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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 青江 Aoe Katana

2017-06-19 | 
刀 青江


刀 青江

 南北朝時代初期の青江の太刀。大磨上無銘。杢目を交えた板目肌が縮緬状に綺麗に揺れて良く詰んでおり、写真では分かり難いが映りが立ち、しっとりとした質感がある。古青江から百二十年ほど降っている。古青江の時代はもっと肌立つ感があったが、かなり詰み澄んでいる。刃文は匂出来の簡潔な細直刃。刃境にほつれが掛かり、細い刃中には淡い鼠足が入る程度。これも激しい逆丁子出来を想うと間違う。地鉄に特徴がある。



刀 青江 Aoe Katana

2017-06-17 | 
刀 青江


刀 青江

 南北朝時代初期の青江の太刀。大磨上無銘。杢目を交えた板目肌が縮緬状に綺麗に揺れて良く詰んでおり、写真では分かり難いが映りが立ち、しっとりとした質感がある。古青江から百二十年ほど降っている。古青江の時代はもっと肌立つ感があったが、本作はかなり詰み澄んでいる。刃文は匂出来の簡潔な細直刃。刃境にほつれが掛かり、細い刃中には淡い鼠足が入る程度。これも激しい逆丁子出来を想うと間違う。縮緬状の地鉄に特徴がある。



刀 青江 Aoe Katana

2017-06-13 | 
刀 青江


刀 青江

 備中国の「青江」は何伝でしょうかと聞かれたことがある。青江鍛冶の作風は、近隣の備前のそれとは風合いが異なる。三原物に近い出来があることから、大和伝に含めるという人もいる。古青江は、平安時代に古備前鍛冶から分流したものと推考している方もいるが、断定は難しい。五箇伝と絡めないのが普通だ。「青江」というと、なぜか特殊な刀のように感じられるのである。鎌倉時代中期以前の、古青江は、とても古風であるが、その後から南北朝期の青江の時代に入ると、匂口の締まった直刃出来や逆丁子出来に特徴が強く現れるようになる。話題に上る「ニッカリ青江」などは刃文構成が逆丁子で、燃え盛る炎を想わせる。写真の刀は研磨によって直刃調に見えるのだが、実は逆丁子が交じる出来だ。日本刀の本を見ると、必ず「五箇伝」に関する記述が出てくる。作刀技術は「五箇伝」に必ず収まると考えている方が多いようだが、もちろんそれぞれが影響し合い、他国の技術を採り入れるなどして五箇伝に収まらない作風もできる。そういった五箇伝にこだわらずに、刀工の良さを鑑賞したい。

刀 高田 Takada Katana

2017-05-18 | 
刀 高田


刀 高田

 南北朝時代の豊後刀工。この時代は、他国と同様に大ぶりの太刀が用いられていたことから、後に磨り上げられて二尺二、三寸前後とされたものが多い。元先の身幅が広く、典型的な造り込み。地鉄は板目鍛えで所々に杢目が交じり、地沸が付いて地景も交じる。備前肌によく似ている。刃文は、浅い互の目に湾れ交じり。これも備前刀にある構成。焼刃は匂に小沸を交えており、刃境がわずかにほつれ掛かり、短い足が所々に入る。帽子の雰囲気が備前刀とはちょっと異なる。浅く乱れ込んで先は大丸風に掃き掛けを伴いほぼ焼き詰め。備前刀に似ているということは、どの時代に学んだのだろうか、あるいはまったく備前刀とは交流なしに似たような作風に行き着いたのだろうか。


刀 平高田 Takada かたな

2017-05-17 | 
刀 平高田


刀 平高田

 磨り上げ無銘の刀で、戦国時代の豊後国の高田鍛冶の作と鑑られる作。姿格好など一見して戦国時代後期の備前刀だ。刃文も小沸に匂の交じった、備前刀風の足の入る互の目に丁子交じり。地鉄は杢目を伴う小板目鍛えで、細かな地景を交え、白っぽく感じられるところがある。良く見なければここも備前刀に紛れる。帽子は乱れ込んで掃き掛ける。このような出来があることにより、豊後刀は備前刀に紛れると言われる。備前鍛冶に学んだものであろう。特に古刀期の刀が備前刀に似ている。新刀期も降ると、地鉄は細やかな小板目肌に変ってゆく。平高田とは、古刀期の豊後高田鍛冶のこと。対して新刀期には藤原姓を用いたことから藤原高田と呼び分けられている。
    

刀 統行 Muneyuki Katana

2017-05-16 | 
刀 藤原統行


刀 藤原統行

 これも江戸時代初期の豊後刀。元先の身幅が広く鋒延びて総体がどっしりとしており、南北朝時代の大太刀の磨り上げ物を肉厚く仕立てたような造り込み。出来は、やはり長舩清光風のところが窺える。地鉄は良く詰んだ小板目風に見えるも、その中に板目が表れて地沸が叢付き、刃境からの湯走りが地に溶け込むなど見どころは多い。匂主調の刃文は直刃を基調に小足、鼠足が入り、肌目に沿って流れるような沸筋砂流しも窺える。帽子は調子を同じくして浅く乱れ込み、先掃き掛けを伴い浅く返る。

刀 藤原統景 Munekage Katana

2017-05-15 | 
刀 藤原統景

 
刀 藤原統景

 備前刀に似ているのが、豊後刀工の作だ。この造り込みを見ても分かると思う、先に紹介した清光によく似ている。この統景は慶長頃。戦国時代から連続しており、江戸時代とは言え、まだまだ古刀だ。地鉄は板目交じりの小板目肌が良く詰み、鎬寄りに映りが立つ。刃文は直刃に湾れ交じり。匂口締まり調子で鼠足が盛んに入り、物打辺りから乱れが交じり、焼幅も広くなって帽子は浅く乱れ、やはり焼深く返る。先の清光に合わせて湾れ調子の刃文を選んだが、もちろん互の目丁子の刃文もある。
  

刀 長舩清光 Kiyomitsu Katana

2017-05-13 | 
刀 長舩清光

 
刀 長舩清光天文十二年

 元幅だけでなく先幅も広く、重ね厚く、比較的がっしりとした、戦国時代末期の造り込み。地鉄はこの一門としては小板目状に良く詰んで、一見無地風にも感じられる極上の肌合い。その中にかすかに板目が交じっている。刃文は焼幅の広い直刃に湾れを交えたこの工らしい構成。帽子はもちろん激しく乱れ、一枚風に焼も深い。小沸の焼刃は、鼠足とも呼ばれるようなごくごく短い足が入り、刃中には葉が断続、沸ほつれから連続する砂流しと沸筋が掛かる。刃境はこのように乱れが交じり、単純な直刃とならないのが清光。備前刀の刃文は多彩である。
  

刀 春光 Harumitsu Katana

2017-05-10 | 
刀 春光


刀 春光元亀四年

 十郎左衛門尉春光という刀工は興味深い存在である。祐定や清光の名前に隠れてそれほど作品が多く残されているわけではないのだが、存在する作はいずれも出来が良い。注文作も多く存在する。地鉄が綺麗で強みがあり、戦国時代末期ながら映りが立ち、刃文は帽子の返りが深く先端ちかくに棟焼が施された作が多いのも特徴。この刀も、地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで映りが立ち、刃文は逆がかる互の目に湾れ交じり。


刀 倫光 Tomomitsu Katana

2017-05-02 | 
刀 倫光


刀 倫光

 これも大磨上。二尺三寸強の刀。元先の身幅が広く重ねもしっかりとしている。倫光には三尺の大太刀が現存している。三尺の焼刃を均一に焼くことの難しさは、想像もつかない。これも地鉄は良く詰んだ小板目肌と蝉の羽状の板目が交じって映りの立つ、特徴的な肌合い。刃文は湾れを主調に小模様の互の目が交じる。ほとんど湾れか、浅くしかも腰の開いた互の目で、湾れとも互の目とも判じ得ないような調子。兼光にも似ているところがある。帽子は、先端が尖って返っているところが面白い。

刀 義光 Yoshimitsu Katana

2017-04-26 | 
刀 義光


刀 義光

 義光は備前長舩鍛冶の正系兼光の弟。南北朝中期の、元先の身幅が広く刃先が鋭く仕立てられた、同時代の典型的な造り込み。地鉄は兼光以上に緻密に詰んでおり、直刃ながら乱映りが顕著に表れている。これを写真で紹介できないのが不甲斐ないところだ。刀は手にとって鑑賞するものだと何度も説明しているのだが、この刀の映りの迫力は例えようがない。鎬寄りから垂れ込むように焼刃に迫り、所々焼刃に溶け込むように働いているのだ。刃文は浅い直刃に感じられるが、小さな互の目丁子が交じっている。帽子は調子を同じくしてほとんど焼き詰め。姿は兼光そっくりで、地刃の調子は景光や兼光に似たところがある。

刀 長舩清光 Kiyomitsu Katana

2017-04-25 | 
刀 長舩清光


刀 長舩清光

これも戦国時代後期の清光。元先の身幅広く重ね厚くがっしりとした造り込みで、帽子が延びている。杢目交じりの板目肌が綺麗に詰み、細かな地景で肌が鮮明に立ち、地沸が付いて清浄感に溢れている。ここに施されているのが端正な直刃。乱れることなく元幅から先まで連続しているが、物打辺りの刃中に足が入り匂が広がり、沸筋が流れる。このように物打辺りに乱れを交えたり沸を付けたり、湯走りを配したりと、変化のあるのが清光の刃文の特徴だ。帽子の焼の深さや調子が表裏異なるのが常だが、本作は表裏とも綺麗に丸く返っている。特別の仕立てであろう。

刀 長舩清光 Kiyomitsu Katana

2017-04-24 | 
刀 長舩清光

 
刀 長舩清光天正五年

 直刃を得意とした戦国時代後期の備前刀工と言えば、この清光がまず挙げられよう。しっかりとした造り込みに焼幅広い直刃を焼き、帽子は乱れ込んで、時には表裏の焼込みを違えて変化に富み、物打辺りには湯走りなどをほどこし、直刃基調ながら乱れ調子となるものが多い。この刀も、直刃に小足が入り刃縁ほつれ、砂流しが入り、特に物打辺りに帯状に沸が流れ、一部に杢に伴って渦巻き肌も現れている。乱れ込んだ帽子は先が掃き掛けて返る。単純に直刃と言って良いのだろうか、と感じる複雑な刃文構成である。
    

刀 小反 Kozori Katana

2017-04-22 | 
刀 小反


刀 小反

 南北朝時代の小反と極められた磨り上げ無銘の刀。この状態で二尺三寸強だから、小反とはいえ、かなり寸法が長かった。因みに、小反の呼称は、南北朝初期から中期の大太刀に対する小太刀、あるいは大反に対する小反、刃文の大模様に対する小模様のように、いずれも小振りになっているところからと考えられている。南北朝中期以降に急激に刀工の数が増大した長舩鍛冶は、正系に対して、こぞって増えたことからこれらの刀工を小反と呼んだという説を提示した研究家もいるようだが、筆者は前説を採る。地鉄は綺麗に詰んだ杢交じりの板目肌。刃文に迫るように乱れた映りが立つ。刃文は穏やかな互の目だが、足が長く入らないことから互の目に見えない。刃縁がほつれ掛かり、これらによる乱れで、小模様ながら変化に富んでいる。帽子も浅く乱れ込んで返る。無銘ながら上出来の作である。

刀 貞弘 Sadahiro Katana

2017-04-21 | 
刀 貞弘


刀 貞弘永和三年

南北朝時代後期の長舩貞弘の、平造の刀。いわゆる南北朝体配の一つに、このような平造がある。「水神切兼光」が良い例だ。水神切兼光もそうだが、互の目丁子出来ではない。兼光の場合は相州伝の影響御を受けた焼刃で、この貞弘の場合にはいわゆる小反と分類されている南北朝時代後期に隆盛した備前刀工群の一人。刃文が小模様に乱れているのが特徴。小反は、専ら南北朝初期から中期の大造の太刀に比較して扱い易い小振りの太刀を製作しており、この平造に関しては、先幅たっぷりとした姿だが寸法が一尺九寸ほど。今では脇差に分類される寸法だが、当時は片手で扱う刀。さぞ革鎧などがばっさりと斬れたであろう。杢目を交えた板目肌が肌立つ傾向にあり、凄みのある映りが立っている。