刀 三原貝正興 2017-09-14 | 刀 刀 三原正興 刀 三原貝正興 同じ室町後期天文頃の三原正興の刀。先に紹介した正興とは、地鉄の質、刃文と刃中の働きがよく似ているのは当然だ。ほとんど同じ説明文となるだろう。帽子だけ、掃き掛けが強い点が異なる。
刀 三原正興 Masaoki Katana 2017-09-14 | 刀 刀 三原正興 刀 三原貝正興天文十二年 室町時代後期の三原鍛冶。二尺三寸強。一寸弱の磨り上げだが、原姿が良く判る。三原派の板目肌が流れて柾がかった地鉄は伝統のものであろう、時代が降っても肌目が強く現れている。もちろん柾目が強く強調されたものもあるし、杢が強く意識された作もある。刃文は中直刃。小沸出来の焼刃は刃境が小さくほつれ、帽子は肌目に沿って掃き掛け、わずかに返る。
刀 重明 Shigeaki Katana 2017-09-11 | 刀 刀 重明 刀 重明 室町後期永禄頃の備後国五阿弥派の工。備後国では三原派の活躍が良く知られているが、少し先行する工として国分寺助國がいたことは以前に紹介した。南北朝時代以降の活躍工では辰房派、鞆派、五阿弥派、三原の流れを汲む法華派が知られ、いずれも名作を遺している。この重明は、永禄頃だから備前国では祐定や清光が活躍していた。そのような影響を受けたものであろうか、この刀は清光に紛れるような出来。物打辺りから鋒にかけての刃文にその雰囲気が窺える。地鉄は板目肌が良く詰んで地沸が付き、乱れた映りが立つ。刃文構成は湾れに互の目交じり。物打辺りが焼崩れて地中に盛んに働き掛かり、帽子は一枚風。
刀 高田時行 Tokiyuki Katana 2017-09-05 | 刀 刀 高田時行 刀 高田時行 南北朝時代中期の豊後国高田時行の、大磨上無銘の刀。腰反りのある原姿が窺え、先反りが付いていかにも実用の打ち合い截断に適した造り込み。時代を映して先幅も広く、切先が延びて迫力がある。二尺三寸強。元来は三尺ちかくあったろう。重ねも厚い。南北朝時代の太刀は重ねが薄いと言われるが、実際にはかなり重ねの厚い作もあり、総てが薄いわけではないことを記憶しておくべきであろう。地鉄は備前物を見るような杢を交えた板目肌。豊後刀には備前物に紛れるものがあるとの評価はこの刀でも感じられる。刃文は浅い互の目で所々に足が入り、帽子も調子を同じく浅く乱れ込んで先は焼き詰め風にごくわずかに返る。小沸が付いて刃縁締まり、ほつれ掛かり、金線や砂流しが掛かる。
刀 延寿 Enju Katana 2017-08-29 | 刀 刀 延寿 刀 延寿 南北朝時代の延寿と極められた刀。元来は二尺七寸以上の大太刀であったもの。山城古伝の小板目鍛えを基調に、小杢を交え細かな地景が交じって所々肌立つ。刃文は沸に匂を交えた端正な直刃調子の浅い湾れ刃で、刃境が細やかにほつれている。帽子は掃き掛けを伴い、わずかに二重刃に感じられるところもある。 筆写以外にも、地方鍛冶を低く評価することに疑問を持っておられる方も多いようだ。地方の特徴を理解することが目的であるにもかかわらず、本国に比較して一格落ちるだとか、品位が下がるなどとは、何の説明にもなっていないことが良く判るであろう。
薙刀直し刀 左弘安 Hiroyasu Katana 2017-08-22 | 刀 薙刀直し刀 左弘安 刀 左弘安 二尺四寸以上の大薙刀を刀に仕立て直した作。左弘安と極められている。南北朝時代中期らしいたっぷりとした造り込み。適度な柄が備わっていたらと想像すると、戦場での迫力と凄みは尋常ではなかろうと思う。最強の武器であったろう。江戸時代には、先に紹介した大磨上の脇差と共に大小とされていた、などと想像すると面白い。地鉄は杢目まじりの板目肌で、縮緬状に大きく揺れて激しさが感じられる。刃文は互の目が顕著で、所々に尖刃が交じる。刃中はほつれ、砂流し沸筋が入り、相州伝の色合いを強く示している。帽子に左文字伝が窺える。
刀 左安吉 Yasuyoshi Katana 2017-08-08 | 刀 刀 左安吉 刀 左安吉 南北朝中期の左文字一門の作。即ち末左と呼ばれる一群。その安吉と極められたもの。安吉は左文字の子と伝えられている。このように左文字の子や弟子、ちょっと時代が降って孫弟子の辺りまでの、左の特徴を伝えている作品を末左と呼んでいる。決して室町時代まで下った左の末流というわけではない。末左とは南北朝時代の作である。元先の身幅が広く、大鋒。揺れるような杢目を交えた板目鍛えの地鉄は、地景によって綺麗に肌立ち、地沸が絡んで冴え冴えとしている。刃文は互の目を交えた湾れ刃で、匂が主調に、小沸が付いて、ここも冴えている。左文字が相州振りを強くしたのに対し、その影響を受けながらも、互の目や小互の目、丁子などが顕著となっている。
刀 二王 Nio Katana 2017-07-24 | 刀 刀 二王 刀 二王 南北朝時代の周防国、二王鍛冶の作。大磨上無銘で、元先の身幅が広めに鋒は延び調子。地鉄が凄い。板目に杢を交えた地鉄はねっとりと詰み、その中に躍動感に溢れた肌目が浮かび上がり、さらに斑状の映りが立つ。古作の魅了横溢の出来だ。刃文は細直刃。大和古作の通りにほつれ、喰い違い、二重刃などが濃密に働き、帽子はわずかに掃き掛けを伴って先小丸に返っている。特に所々に連なる二重刃の妙は譬えようがない。
刀 波平貞安 Sadayasu Katana 2017-07-19 | 刀 刀 波平貞安 刀 波平貞安 室町中期の波平。南北朝時代以前の波平とはずいぶん様子が異なっている。この間に地域の権力闘争があったことを示している。即ち、波平の本拠谷山を治めていた谷山氏が、島津氏との戦いに敗れているのだ。波平鍛冶に関して眺めると、古風な焼刃から後に本作のように備前伝を加味した作風へと大きく変わっている。頗る面白い流れである。もちろんこのような動きは、青江鍛冶の衰退などにも表れているようだが、刀鍛冶の衰退までは歴史に記されていないので、刀だけでなくその背後を研究してみると新たな発見があって面白いと思うのだがどうだろう。
刀 薬師堂通吉 Michiyoshi Katana 2017-07-10 | 刀 刀 薬師堂通吉 刀 薬師堂通吉 修験鍛冶の影響は九州諸国に及んでいる。日向国の薬師堂は、京の歌人が病気平癒の祈願に訪れたという伝承があるように有名な修験行者の地。この薬師堂の門前辺りで刀を製作していたのが通吉である。銘に「薬師堂」と切り添えるという。地鉄は板目が流れて柾状に揺れ、地沸が付いて頗る古調。肌立つ風が強く、実戦の武器という印象がある。斬れそうだ。刃文は互の目。刃境が複雑で、沸付きやはり匂口が潤んだ態となる。日州通吉は伝説的な鍛冶であり、作品をほとんど見ない。本作は、そういった意味でも貴重な作例だ。70□
刀 月山 Gatsan Katana 2017-07-05 | 刀 刀 月山 刀 月山 室町時代の月山在銘の刀。地中に杢目が連続して焼刃辺りで綾杉肌となっている。とても古調な、しかも綺麗な綾杉鍛え。こうしてみると、綾杉鍛えの本質が杢目の連続であることが判る。とはいえ、どのように杢目を連続させるのかは、刀工の秘伝と言われる。現代でも綾杉鍛えをする月山系の刀匠がおられるも、筆者は訊ねたこともない。不思議さが充満した技術であるわけで、知らない方が良いのかもしれない。地中の杢から変化した綾杉肌に目を奪われるのも良いが、刃中のこの綾織りのような複雑な景色に感動したい。これこそ奥羽鍛冶の魅力の一つだ。
刀 月山 Gastsan Katana 2017-07-04 | 刀 刀 月山 刀 月山 横手筋を設けない冠落しの造り込み。凄みのある陰影だ。地鉄が凄い。いかにも実用の武器と言った様子で、截断能力の追求が窺える。棟重ね一分八厘に対して鎬重ねが二分四厘だから、断面が菱型。打ち合いにも強く、斬り込んだ刃の抜けも考慮されている。南北朝時代から室町初期の作だ。物打の焼刃が深く乱れが強いのは単なる焼刃の美観を考慮したものでないことは、想像できよう。疵気など全く気にしていない武器だ。綾杉鍛えが鮮明で、古調な映りが立ち、刃文は直刃で、鍛え肌と感応したほつれが働きとなっている。
刀 舞草 Mogusa Katana 2017-07-03 | 刀 刀 舞草 刀 舞草 鎌倉時代の舞草の特徴が表れている作。地景を交えて大きく揺れる板目肌は、総体に良く詰んでおり、綾杉鍛えの上作と言い得よう。細直刃の刃境には肌目によりほつれが現れ、繊細に揺れて流れる。帽子も揺れて掃き掛けている。直刃だが、刃中にも肌目が現われており、ほつれ状の働きを成している。刃中の働きはそのまま帽子へと連続し、先端は掃き掛けが鮮明で丸みを帯びて返っている。
薙刀直し刀 備中國住人貞次 Katana Sadatsugu 2017-06-28 | 刀 薙刀直し刀 備中國住人貞次 薙刀直し刀 備中國住人貞次作 物打辺りの身幅が広く張りのある姿格好で、薙刀樋があり、棟が削がれていることから、長巻と呼ばれる大薙刀を打刀に仕立て直した作。南北朝後期の貞次の銘が遺されている。薙刀は刀以上に実戦的攻撃的な武器である。それが故に健全な薙刀の姿で遺されている例は少ない。このように刀に直されてしまったものや、戦場で使い果たされてしまったからだ。このように刀に直すと堂々としていることから、戦国武将や、江戸初期の傾いた武士の嗜好に適ったものと思われる。地鉄は、武器であるにもかかわらずとても美しい。微塵に詰んだ小板目肌の中に板目や杢目が現れ、流れるような景色を生み出している。このようなところも武士に好まれたのであろう。刃文は直刃に小足入り。帽子も調子を同じくしているが、鋒の反りを矯正したため、刃文は棟側に抜けている。
刀 青江 Aoe Katana 2017-06-23 | 刀 刀 青江 刀 青江 鎌倉後期の青江極めの刀。杢目を交えた板目肌が、肌目に沿って地景が交じるために肌が綺麗に現れて、しかも全面が均質な詰み方で、綺麗に揺れて縮緬肌風となる。ものすごく綺麗だ。刃文は小沸出来の直刃調だが刃中は小模様に乱れ、盛んに足が入り、物打辺りには砂流し沸筋が掛かる。刃境は沸でほつれており、これも綺麗だ。このような肌があることから青江物の人気が高まったようだ。刃文は、逆丁子より、このような直刃や、もう少し時代が下がって南北朝期の、匂口の締まった直刃に鋭い小足の入る出来が、落ち着いており好まれるようだ。