▲かなり残念な出来だった、映画版「イチケイのカラス」ネタバレ有り、鑑賞予定の方は読まないで下さい
ドラマが大好きだったので、公開初日に張り切って鑑賞に出かけた映画版「イチケイのカラス」でしたが、期待のハードルが上がりすぎたのか、私にはかなり残念な出来でした。
映画版ということで、ドラマとは設定が変わっています。
それ自体は問題ないのですが、化学工場と護衛艦の繋がりがそもそもほぼ関係なく、かなり無理矢理、国家権力対入間みちおと坂町千鶴の構図をでっち上げた感(観客をなんとかミスリードしようとした感)があります。
最近のドラマ「エルピス」でも中盤までかっちり締まった構成で面白かったものが、有力政治家のために冤罪をでっち上げた、みたいな方向に話が進んだ途端、雑で大雑把なドラマになってしまいました。
ここは素直に企業城下町の大工場にまつわる話だけでまとめたほうが良かったように思います。
企業城下町大工場の環境汚染の隠蔽というのは、私のようなアラ還にはチッソ水俣工場の「水俣病」を想起させました。
当作品制作者は映画「MINAMATA」から当作品の着想を得たのでしょうか?
当事者の苦衷、というのは何となく分かるとしても、出来事や設定がかなり大雑把でいい加減なので、それらがどうしても気になってしまいます。
例えば、工場廃液に含まれる有毒物質(液体)、それが健康被害の原因、という設定が、どうしてフレコンバッグに詰められた砂状のものに変換されて運搬されるのか、に関して説明ありませんし、輸送船で運んだ毒物をどこに捨てる(移動する)つもりだったのかも説明ありません。
船倉に積み込まれた毒物のため、ほぼすべての船員が倒れてしまう、という描写がありましたが、船倉(区画がある)にある毒物が、ブリッジとか船室の人間が倒れるほど毒性の高い物質って、あり得るのでしょうか?
気になったツッコミ点。
1.工場内で自転車を無断拝借して二人乗りで逃亡した二人、どこから工場を出たのでしょうか?
2. 輸送船内では事故前に酒盛りをしていた、それが事故の原因、ということでしたが、なぜそんな事がわかったのでしょうか?
確か、輸送船はサルベージしようと思えばできる、みたいなことを入間が向井に言っていたような気がするので、輸送船は事故当時から沈んだまま、ではなかったのですか?
それとも生存者がいたのでしょうか?
3. 幼馴染? 夫? はなぜ吉田羊の病状を正確に把握していたのでしょうか?
4. 吉田羊の病状から察すると、治らない業病のようなもの、例えば水俣の「胎児性水俣病」を連想していたのですが、ラストの野球シーン、原告の子供が野球していたように見えたのは私の錯覚だったのでしょうか?
それとも、治療に大金を注ぎ込めば治る病気だったということでしょうか?
まあ、映画自体が面白ければ大して気にならなかったのかもしれませんが、ちょっと残念な出来でしたので、細かいことに気が行ってしまいました。
本来なら星2つの評価ですが、出演者はそれぞれ好演していたので総合でおまけの星3つにしました。