感じました。
これはコロナの影響で番組開始が2月の中旬となり、また、1年延期された東京オリンピック・パラリンピックのため、7〜9月中に5回の放送休止もあり、放映回数が41回とコロナ前の大河「いだてん」の47回と比べると6話も少なくなったためと思われます。
実際、脚本家の大森美香氏が「朝イチ」で、放送回数の短縮はかなり残念だったと述べており、私も大森氏が完成させたオリジナル脚本で見たかったと強く思いました。
壮年・晩年の尻すぼみ感はとても残念だったとはいえ、主演・吉沢亮の好演もあり、面白く最後まで楽しく視聴できた大河ドラマでした。