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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 長信 Naganobu Katana

2017-10-20 | 
刀 長信


刀 長信

二尺二寸五分、樋を掻いて重量を軽減した扱い易い刀。造り込みの基礎は南北朝時代にあるが、地鉄は小板目肌が良く詰んでおり、微妙に質のことなく鉄を交えたものであろう、綺麗に肌目が浮かび上がって見える江戸後期のもの。刃文が互の目丁子で、備前伝。焼頭に高低抑揚があり、足はやや下方に射し込んでいる。匂口柔らかく、明るく冴えている。

刀 雲州藩高橋長信 Naganobu Katana

2017-10-19 | 
刀 雲州藩高橋長信


刀 雲州藩高橋長信文久二年

 幕末を代表する刀工の一人、高橋長信は冬廣の末孫に学んで冬廣家を継いだ鍛冶、即ち冬廣流の刀工になるが。作風は、南北朝時代の大太刀を磨り上げたような、元先の身幅が広く、鋒延びて刃先鋭く、互の目、大互の目などを焼くを特徴とした。この刀は、刃長二尺二寸六分、反り五分、細やかに詰んだ小板目鍛えに地沸が厚く付き、冴え冴えとした地刃。沸強く深く、刃境から刃先に向かって沸が淡く溶け込み、刃中は透明感がある。遠祖の相州風を感じさせない、江戸期の清新さに溢れている。

刀 冬廣作 Fuyuhiro Katana

2017-10-18 | 
刀 冬廣作


刀 冬廣作

 これも藤左衛門尉冬廣。冬廣の初代は若狭に移住した相州次廣の子と伝え、相州に学んだ後に故地若狭に戻って本拠としており、その門流はいずれも戦国武将の信頼高く、伯耆、備前、備後、出雲で活躍、新刀期においても山陰から山陽にかけての各地で根を張るように技術を定着させ、江戸末期まで栄えている。この刀は、常に比して元先の身幅が広く中鋒延びて張りがあり、鎬が高く仕立てられて堂々とした造り込み。板目鍛えの肌間が小板目状に密に詰んで極上の質感を呈し、肌目に伴って繊細な地景が縫い、微細な地沸が全面を覆って淡い映り状の動感のある景色が展開している。刃文は湾れに穏やかな互の目を交え、帽子はごく浅く乱れて丸く返る。匂口の締まった焼刃は冴え冴えとして明るく、地中の地景が刃境を越えてほつれを伴う金線となり、互の目に生じた長短の足を切って流れ、匂が立ち込めて明るい刃中にも幾層もの金線と匂の砂流しが元幅から先まで断続している。□

刀 雲州住冬廣作 Fuyuhiro Katana

2017-10-14 | 
刀 雲州住冬廣作


刀 雲州住冬廣作

 二尺二寸強、使いやすい寸法だ。反り深く、腰に彫物が映えている。地鉄は地景を伴う板目が強く現れ、地沸が付き湯走りが掛かって凄みがある。相州地鉄だ。刃文は尖刃交じりの互の目乱刃で、刃境に小沸が付いて明るく冴え、帽子は掃き掛ける。肌目に沿った細い沸筋が刃中を走り、淡い砂流が掛かり、互の目の頭がわずかに割れて矢筈風となっている。

刀 冬廣 Fuyuhiro Katana

2017-10-07 | 
刀 冬廣


刀 冬廣

 大和鍛冶金房派が大和古伝に新たな作風を採り入れたように、室町時代も降ってくると、各地の刀工が古法に新たな作風を加味した刀が製作するようになる。新刀期の到来間近といったところ。いつの時代においても少なからず刀工の移動があるものだが、戦国時代には刀匠が各地の武将の需で移住しており、移った先の伝法を採り入れてゆくのであろうか、そのような動向は面白いと思う。以前に美濃刀工の活躍を説明したこともある。冬広は、そもそもは相州鍛冶。若狭国に移住して栄え、さらに求められて西国へと活躍の場を広げた。
 本作は細直刃出来の刀。輪反り深い太刀風の造り込み。地鉄は杢を交えた板目肌が小板目肌の中に肌立ち、焼刃に迫るように映りが立つ。細直刃はわずかに湾れ、帽子も端正に丸みを帯びて浅く返る。冬広というと相州色の現れた互の目乱刃を思い浮かべるが、本作は特別の注文であろうか、端正な直刃。上身を見ただけでは冬廣が思い浮かばない。

刀 金房左衛門尉政定 Masasada Katana

2017-10-06 | 
刀 金房左衛門尉政定


刀 金房左衛門尉政定

 南北朝時代大太刀を磨り上げたような姿格好。戦国時代末期の大和金房派に間々みられる造り込み。この刀は特に身幅がたっぷりとし、先反りと共に物打辺りが張り、大鋒も加わって迫力がある。地鉄は板目肌が小模様に詰んでおり、地沸が付き、上部に施された皆焼調の焼刃による地沸が付き、その中に湯走り沸筋が流れる。刃文は匂口の締まった互の目丁子。特に刃境が複雑に乱れ、深い焼からなる激しい景観が特徴的。大和には、古調な大和物そのままを踏襲した末手掻と呼ばれる室町時代の手掻派もいるのだが、金房派には、古鍛法を伝えながら、直刃ではなく互の目丁子を焼いた作が多いというのは面白い。

刀 兵衛尉政次 Masatsugu Katan

2017-10-05 | 
刀 金房兵衛尉政次


刀 南都住藤原金房兵衛尉政次

同田貫に似た存在感を示しているのが金房派だ。活躍期は同じ戦国末期で、身幅広くがっしりとした刀を遺している。奈良の鍛冶である。この、腰元に剣巻龍の彫刻を施した刀は、政次としては珍しいもので、骨喰藤四郎を手本とした作。地鉄は特詰んだ板目肌で細やかな地沸が付き細い地景で肌目が綺麗に起っている。刃文はこの工の特徴的な小さく乱れる互の目丁子で、刃中に葉と足が盛んに入り、景色は複雑。帽子も調子を同じくして乱れ込み、先掃き掛けてわずかに返っている。刃長は二尺一寸弱の片手で扱うに適したもの。元先の身幅が広く、見るからに金房らしい、しかも優れた出来。

刀 金房兵衛尉政次 Masatsugu Katana

2017-10-04 | 
刀 金房兵衛尉政次


刀 南都住藤原朝臣金房兵衛尉政次天正九年十一月日

 二尺七寸強、反り九分強、これに対して身幅は一寸一分。寸法に比較して身幅が狭いようだが、この寸法に合わせて身幅を広くしたのでは、容易には扱えない。だから適度な身幅に仕立てたのだろう、この刀は重いもののバランスが良い。大鋒もこの工の特徴。地鉄は板目肌。刃文は複雑に、小模様に乱れた互の目小丁子。逆がかるところがあり、足と葉が入り乱れている。帽子は掃き掛けを伴い小丸返り。刃境には金線、細かな沸筋が入る。手許にある刀剣書をパラリと捲ったところ、金房鍛冶について「同田貫と同様に下作鍛冶」とあった。ひどい言いようだ。不当な評価だ。そんなことあるものか。金房派は室町時に隆盛したことから、手掻派の流れと考えてよいだろう、優れた刀槍を遺している。このような書き方をする研究者は、実は刀剣を好きではないのだと思う。


刀 藤原國勝(同田貫) Kunikatsu-Doudanuki Katana

2017-10-03 | 
刀 藤原國勝

 
刀 藤原國勝

 同田貫國勝の頑丈な造り込みの刀。國勝は後に正清より清の文字を賜って清國と改銘している。元先の身幅広く、鎬が張って刃先は鋭く、大鋒。革具足、鉄具足などかまいなく攻撃できるような考え方であろう。地鉄は縮緬状に揺れる板目肌で、大きな疵気はないものの肌立ち、強みが感じられる。刃文は焼幅の広い湾れで、帽子は乱れ込んで返り、棟焼に連続する。焼刃は匂口の沈んだ調子で小沸が付き、堅物斬りを想定した印象がある。どのような働きをしたのであろうか、健全度高く今に伝えられている。
 

 

刀 同田貫兵部 Hyoubu Katana

2017-09-29 | 
刀 同田貫兵部


刀 九州肥後同田貫兵部

 二尺一寸強の片手打ちの刀。茎も応じて短く仕立てられている。身幅と重ねは尋常、片手で打ち振るに適した造り込み。豪快な同田貫を思い浮かべるとこのように優しい造り込みもあるので、人によってはがっかりするのではないだろうか。でも地鉄と焼刃は上質の同田貫だ。板目肌の鍛着が強く流れるような肌が地景によって浮かび上がり、沸付き映りが立ち、凄みがある。刃文は湾れ交じりの互の目乱で、匂口の潤んだ焼刃に砂流、沸筋が激しく掛かり、これが帽子にまで連続して掃き掛けとなり、わずかに返る。これぞ同田貫の上作と言い得る出来。140□

刀 肥後同田貫上野介 Kouzukenosuke Katana

2017-09-28 | 
刀 肥後同田貫上野介


刀 肥後同田貫上野介

 同じ上野介の刀。こうして眺めると、地鉄の綺麗さ、詰みよう、地沸や地景の様子などはよく似ている。刃文は湾れに小互の目が交じり、刃中は沸筋、砂流し、金線が渦巻くように入る。帽子も調子を同じくして浅く乱れ込み、先掃き掛けてわずかに返る。刃文は薙刀の出来に良く似ている。二尺三寸強、幅広く肉厚くがっちりとしている。「同田貫」は、言い難いのでつい「どうたぬき」と呼んでしまうが、「どうだぬき」と読む。だから、刀身の平肉がたっぷりとして狸の胴体のようだというのはまったくの創作。決して肉厚の刀ばかりを製作していたわけではない。ごくごく穏やかな作もある。



刀 肥後同田貫上野介 Kouzukenosuke Katana

2017-09-27 | 
刀 肥後同田貫上野介


刀 肥後同田貫上野介慶長十六年

 上野介は正國と同人。同田貫派というと、先の薙刀のように地鉄が強く肌立っている作風を想い浮かべるが、本作のような頗る地鉄の綺麗な刀も遺している。板目肌が良く詰んで小さく肌立ち、細かな地沸で覆われ、所々に淡い湯走りが掛かる程度。刃文は小互の目で、帽子は浅く乱れ込んで先わずかに掃き掛けて返る。匂口の沈んだ焼刃は凄みがあり、刃中には小足、砂流し、金線が穏やかに働く。先の薙刀とはずいぶん印象が異なっている。





刀 同田貫 Doudanuki Katana

2017-09-21 | 
刀 同田貫

 
刀 同田貫

 元来は寸法が長く、身幅広く重ねの厚い豪快な刀。磨り上げられて無銘。総合的な出来から同田貫派の作と極められている。同田貫派というと、戦国期の実戦武器という印象が強く、大身槍や大薙刀が思い浮かぶ。刀も応じてがっちりとしたものを製作しており、頑強な鉄製の具足や兜に対する武器、即ち堅物斬りの印象がある。ところが同田貫派の作は斬れ味が良いことも知られている。劇画の題材にとられる理由も良く判る。折れ難さを追求すると、柔軟性が高められて斬れ味が劣るような印象があるも、同田貫鍛冶はそれを払拭した。この同田貫極めの刀は、地鉄は板目肌が強く現れて地沸が付き、映りが立ち、刃文は湾れ調子に沸が深く付き、刃中に砂流し、金線、沸筋が盛んに入る。刃文が判らないような乱れ方をしている。これが同田貫派の特徴なのかというと、実際には刃文構成が多彩である。直刃調、互の目や丁子が顕著な刃文、匂口が明るく冴えた刃文、逆に匂口が沈んで焼刃があるのかわからないような出来もある。





刀 長浜住正廣 Masahiro Katana

2017-09-21 | 
刀 長浜住正廣


刀 長浜住正廣天文十三年

 戦国時代の石州長浜住人正廣の刀も珍しい。作風は、備前の影響を強く受けているとみられ、板目鍛えの地鉄に直刃出来。刃中は匂に小沸が交じり、刃境がほつれ、ごく淡い足が入る。物打から特にほつれが強まり、清光に見られるように浅く乱れ、これが焼崩れた帽子にまで連続している。作品を多く見たわけではないので、これが正廣の主たる作風であろうかは断言できないが、備前刀の影響を受けていると捉えれば、大きく見違えることはないだろうと思う。

刀 石州貞綱 Sadatsuna Katana

2017-09-15 | 
刀 石州貞綱


刀 石州貞綱

 南北朝後期の貞綱と極められた作。南北朝中期までの大振りな造り込みから古作に戻ったかのような姿格好。地鉄は良く詰んだ小板目肌に見えるが、繊細な地景で杢目が浮かび上がっており、地沸が絡んでしっとりとした潤い感のある地相。所々に流れ肌が窺え、総体に躍動感に満ちている。刃文はこの工の特徴と言える焼頭に丸みのある矢筈風の互の目出来。匂口柔らか味があり、刃境に繊細なほつれが掛かり、淡い足は刃中に流れ込む。帽子は刃文と調子を同じくした乱れ込みで、浅く返る。