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日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 肥前國佐賀住正廣 Masahiro Katana

2018-01-11 | 
刀 肥前國佐賀住正廣


刀 肥前國佐賀住正廣

 これも初代正廣の作。焼深いながらも焼頭が穏やかに連なる互の目の刃文に、霞が棚引くように刃中に沸の帯が広がっている。なんて美しいのだろうか。かなり沸の強い調子で、刃中のみならず地沸も激しい。互の目が所々地に突き入る部分もあり、相州古作を手本としたことは間違いがない。







刀 河内大掾正廣 Masahiro Katana

2018-01-09 | 
刀 河内大掾正廣


刀 河内大掾正廣

 忠吉家と共に鍋島家に仕えたのが正廣家だ。江戸期の肥前を代表する名流の一つ。忠廣の直刃に対して相州伝の乱刃を得意としたのが正廣。この「正廣」の工銘も相州伝乱刃を製作したことから鍋島家より賜ったもの。奇麗でしかも沸の働いた激しい互の目を焼いている。この刀も元先の身幅が広く鋒が大きく伸びており、南北朝時代の相州物を手本としていることがわかる。地鉄は小板目肌に地沸が付いて、独特のちりちりとした感じの小糠肌。小沸出来の互の目が二つ三つと連れる態があり、刃中には砂流しが穏やかに、しかも濃密に流れる。特に刃中の匂と沸の調和が美しい。







刀 近江大掾忠廣 Tadahiro Katana

2017-12-28 | 
刀 近江大掾忠廣


刀 近江大掾忠廣

 浅い湾れ出来の刃文。これも綺麗だ。どのような刃文も、優れており、綺麗だ。その背景には良く詰んだ小板目鍛えがあり、この均質な地鉄が刃中に乱れを生じさせていないのであろうと考える。地鉄に乱があれば、その部分の刃文にも影響する。端正な直刃であればその乱の様子が簡単に判ってしまうのだ。均質な小板目肌の美しさと、そこに焼かれた刃文の調和は、簡単ではないのだろう。





刀 近江大掾忠廣 Tadahiro Katana

2017-12-27 | 
刀 近江大掾忠廣


刀 近江大掾忠廣

この互の目乱出来も肥前刀であることが良く判る作。地鉄は、良く詰んで揃った小板目鍛えに地沸が付いてわずかに地景が交じった、小糠肌の典型。互の目乱の刃文は小沸が揃って刃境に沸が叢付く。帽子だけは常の小丸返りとは異なり、わずかに乱れ込んで先端に掃き掛けを伴っている。とても綺麗な刃文である。





刀 近江大掾忠廣 Tadahiro Katana

2017-12-21 | 
刀 近江大掾忠廣


刀 近江大掾忠廣

 互の目が綺麗に構成された作。肥前刀の互の目は、このように二つずつ連なる傾向がある。そして互の目の中に葉が配されており目玉のように見える。これを虻の目と呼んで肥前刀の刃文の特徴としている。本作は矩上が小模様の互の目で、焼頭も高低変化があり、次第に互の目が大きくなって二つ三つと連なる構成。刃境の沸の揺らぎと刃中に溶け込んでゆく様子が、何て綺麗なんだろうと思う。





刀 藤原忠廣 Tadahiro Katana

2017-12-12 | 
刀 藤原忠廣


刀 藤原忠廣

 まだ若き寛永十四年の作。忠廣は寛永十八年に近江大掾を受領している。沸の強い互の目乱出来。小板目鍛えである点は基本だが、かなり地沸が叢に付き、一部は湯走り状にも感じられる。沸が強く深いことから刃文構成も分かり難いのだが、確かに互の目の連続が判る。沸足も入り、砂流しも掛かる。互の目の一部に虻の目状の葉が複合されているところは、もう少し後の肥前刀の特徴かと思ったが、この頃にすでに存在しているのは面白い。



刀 近江大掾忠廣 Tadahiro Katana

2017-12-09 | 
刀 近江大掾忠廣


刀 近江大掾忠廣

 互の目丁子出来の忠廣。小互の目に小丁子が交じり、小足が盛んに入る。焼頭は小さく丸みを帯びたり尖り調子となったりし、足は逆がかったり広がったり、飛足となったり、これらが複合して複雑な刃境の文様となっている。珍しい刃文構成で、しかも頗る出来が良い。



刀 近江大掾忠廣

2017-12-08 | 
刀 近江大掾忠廣


刀 近江大掾忠廣

 江戸時代に綺麗な刃文を表現した刀工とその作品を紹介している。極上の小板目肌に直刃を焼いて高く評価を得ているのが忠廣。大坂刀工と同様に、小板目肌や小杢目肌を基調としている。日本刀を産業とした肥前鍋島家のお抱え刀工であることと、頗る人気が高かったこと、長命であったことから比較的作品が多く、目にする機会も多いと思う。先に紹介した助直などとも地鉄の質感が違うところが良く判ると思う。小板目肌に均質の地沸が付いているところが小糠を蒔いたような、と表現されることから、この肥前肌を小糠肌ともいう。刃文は刃境に小沸が付いて刃文が沸の帯のようになるところも肥前刀の特徴。220□



刀 雙 越前守助廣 Sukehiro Katana

2017-11-17 | 
刀 雙 越前守助廣


刀 雙 越前守助廣

家督を継いだ助廣は、後に濤瀾乱刃を完成させてゆく。この頃には互の目に大小があり小互の目が加わって花弁のように見えたり、刃中に沸が叢付き、砂流しがあり、沸筋がある、未だ自然な互の目の形状がみられる刃文構成。全くの自然体かというとそうでもなく、互の目は丸みがあり、その大小の円形の組み合わせによる刃文構成であることが判る。互の目を切って流れる沸の美観も見どころ。波の押し寄せてくるような綺麗に揃った濤瀾乱は、もちろん他の多くの刀工に刺激を与えたように優れているが、助廣は濤瀾乱だけを焼いていたわけではない。

刀 固山宗次 Munetsugu Katana

2017-11-09 | 
刀 固山宗次


刀 固山宗次天保十二年

備前兼光を手本としたものであろうか、穏やかな小互の目の刃文構成。焼を高めない小互の目にしている。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、所々に板目、杢目が綺麗に現れている。刃文こそ独創的。互の目の頭が穏やかに高低変化し、その先端から地中に淡く足状の働きが延び、淡い映りに感応し合っているようだ。南北朝時代の備前物、その後の応永備前などによく見られる働きだ。小互の目の刃文は一定にならず、匂が冴えて小沸が加わり、匂足が射して所々に金線が流れる。綺麗だが凄みのある刃文だ。

刀 越後守包貞 Kanesada Katana

2017-11-08 | 
刀 越後守包貞


刀 越後守包貞

大小の互の目を、変化を付けて連続させた刃文構成。助廣風の濤瀾乱刃を得意とした包貞ではあるが、そのままに構成するのではなく、丸みのある互の目、角状に尖り調子のある互の目、これによって角張る風の互の目、角が三方向に突き出た互の目、玉刃など、互の目に変化を付けている。助廣を真似ているのではないぞという意識の表れであろう。沸の粒子は均質で匂を伴い、砂流し、沸筋金線が流れ掛かる。


刀 横山祐包 Sukekane Katana

2017-11-02 | 
刀 横山祐包


刀 横山祐包安政二年

 祐永もそうだがこの祐包も、腰反り深く姿に伸びやかな印象があり、鎌倉時代の太刀を想定していることが判るだろう。地鉄は良く詰んで無地風に透明感があり、微細な地沸で覆われ、しっとりとした質感。刃文は互の目が複式に焼かれて茶の花の膨らんだようなむっくりとした互の目。大小抑揚があり、綺麗に連続している。祐永‐祐包と続くこの一門らしい出来である。



刀 横山加賀介祐永 Sukenaga Katana

2017-10-31 | 
刀 横山加賀介祐永


刀 横山加賀介祐永天保十四年

 江戸期に大成した長舩鍛冶の作。戦国時代末期の天正年間に長舩一帯は大きな水害が起こって鍛冶業が潰えてしまった。わずかに残った祐定家の刀工がその命脈を保ち、江戸時代中期の横山上野大掾祐定の代に至って再び活性化を見せ始めた。だが時代は平和。優れた刀を製作しようにも大きな需要が見込めず、江戸後期になり、祐定門流の祐永によって備前刀に新たな作風が見出された。遠く鎌倉時代の互の目丁子とは風合いを異にする綺麗な互の目丁子の誕生である。

刀 永貞 Nagasada Katana

2017-10-27 | 
刀 永貞


刀 永貞

江戸時代前期以降、新々刀期にかけての綺麗な刃文を紹介している。江戸時代に進化が進んで良く詰んだ小板目鍛えの地鉄が一般的になると、刀工は個性を見出すために刃文構成に目を向けたようだ。三品派の丹波守吉道が川の流れのような刃文を生み出し、越前守助廣が濤瀾乱刃を生み、霧の立ち込めたような沸の深い互の目を真改が創作した。新々刀期の刀工は、それらを受けて独創を加味した。あるいは再び古作への回帰を狙った刀工(正秀のように)の背景にも、新刀期の綺麗な刃文構成があった。いずれも、刃文構成は偶然の要素を多分に含むところから明確な創造へと移り変わった。この刀は、三寸ほど磨り上げられてもなお二尺四寸弱。かなり長い刀であった。現在は無銘。元先の身幅が広く、鋒は中鋒延び調子で、南北朝頃の刀に間々みられる二筋樋が掻かれている。地鉄は板目が流れて柾がかり、良く詰んで地景が目立つ。地肌は刃中に及び、互の目乱の刃境がほつれ掛かり、その一部が金線、沸筋、砂流しとなっている。帽子はわずかに乱れ、掃き掛けを伴い返る。刃沸の明るい出来である。

刀 御勝山永貞 Nagasada Katana

2017-10-24 | 
刀 御勝山永貞


刀 御勝山永貞

 永貞は幕末の美濃の刀工。美濃刀工とは言え、江戸時代も降ると美濃伝は薄れてくる。この工も南北朝時代の大太刀を磨り上げたような元先の身幅が広く、がっちりとした陰影の刀を製作している。この刀も、鋒が大きく伸びて物打が張り、大薙刀を磨り上げたように腰元に樋を施し、その上から鋒までも棟の肉を削いで刃の抜けを良くしている。江戸時代の刀工の多くが、古刀期の五箇伝には収まらない、伝法を超えて融合させたような作風に至っている。本作も相州伝が下地にあるが、備前伝風の互の目丁子も窺え、相伝備前かというとそれとも異なる、綺麗な地鉄に綺麗に揃った刃文を焼いた、総体に綺麗な出来となっている。