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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 長舩守光 Morimitsu Tachi

2017-04-27 | 太刀
太刀 長舩守光


太刀 長舩守光

 守光は南北朝後期の長舩鍛冶。この時代に隆盛した小反鍛冶の一人だ。本作は生ぶで、刃長二尺三寸強、反り五分九厘の姿格好から、以前に小反の名称の起こりをちょこっと説明したが、それに相当する出来。地鉄は地景を伴う板目が強く明瞭に現れ、総体にうねるような激しい様相。刃文は、研ぎべりも多少加わっているが、細直刃が浅く湾れている。刃境にほつれ掛かり、細かな金線や砂流しを形成している。このような備前刀もある。

太刀 景秀

2017-04-19 | 太刀
太刀 景秀

 
太刀 景秀

 「くろんぼ斬り」で知られる鎌倉中期の景秀は、長舩派の初祖光忠の弟。一文字風の互の目丁子に尖刃を交えたような作を特徴としたが、このような直刃出来も残している。直刃と言うよりごく浅い湾れに所々穏やかな互の目交じりと言うべきか。刃長が一尺七寸ほどで現在は脇差に分類されるが、折返し銘とされていることから本来は長い太刀。後に扱い易い寸法に仕立て直された利器である。地鉄は杢目交じりの板目肌で、鎬寄りに映りが立つ。焼刃の所々にほつれから生じた沸筋が入り、物打辺りは小互の目が交じり、所々に小足が入るなど総体に穏やかで上品な出来。帽子は湾れ込んで先尖って返る。
      

小太刀 助包 Sukekane Tachi

2017-03-31 | 太刀
小太刀 助包

 
小太刀 助包

 備前物というと、先に紹介した吉包のように互の目や丁子の組み合わせからなる刃文をまず思い浮かべるが、互の目丁子だけではない。助包は古備前鍛冶。平安時代まで遡る刀の地鉄は、本作のように密に詰み、全面に映りが立ち地斑が交じり、その中に板目が肌立つように現れるなど、鉄が一段と古風である。刃文も、互の目や丁子といった形状がなく、刃中が単に乱れているだけといった風情で、その乱れた刃沸の中に金線や砂流しが含んでいる。このような焼刃の乱れた様子を小乱刃と呼んでいる。このような小乱から始まっているのは、他国の刀工と同じだ。よく観察してほしい。刃先まで沸で乱れた中に稲妻状の金線が複雑に、いくつも光っている。
     

太刀 大慶直胤 Naotane Tachi

2017-03-22 | 太刀
太刀 大慶直胤


太刀 大慶直胤文化十一年

 二尺一分強。比較的寸法の長い作の多いこの時代の直胤に、この寸法の太刀を造らせている。備前古作の小太刀を手本としたもので、手ごろな寸法でしかも覇気に富んでいる。地鉄は小板目肌が良く詰んでいるが無地とはならず粒立って梨子地状となり、逆がかる刃文に応じた横目映りが現れている。刃文は尖り調子の互の目丁子。足が盛んに入り、出入複雑で抑揚があり、燃え盛る炎を想わせる。焼刃は匂が主調で、小沸が付くも叢になることはなく、均質。帽子は浅く乱れ込んで返る。地鉄の精緻さと明るい焼刃が魅力の出来となっている。

太刀 長舩政光 Masamitsu Tachi

2017-03-11 | 太刀
太刀 長舩政光


太刀 長舩政光

 政光は南北朝時代後期の備前を代表する刀工の一人。斬れ味が優れていることでも良く知られている。この太刀は、二尺二寸強に磨り上がって、茎の下端部に銘が残る。杢目を交えた板目鍛えの地鉄が良く詰んで、総体に映りが立ち、地沸と地景によって肌目が綺麗に浮かび上がって見える。特に物打辺りの地鉄の美しさが際立ち、刀身中ほどでは流れるような板目肌となる。刃文はわずかに逆がかった小互の目。子細に観察すると互の目の頭に小丁子が交じり、逆足が品よく入る。美しい地刃となっている。

太刀 経家 Tsuneie Tachi

2017-03-06 | 太刀
太刀 経家


太刀 経家

 だいぶ磨り上げられて銘が茎の下端部に遺されている。現状で二尺二寸半ほど。やはり後に短くして扱い易さを追求している。製作の時代は応永。地景によって綺麗に肌目が立ち、地沸や映りによっていっそう際立ち、鉄とは思えぬ質感。盛光や康光と並べられ応永備前と呼ばれるにふさわしい知名度の高い経家は、本作を見るように、名前だけでなく素晴らしい作を遺しているのだ。刃文は穏やかに抑揚する構成の小互の目を主調に、腰開き互の目、小丁子を交え、帽子も乱れ込んで先は返っている。

太刀 隅谷正峯 Masamine Tachi

2017-03-02 | 太刀
太刀 隅谷正峯

 
太刀 隅谷正峯

 人間国宝に認定された隅谷正峯刀匠は、古墳時代の古い鉄を研究することにより鎌倉時代に迫ろうとした。その研究の成果が、この足の長く入る互の目に丁子を交えた刃文構成の太刀。地鉄は板目を交えた小板目鍛えで、古風に肌立ち、刃文は互の目の頭に抑揚のある構成。足は左右に広がり、刃先近くまで延び、匂の立ち込める焼刃は明るく冴え冴えとしている。帽子は浅く乱れ込んで先小丸に返る。総体に堂々とした造り込みで、刃文も一様にならずに変化がある。
    

刀 水心子正次 Masatsugu Tachi

2017-02-25 | 太刀
刀 水心子正次


刀 水心子正次安政四年

 正次の中では最高傑作である。二尺四寸、反り六分強。平肉が付いてどっしりとしとした、鎌倉中期の備前刀を手本としたもの。地鉄は良く詰んだ小板目肌だが、その中に板目が微かに現れ、淡い映りも立って古作に近付こうとした研究の成果が窺える。刃文は互の目に小丁子、肩落風の刃が交じり、出入複雑に変化に富んだ構成で、帽子も同調して乱れ込んで返る。匂を主調とする焼刃は、匂口が締まって明るく冴え冴えとし、匂が満ちた刃中に長短に足が浮かび上がる。正次は正秀の三代目で直胤の弟子。高い技量と鋭い感性を持ち、本作のような個性的な作品を遺している。290□

太刀 長舩政光 Masamitsu Tachi

2017-02-18 | 太刀
太刀 長舩政光


太刀 長舩政光

 無銘で金象嵌が施された、南北朝時代の政光極めの作。政光は南北朝時代後期の刀工であり、南北朝時代とはいえ後期になると、鎌倉末期から南北朝中期にかけての寸が延びて幅広の豪快な造り込みとは異なり、鎌倉時代の太刀姿に戻った造り込みになると捉えればわかり易い。磨り上がって二尺三寸五分、反りは六分半、身幅の割りに肉が厚く仕立てられているところも時代の特徴。地鉄は杢目交じりの板目肌。地沸が付き映りが立ち、凄みがある。刃文は兼光風の逆がかる浅い互の目で、帽子は浅く乱れ込んで丸く返る。匂主調に締まり、小沸が付いてわずかに足が入る。華やかに、あるいは激しく乱れているわけではない。もちろんこのような出来も備前にある。

太刀 信國 Nobukuni-Saemonnojo Tachi

2016-04-26 | 太刀
太刀 信國


太刀 信國

 前回に引き続いて応永信國を代表する左衛門尉の太刀を鑑賞している。鎌倉時代の太刀姿が、鎌倉末期から南北朝にかけての騒乱の時代を経て、大きく変化したことは良く知られていること。そもそも太刀は実戦において積極的に用いられた武器と言うより、武士の象徴という意味合いがあり、実用武器は薙刀であった。それが、鎌倉末期から南北朝の実戦の時代経たことにより、太刀も斬るための武器として捉えられ、実用に即した姿格好に変えられた。先反りにその変化が現れているのだ。先反りが付いていることが、截断により効果的であることは明白。さて、信國の刃文は沸出来の互の目乱刃。互の目の頭が横に尖り調子で耳のような形になったり、時にこれが鋭く角のようになったりする。刃境には肌目に沿ってほつれ掛かり、刃中に沸が流れ、沸筋、砂流し、金線を形成している。
 
 

太刀 信國 Nobukuni Tachi

2016-04-25 | 太刀
太刀 信國


太刀 信國

 山城の刀工と言うと、来や粟田口のように緻密に詰んだ地鉄を思い浮かべるが、相州伝の影響を受けて以降は、来派も一時的ながら激しい地相の作を製作している。この信國の太刀が良い例であり、地景を交えて一層際立つ板目鍛えに沸を強く意識した焼刃を施している。地中のみならず、刃中にも鎬地にも激しく渦巻くような杢を伴う板目肌が現れ、地沸が強く、肌目を強調し、黒く澄んだ地景が強弱変化しつつ沸の焼刃を横断し、刃中でも金線として働く。刃境には肌目に沿ってほつれが和紙を引き裂いたように広がり、鍛え目はこのほつれを渦巻に変え、時に流れるように、時に波打つ磯のように景色を成している。鍛え目は物打辺りでさらに強まり、激しく乱れ込んだ帽子も渦巻き、玉状に沸が凝って先は火炎風に掃き掛ける。あまり出会うことのない左衛門尉信國の在銘の太刀である。□





太刀 波平安久 Naminohira-Yasuhisa Tachi

2010-12-06 | 太刀
太刀 波平安久


太刀 銘 波平安久



 南北朝時代の安久在銘の太刀。鎌倉時代の無銘太刀と比較しても、作風に大きな違いが見られない。造り込みこそがっしりとして、時代観があるも、鍛えは綾杉交じりの板目肌で、所々流れて柾がかり、地沸で覆われ綺麗に詰んだ中にも地景が顕著に現れて鍛え肌が強く起つ。総体にねっとりとした質感がある。焼刃も細直刃で、匂口沈みごころの刃縁には細いほつれが掛かる。帽子は焼き詰めごころにごくわずかに返る。大和伝とは言え、作風と地鉄の素質そのものも異なる故か、風合いが大和古作とは随分と異なる。


太刀 古波平 Konaminohira Tachi

2010-12-04 | 太刀
太刀 古波平


太刀 無銘古波平

 

 鎌倉時代初期の薩摩国波平鍛冶の太刀。まずは鋒から茎尻まで生ぶの姿形を鑑賞されたい。茎城の尖った様子、区上に焼き落としがあって時代の特徴も顕著。地鉄はねっとりとした古波平に特徴的な質感で、綾杉状にゆったりと流れた板目に柾目肌が絡んで肌立ち、区上辺りには疵気がある。匂口の沈んだ細直刃もこの派の特徴。細かなほつれが絡んだ焼刃は、区上から鋒まで一様に施されている。
薩摩国の波平派は平安時代に始まり、『平家物語』などにも登場するほどに知名度が高かったようである。この作風は大和鍛冶の伝法を受け継いだもので、以降、この作風は室町時代まで続いている。


太刀 國資 Kunisuke Tachi

2010-11-13 | 太刀
太刀 國資


太刀 銘 國資



 鎌倉時代後期の肥後延寿國資の在銘の太刀。最高傑作と言って良いだろう。地鉄は緻密に詰んだ小板目鍛えで所々柾がかった板目を交え、九州物にあるような白っぽい映りではなく、山城本国物にみられるような鮮明な沸映りが区から先まで嫌いに乱れて立ち現れ、しっとりと潤いに満ちた肌合いとなる。
 延寿刀工は山城京の来派の流れで國村に始まる。その子が國資。中央の作刀文化を肥後国に伝えるも、その地域の風土に適合した刀造りの至るものだが、國資は延寿の中でも殊に技量優れ、本国物にまぎれる作品を遺している。
 小互の目乱の焼刃は匂に小沸が交じって冴え、匂口深く明るく、出入りは國俊ほど激しい乱ではないが品良く変化している。刃中には京逆足の交じった足が入り、葉入り、金線砂流わずかに入って湯走り掛かり、帽子は焼詰風。鑑賞会の鑑定刀に出題された際、京本国の来國俊や國光と鑑定した方が多くおられたということからも、この太刀の質の高さが窺い知れよう。□


太刀 則常 Senoo-Noritsune Tachi

2010-10-28 | 太刀
太刀 則常

太刀 銘 則常

 

 時代の上がる備中青江鍛冶で妹尾と呼ばれる則常(のりつね)の太刀。わずかに磨り上げられて折り返し銘とされているが、鎌倉時代前期の姿を留めて品位が高い。この太刀の大きな特徴は、地鉄に現われている鮮明な映り。青江次直でも紹介したように、鯰の肌模様に擬えた呼称で、まさにそれに似た叢のある肌合いが現われた作例。緻密に詰んだ板目鍛えの地鉄の、焼刃寄りが一段黒く深く沈んだ暗帯となり、鎬寄りに白く乱れた映りが鮮明に現われる。写真を見ても理解できよう。映りは写真に写らないのが普通だが、この作では良く分かる。ここを楽しんでほしい。焼幅の広い直刃調刃中には小足、葉、沸筋盛んに働き、ここにも青江物の特徴が良く現われている。□