日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 源正雄

2010-05-18 | 脇差
脇差 源正雄

  脇差 銘 源正雄作安政四年八月日

  

  

 沸(にえ)は刃文を構成している要素の一つで、視覚的には粒状に確認できるものであり、粒子が確認できない匂(におい)と呼ばれる要素とは風合いも異なっている。焼き入れ温度の違いなど物理的な違いによって現われ方は異なるが、多くの場合、沸と匂は交じり合っている。両者が明確に見分けられる焼刃は比較的少ないが、本作は、匂に満ちた刃中を沸による金筋が切り裂くように走り、刃縁には沸が飛沫のように叢付いているのが良く分かる例である。
 作者は江戸時代後期の名工源清麿の高弟源正雄(まさお)。
 この小脇差は、一見すると地鉄の調子が不明瞭なほどに板目鍛えの地鉄が良く詰んでいるが、刃先側が柾目調となって鋒まで続き、先で棟側に流れ込んでいるのが焼刃の状態でわかる。刃文は互の目に足が長く入って抑揚のある構成。沸に匂が複合して頗る明るく、しかも冴え、光を受けてくっきりと目に飛び込んでくる。刃縁は厚い匂で乱れている様子が鮮明に確認でき、しかも刃中に広がる匂の様子もわかる。刃境に沸の帯が流れ、刃中には沸の金筋が大小幾重にも走っており、これに伴って匂の調子が微妙に変化して流れているのが鑑賞できるのである。
 江戸時代後期の美しい刀の代表例と言えよう。

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